フードダイバーシティとは、直訳すると「食の多様性」を意味します。
世界中の宗教などを理由にした食のタブーを持つ人々を理解し、受け入れる環境づくりのことを指します。
本記事ではフードダイバーシティについて実施例を挙げながら説明し、アフターコロナでの可能性について言及します。
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フードダイバーシティは観光業にとって必要不可欠
フードダイバーシティが観光にとってどのように関わっているのか、また日本国内における認知状況について解説します。
なぜ注目されている?
観光庁の2018年推計数値によれば、日本を訪れるベジタリアンやヴィーガンの外国人旅行者は年間145~190万人、その飲食費は450~600億円と推計されます。
ベジタリアンとは一般的に肉や魚は食べないものの乳・乳製品等の動物性食品は食べる人を、ヴィーガンは一般的に肉、魚、乳・乳製品、ゼラチン等の動物性食品を食べず、動物製品(革製品、羊毛製品等)を身につけたりしない人のことを指します。
多くのベジタリアンやヴィーガンが日本を訪れている一方で、外国人ベジタリアン・ヴィーガンを対象として観光庁が行ったアンケート調査によれば、以下のように日本の飲食店の対応は不十分との意見が多く上がっています。
日本はベジタリアンヴィーガンに対応した飲食店等の数が少ない
ネットでの情報発信や店舗内外での表示が少なく、飲食店がベジタリアン・ヴィーガンに対応しているかどうか分からない
日本で食べたかった食べ物のベジタリアンオプションがなく、食べることを諦めた
この調査結果からは、日本の多くの飲食店等では、そもそもフードダイバーシティに関する知識が不足しているために、どう対応すればいいか分からないということが明らかになりました。
食はそれ自体が旅行の大きな目的になることも多く、訪日外国人旅行者にとって高い誘致力を持つと同時に、日本旅行における不満要素にも強く結びつくと考えられます。
飲食提供者側との無用なトラブルを避け、外国人客が日本の食事を安心して楽しめる環境を整えるためには、まず日本の飲食提供者が外国人の多様な食生活や食習慣への理解を深め、適切な対応ができることが重要となるでしょう。
日本国内でも「食の多様性」が注目されている
近年は日本国内でも、食の多様性に対する関心が広まっています。
農林水産省が実施したアンケートによれば、「海外では、環境への配慮や動物愛護、健康志向、宗教上の制約等の理由により、ベジタリアン、ヴィーガンが拡大していることを知っていますか。」との設問に対し、「良く知っている」、「少し知っている」と回答した割合は合計68.7%でした。
「聞いたことはあるがあまり知らない」と回答した割合と合わせると94%の人が認知しており、ベジタリアン、ヴィーガンに「とても関心がある」、「やや関心がある」と回答した割合は合計40.8%でした。
さらに回答者のうち約32%の人が、何らかの行動を実践していることも分かりました。
特に「動物製品(革製品、羊毛製品等)を一切利用しない」、「動物製品(革製品、羊毛製品等)を利用することはあるが、なるべく利用しないように心がけている」、「厳密に何を食べない等のルールは決めていないが、ベジタリアン、ヴィーガン向けのメニューがあれば積極的に選択する」はそれぞれ10%以上にのぼり、ほかの選択肢よりも割合が多い傾向が見受けられました。
背景には、健康志向だけでなくSDGsへの関心や、気候変動による考え方の変化があると考えられます。
フードダイバーシティの考え方|キーワードは「食べることができないもの」「食べてはいけないもの」「食べたくないもの」
フードダイバーシティのための適切な環境を整えるためには、そもそもフードダイバーシティとは何なのかを理解する必要があります。
しかしアレルギーや宗教のタブーなど、多岐に渡るフードダイバーシティを理解するのは困難なことです。
これは3つに整理して考えると分かりやすくなります。
「食べることが出来ないもの」はアレルギーなど
まず「食べることが出来ないもの」は、アレルギー症状を引き起こすなど、健康上の理由により一切口にすることができないものや、最悪の場合には死に至ってしまうものです。
健康上の理由で一切口にすることができない食材、最悪の場合には死に至ってしまう食材には、食物アレルギーの症状が重篤なソバや落花生のほか、食物アレルギーの頻度が高い卵や乳、小麦が挙げられ、このほかにも、あわび、いか、イクラ、エビ、カニ、サケ、サバ、オレンジ、キウイフルーツ、桃、りんご、バナナ、くるみ、牛肉、鶏肉、豚肉、大豆、まつたけ、やまいも、ゼラチンにも注意が必要です。
これらの食材を扱う場合には細心の注意を払うとともに、事前に確認を取ることが重要となります。
「食べてはいけないもの」は宗教上の理由など
続いて「食べてはいけないもの」は、宗教上の教義や信念に関する理由で食べることを忌避しているものです。
実際に食べた場合に健康上の影響はみられないものの、飲食店側との深刻なトラブルを引き起こす可能性が非常に高く、特に注意が必要です。
豚肉・牛肉のエキスやスープ、豚・鰹節の出汁などの、料理へのわずかな混入にも敏感に反応することも少なくありません。
これらの食材を扱う場合も、細心の注意と事前の確認が重要となります。
「食べたくないもの」は個人の主義・趣向上の理由など
最後に「食べたくないもの」は、個人の主義や嗜好に関する理由で食べることを忌避しているものです。
「食べることが出来ないもの」「食べてはいけないもの」に比べると大きな問題を引き起こす可能性は低いものの、要望に合わせた的確な対応が求められます。
フードダイバーシティの実施事例
ここからは、実際にフードダイバーシティ対応をしている組織について紹介します。
北海道観光復興機構「WELCOME HOKKAIDO」
公益社団法人 北海道観光振興機構は、ベジタリアン・ヴィーガンの旅行者がより自由に北海道を楽しめるよう、特設ウェブページ「WELCOME HOKKAIDO」を開設しました。
「ベジタリアン・ヴィーガンのおもてなし情報」を発信し、北海道のフードダイバーシティに対応している施設やグルメスポットを掲載しています。
東京都台東区「ハラール認証取得助成制度」
東京都台東区では、同区を訪れるムスリム旅行者に安心して飲食し観光を楽しんでもらえるよう、「台東区ハラール認証取得助成事業」を実施しています。
この事業は、近年増加するムスリム旅行者への「食のおもてなし」を目的として、ハラール認証を取得する台東区内の飲食店等に対し認証取得費用の一部を助成するものです。
助成金額は、助成対象経費の2分の1以内で、上限は10万円となっています。
アフターコロナに備えて
各国では現在、新型コロナウイルス収束による規制緩和が徐々に実施されています。
さらに政府は「明日の日本を支える観光ビジョン」で2030年までに訪日外国人観光客数を6,000人、訪日外国人観光客の旅行中消費額15兆円という目標を掲げています。
アフターコロナを見据え、フードダイバーシティ対応の強化は必須となります。
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<参照>
観光庁:ベジタリアン・ヴィーガンの旅行者をおもてなし!~「飲食店等における外国人ベジタリアン・ヴィーガン対応ガイド」を作成しました~
北海道観光振興機構:Good Day 北海道
台東区:アフターコロナに向けて ベジタリアン・ヴィーガン認証等取得に対する助成を開始します!(自治体では全国初の取り組み)
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【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
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- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
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【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
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