日本政府は3月18日から、位置情報確認アプリやCOCOAなどのアプリのダウンロードを、日本人を含む外国からの入国者に義務付けました。
外国からの入国者が持ち込む新型コロナウイルスによる感染拡大を防止するための措置で、日本人も対象とされています。
本記事では、これらのアプリやその運用の問題点、そして今後の入国制限緩和にあたって、どのように変化していくのかを考察します。
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日本人を含む、全ての入国者に対してアプリのインストールと利用を義務化
3月12日、日本政府は日本人を含むすべての入国者に対し、必要なアプリのインストールと利用を、3月18日から義務化すると発表しました。
現在の入国者の状況
現在日本への入国が可能となっているのは、「特段の事情」がある外国人を除き、日本人の帰国者と再入国者のみとされています。
また、すべての入国者に対し、14日間待機の緩和措置は認められていません。
関連記事:【入国制限まとめ】3/15更新:緊急事態宣言延長、全世界からの新規入国拒否も継続
COCOA含む専用アプリのインストールと利用を義務化
厚生労働省は3月12日、日本への入国には以下のアプリのインストールが必要となると発表しました。
- OSSMAのインストール(位置情報確認アプリ)
- Skypeのインストールとサインアップ(ビデオ通話アプリ)
- 所有するスマートフォンの位置情報保存設定(GoogleMaps等の設定)
- COCOAのインストール(接触確認アプリ)
日本人を含め、日本に入国するすべての人に、日本入国後14日間、自宅やホテルなどで確実に待機してもらうための措置だとされています。
対応しているスマホを持っていない場合は、自己負担でレンタルする必要があります。
入国に際しては、入国後14日間の自宅等での待機や、アプリの利用などについて誓約書を提出する義務が課せられ、誓約に違反した場合、氏名(外国人の場合は氏名及び国籍)や感染拡大の防止に資する情報が公表される可能性があります。
外国人の場合は、出入国管理法に基づく在留資格取消手続及び退去強制手続の対象となる恐れもあります。
今は羽田空港と成田空港第二ターミナルでのみ、アプリがインストールされているか確認が行われており、今後対象空港を増やす予定としています。
さらに3月19日以降は上記に加えて、日本人を含め、日本に入国するすべての人について、出国前検査証明書を所持していない場合は日本入国が認められません。
本制度に対する様々な声
本制度により、入国への水際対策はいっそう厳しくなったといえるでしょう。
また世間では、不具合が続いていたCOCOAの性能を疑問視する声も上がっています。
COCOAダウンロード数不足の問題
COCOAは、Bluetoothを活用して、利用者同士が1メートル以内に15分以上いた場合に、お互いのスマートフォンに記録を残せるアプリです。
アプリリリース当初は人口の6割が使うと効果があるとされていたものの、3月18日時点でのダウンロード数は約2,618万件と6割にはほど遠いものとなっており、その有用性にも疑問の声が挙がっています。
COCOAの不具合が発覚、対応の遅れに対する指摘も
COCOAは、アプリの不具合やその対応をめぐっても議論が行われています。
2020年9月28日にAndroidで接触通知がされない不具合が確認されましたが、この問題が発覚したのは2021年1月であり、4か月も「放置」状態となっていました。
接触不具合の報告数が全体として多くないことから放置されていたもので、適切に運営できるよう、日本政府は新年度の4月からCOCOAの運用先を変更する予定としています。
入国手続きの煩雑化による混乱は 中国本土からダウンロードできないアプリも
必要なアプリのインストールと利用にあたり、アプリに慣れてない人や高齢者へのフォローが十分になされるかという懸念も残っています。
空港では、その場でアプリをインストールする人や、スマートフォンをレンタルする人の行列ができてしまい、空港内のオペレーションが滞ってしまう可能性も考えられます。
また、中国本土ではそもそもSkypeがダウンロードできないという問題もあります。今回の日本側の水際対策強化のニュースに対しては中国のSNS上でも大きな話題となっており、ニュースのコメント欄には「中国発行のアンドロイドOSのスマートフォンにはGoogleプレイストアがなく、中国エリアのApp StoreにはSkypeがない。状況はますます複雑になってきましたね。」という戸惑いの声も見受けられます。
中国の若者の間では、この日本側のルールに対応するために、なんとか指定されたアプリをダウンロードする方法を模索しているようです。
中国は訪日客の最も多い国であるため、入国手続きのスムーズ化に向けて早急な対応が求められるでしょう。
関連記事:あなたのスマホにも...実はそれ「中国アプリ」です:TikTok、Simeji、荒野行動、アズレンも…海外でも規制の動きが加速
海外で接触確認アプリはどう扱われている?
接触確認アプリの導入事例は、海外でも多くみられます。
以下では、海外における接触確認アプリの導入事例をご紹介します。
ハワイ 接触確認アプリ「Aloha safe alert」義務付け
2021年1月19日(ハワイ時間)以降、マウイ島への全渡航者は、事前に接触確認アプリ「Aloha safe alert」のダウンロード、接触確認通知をオンにすることが求められます。
登録時の個人データはハワイ州保健局のみがアクセスでき、匿名で保管されます。またこのアプリ登録者で新型コロナウイルス感染症陽性者が出た場合、その周辺にいた方に通知が届きますが、お互いの個人情報は保護されることが保証されます。
これらの通知アプリ登録がマウイ島到着前に完了されていない場合、10日間自己隔離が必須となります。
ハワイでは接触確認アプリ「Aloha safe alert」のダウンロードが義務付けられており、18歳以下、またはスマートフォンを含むモバイルデバイスを持っていない人は、スマートフォンを持っている人と一緒に行動する必要があります。
今後日本でも入国対象者が拡大し、入国者全員のスマートフォン所有の義務付けが困難となった場合には、この方法によって解決を図れる可能性もありそうです。
またGoogle通知型の接触確認アプリを持っている人は、「aloha safe alart」をダウンロードしなくてもよいとされています。
日本でも、すでに他国の接触確認アプリを持っている訪日外国人にこの方式を適用することで、ダウンロード待ちの列を緩和できるかもしれません。
関連記事:「COCOA」は生ぬるい?世界の追跡アプリまとめ:非協力者は通報されるシステムも...
入国制限緩和への第一歩となるか
今後の日本の入国制限をめぐっては、現在一時停止されているビジネストラックとレジデンストラックの枠組みを中心として、渡航が再開していくものと考えられます。
今回の接触確認アプリの義務化からは、日本政府が水際対策の強化に本腰を入れている様子が見て取れます。
これまでは日本に居住する外国人がビジネストラックで対象国・地域に入国後、14日間以内に日本に再入国する場合は「検査証明」は不要とされていました。
陽性と判断された場合のみ接触確認アプリの導入確認が必要で、基本的にLINEでの報告のみとなっていました。
SNS上では、上記に比較して今回は相当に厳格なルールが制定されたとして評価する声も挙がっています。
今回の措置が入国制限緩和への第一歩となり得るか、今後もその動向を注意深く追っていく必要があるでしょう。
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参照
外務省:新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について
厚生労働省:スマートフォンの携行、必要なアプリの登録・利用について
在サンフランシスコ日本国総領事館:新型コロナウイルス (日本の水際対策強化/出国前検査証明の要件緩和) (3月12日)
厚生労働省:新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA) COVID-19 Contact-Confirming Application
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