中国ではモバイル決済(スマホ決済)が広く普及しており、世界でも有数の規模のモバイル決済市場を持っています。
中国互聯網絡信息中心(CNNIC)の発表によると、2020年12月の時点で中国のモバイル決済ユーザー数は8.5億人を超えており、スマートフォンユーザーの9割近くがモバイル決済を利用しているとされています。
また、モバイル決済は、中国人の海外旅行の際にも現地通貨を直接必要としない決済手段として多く利用されており、世界最大のマーケティング調査会社ニールセンが発表した「2018 TRENDS FOR MOBILE PAYMENT IN CHINESE OUTBOUND TOURISM」では海外旅行に行く中国人の69%が現地でモバイル決済を利用していることがわかっています。
そのためモバイル決済の導入は訪日中国人の利便性や、顧客獲得に繋がるといえるでしょう。
また、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点からもモバイル決済の需要は高まっており、日本でも人気のSNSであるTikTokの中国本土版「抖音(ドウイン)」もモバイル決済サービスの展開をはじめています。
この記事では、中国におけるモバイル決済の現状と、訪日中国人観光客向けのインバウンド対策としてモバイル決済を導入する重要性について説明します。
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中国はモバイル決済大国!新型コロナウイルスも影響し、今後さらに拡大か
中国ではモバイル決済が広く普及しており、継続的に拡大を続けています。
さらに新型コロナウイルスの影響で非接触サービスの重要性が高まったこともあり、今後も拡大傾向が続くことが予想されます。
ここでは、モバイル決済の概要と中国における現状、および新型コロナウイルス禍で受けた影響について解説します。
モバイル決済とは?
モバイル決済とは、スマートフォンやタブレットによって端末上で支払いを行う決済方法のことを指しています。
自身のスマートフォンに支払い用のQRコードを表示させリーダーで読み取る方式や、店舗側が受取用のQRコードを掲示して利用者がそれをスキャンし、支払い金額を入力方式という「QRコード決済」があります。
また、スマートフォンにクレジットカードや交通系ICカードの決済情報を登録し、店舗の決済端末にスマートフォンなどをかざすことで決済を行う「非接触型IC決済」も存在します。
中国で普及が進んでいるモバイル決済
中国互聯網絡信息中心(CNNIC)による「第47回中国インターネット発展状況統計報告」では、中国でのモバイル決済利用者は2020年12月の時点で8.5億人を超えているとされており、都市部では現金よりもよく使われる決済手段となっています。
中国でのモバイル決済普及の背景には、クレジットカードの普及率の低さや、スマートフォンの急速な普及などがあげられます。
まず、中国では与信調査が厳しくクレジットカードを作ることが難しいため、現金以外の決済手段としては銀行でのデビットカードが主流でした。
そこに導入コストが低いキャッシュレス決済手段としてモバイル決済が、スマートフォンの普及とともに広がりました。
また、それに加えて個人間送金の手軽さ、さらにシェアライドやシェアサイクルなどのサービスが開始するにあたりクーポンや割引、キャッシュバックなどのキャンペーンを大規模に行ったことから、爆発的に利用が普及しました。
新型コロナウイルス感染拡大に伴うキャッシュレス化
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、モバイル決済は中国でさらに普及が進んでいます。
モバイル決済では、QRコード読み取りや、スマートフォンを端末にかざすことで決済が完了するため、人と人との接触を減らし、現金のやり取りを介した感染の拡大防止につながります。
日本でも「新しい生活様式」の実践例として電子決済の利用が推奨されており、今後日本でもモバイル決済は普及していくと考えられます。
「COCOA」は生ぬるい?世界の追跡アプリまとめ:非協力者は通報されるシステムも...アメリカは反発強く未実装か
コロナ禍での観光再開を目指し、世界観光機関(UNWTO)が立ち上げたグローバル観光危機委員会は、観光再開に向けたガイドラインを発表しました。ガイドラインによると、今後の旅行では、旅行者の「安心」「安全」を守る取り組みが重要になるとしており、「ナショナルトラッキングアプリや移動経路のトラッキングアプリを推奨」と明記されています。日本では、2020年5月29日より、大阪府がいちはやく独自の追跡システム搭載アプリを開発・導入したことが話題になりました。6月19日からは厚生労働省によって、全国を対...
中国代表のモバイル決済」トップ2社のAlipay、WeChat Payに加えて「抖音」も参入
中国におけるモバイル決済はアリババとテンセントの二社によるサービスが主流といわれています。
中国最大手のインターネット調査会社アイリサーチの発表によると、2020年第2四半期(4〜6月)のモバイル決済サービスの取引額のうち、AlipayとWeChat Payを含むテンセントのモバイル決済サービスTenPayの2つが9割以上を占めています。
ここではモバイル決済の大手「Alipay」と「WeChat Pay」、さらにTikTokの中国本土版「抖音」が2021年1月に立ち上げたモバイル決済サービスについて紹介します。
1. Alipay:中国モバイル決済市場1位、利用者数12億人超え
「Alipay(支付宝、アリペイ)」は中国EC企業最大手のアリババが提供するモバイル決済サービスです。
「Alipay」はもともとネット通販事業での決済手段として始まったものですが、2012年にQRコードによる決済を提供を開始して以来徐々に中国で広がり、アリババは、2019年6月の時点でAlipayのユーザー数は全世界で12億人を超えたと発表しています。
またAlipayは世界50以上の国でも展開しており、アリババジャパンの発表によれば、日本での加盟店数が2019年年初時点で30万を突破し、2018年8月時点と比べると約5倍増えました。
支付宝(アリペイ/Alipay)の機能・導入のメリットを紹介
キャッシュレス決済の普及が加速している中国で、最もシェアが大きいのが支付宝(Alipay/アリペイ)です。日本でも、街中を歩いていると「支付宝」の文字列を見かけることも多いのではないでしょうか。中国人にとってAlipayはただの決済サービスではなく、日々の生活になくてはならないほどに多彩なサービスを備えた「スーパーアプリ」です。公共料金の支払いからローンを組む時に関わる信用度まで、人々の暮らしに深く入り込んでいるAlipayとは、どのようなサービスなのでしょうか?なぜ中国でAlipayがこ...
2. WeChat Pay:中国モバイル決済市場2位、他国への進出も開始
「WeChat Pay(微信支付、ウィーチャットペイ)」は世界中に12億人の月間アクティブユーザーを抱える「WeChat(微信)」内から利用できるモバイル決済サービスであり、市場規模は中国内でAlipayに次ぐ、2番目に大きいモバイル決済サービスです。
Wechat Payは、WeChat(微信)と連携する形で、個人間の送金が手軽に行えることが特徴です。
また、WeChatアプリ内には、ミニプログラムが充実しており、デリバリーサービスなどが個別にアプリをダウンロードせずに使うことができます。
さらに支払いもWechat Payと紐づいており、認知から購入までWeChat内で完結できます。
また、WeChatを運営するテンセントは、中国以外の国でもWeChat Payで決済を行えるように整備を進めており、日本のコンビニや百貨店にも多く導入されています。
親会社のテンセントによれば、2019年WeChat Payの日本での導入企業数が2018年と比べると565%増加しており、取引件数も108%増加しました。
WeChatPayとは?導入方法と使い方・できること・事例5つ【インバウンド集客】
モバイル決済が主流となる中国で近年普及が進んでいるWeChatPay(微信支付:ウィーチャットペイ)。訪日中国人向けのインバウンド対策として、導入を検討している企業や店舗も多いのではないでしょうか?しかし、「WeChatPayの導入・運用費用がどれぐらいかかるのか分からない」「どれほどのインバウンド効果を得られるのか把握しておきたい」という方も多いはず。今回は、訪日中国人観光客からの需要が高い、WeChatPayの導入方法と成功事例について詳しくみていきます。関連記事Alipay(アリペイ...
3. 抖音支付(抖音ペイ):2021年1月にリリース、巨大なユーザー数を活かせるか
北京字節跳動科技(バイトダンス)が運営する、中国でも屈指のショート動画アプリ「抖音」にも、アプリ内から使える「抖音支付(抖音ペイ、ドゥインペイ)」が2021年1月より導入されています。
バイトダンスの発表によると、2020年8月の時点での抖音のアクティブユーザーは1日に6億人以上であり、この巨大なユーザー数を取り込み、「Alipay」と「WeChat Pay」のシェアに食い込む形で利用を伸ばしたい考えです。
抖音には配信者に応援の「投げ銭」を送る機能や、ライブ配信での商品紹介を通して商品を購入するライブコマース機能があり、それらの支払いのために抖音支付が利用ができます。
また2021年中国の春節特番「春節聯歓晩会」の紅包(お年玉)イベントの提携パートナーともなっており、これを機にユーザーの獲得を狙う考えです。
中国版TikTokの抖音(ドウイン)とは?ショートムービーアプリの魅力
抖音とは、中国発のショートムービーと呼ばれるタイプの動画投稿アプリ「TikTok」の中国名です。中国語ではDouyin(ドウイン)と読みます。TikTokは、2020年4月に世界中でダウンロード数が累計20億回を超えるなど、若者を中心に広く人気を博しています。2020年6月末からはインドで使用禁止となり、アメリカやオーストラリアでもこれに続く動きが見られています。また、香港では7月にTikTokのサービス提供が終了していることが現地メディアにより伝えられています。8月現在、アメリカではMi...
インバウンド対策に中国人向けのモバイル決済を導入する理由
訪日旅行客のうち中国からの旅行客は最も多く、インバウンド対策を考える上で、訪日中国人をいかに引き込むかが非常に重要です。
モバイル決済が使用できることは訪日中国人観光客の来店・購買動機につながるため、すでに多くの店舗で導入されています。
ここではその重要性と、導入についての概要について説明します。
訪日外国人のなかで中国人の数は1位:モバイル決済導入で購買をさらに促進
2019年に日本を訪れた訪日中国人観光客は959万人を超えており、訪日外国人の中でもっとも多い人数となっています。
訪日する中国人観光客にとって日本でもモバイル決済を使えることは、本国と同じスムーズな決済が可能なことや、現金の交換をしなくても買い物ができるなどの多くのメリットがあります。
中国人観光客向けのモバイル決済を導入をすることは、多くの人にこれらのメリットを提供できることにつながり、利用してもらえるきっかけにもなります。
冒頭で言及したニールセンの「2018 TRENDS FOR MOBILE PAYMENT IN CHINESE OUTBOUND TOURISM」では、94%の中国人海外旅行者が「海外旅行中、スマホ決済が利用できるならそれを利用したい」と回答しており、さらに93%が「モバイル決済が利用できれば、出費を増やすことにつながるだろう」と回答しています。
実際に、マレーシアではAlipayの導入後、売上が20~30%ほど増加した事例もあると同調査で発表されています。
アフターコロナのインバウンド需要をつかむ
新型コロナウイルスの感染拡大により、安心安全であることは、今後の観光には欠かせないキーワードとなります。
モバイル決済に代表されるキャッシュレス化も、人と人との接触を避けるうえで有効な感染対策となります。
JNTOが2020年12月にWeChatフォロワーに対して行った調査では、中国人がこれから海外旅行に行く際「旅行先の選択時に重視するポイント」では、「防疫体制」が上位にあがっています。
このことから、モバイル決済をはじめとしたキャッシュレス化の整備を進めておくことで、アフターコロナ旅行需要を獲得することにつながる可能性があると考えられるでしょう。
拡大が続く中国のモバイル決済:高まる受容に対応してインバウンド対策
中国におけるモバイル決済は、新型コロナウイルス禍における活用もあり、ますます中国人の生活と切っても切れないものになってきています。
なかでもAlipayとWeChat Payの2大サービスは生活に深く浸透しており、「生活のインフラ」といえるレベルです。
日本でも利用は広まっており、今後インバウンド需要が回復してくるにあたって、モバイル決済の有無がインバウンド対策として重要な意味を持ちます。
訪日中国人への対応として、モバイル決済の導入を完了しておくことも、いまできるインバウンド対策の一つといえるでしょう。
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<参照>
・CNNIC:第47次《中国互联网络发展状况统计报告》
・ Nielsen:2018 TRENDS FOR MOBILE PAYMENT IN CHINESE OUTBOUND TOURISM
・アイリサーチ:中国第三方支付市场数据发布报告2020Q2
・Alibaba JAPAN:アリペイ、日本での加盟店舗数が30万を突破、 アジア10億人のモバイル決済ユーザーの訪日を促進
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今年も残りわずかとなりましたが、インバウンド需要はまだまだ好調をキープしている状況です。来年の春節や桜シーズンなど、訪日客が集まる時期に向けて対策を練っていきたいという方も多いでしょう。
今回もインバウンド業界最大級メディア「訪日ラボ」副編集長が、10〜11月のインバウンドトレンド情報についてお話ししていきますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
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