ICTとは「Information and Communication Technology」の頭文字をとった略称です。
情報通信技術を利活用した人と人、人とインターネットをつなげる技術・サービスの総称を指し、観光庁は2010年12月に「観光ICT化促進プログラム」を策定しています。
本記事では、ICTの観光分野における活用方法や活用事例について説明していきます。
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観光分野におけるICTの重要性
ICTは情報通信技術を利用した、人と人、人とインターネットをつなぐサービスや技術の総称を指し、身近な例としてはメールやSNS、通信販売などが挙げられます。
観光分野においては、観光客はICTをどの程度利用しているのでしょうか。
ここでは、ICTの利活用シーンや実態について解説します。
「AISCEASモデル」を観光分野にも適用
「AISCEASモデル」とは、消費者の購買に向けたプロセスをイメージしたマーケティング理論のモデルです。
類似のマーケティング理論にAIDMAモデルがありますが、AISCEASモデルとはSNSやインターネットが普及する前後のモデルか否かが違いとしてあります。
AISCEASモデルは、「Acknowledge(知る)」「Interest(関心をもつ)」「Search(調べる)」「Compare(比較する)」「Examine(検討する)」「Action(行動する)」の頭文字をとったもので、インターネットの普及した社会が前提となっています。
このマーケティング理論は、全国各所の観光スポットを知り旅行のきっかけを生む旅マエや、SNSを活用して地図や施設情報などを積極的に確認する旅ナカ、SNSで旅の感想や旅行中の写真共有する旅アトなど、観光行動にも適用できます。
調査結果からみるICT活用状況
観光庁は日本国内の男女520名(20代~60代)を対象に、旅行者のICT活用状況についてアンケート調査を実施しました。
旅マエでは9割以上が旅行の計画を立てる際に利用しており、旅ナカでは7割以上がナビや観光情報を得る際に利用し、旅アトには観光体験の共有に約5割の人がICTを使用していることが分かりました。
多くの人が観光中と前後にICTを利用している実態が明らかとなりました。
総務省の自治体におけるICTを活用した取り組み状況によると、実施率が高いのは無線LANの設置と自治体HPの多言語化となっています。
都道府県別では9割以上が取り組んでいるものの、市区町村別では取り組んでいない自治体も多々見受けられます。
ICTの活用は訪日外国人への対応に必要不可欠
新型コロナウイルス感染拡大の収束が見通せない中ではあるものの、日本政府は2030年までに訪日外国人旅行者数を6,000万人とする目標を掲げています。
訪日外国人が観光中に不便に感じる事柄として、例年、公衆無線LAN環境や多言語表示の少なさ・分かりにくさが挙げられています。
訪日外国人の旅マエにおける情報源はインターネットが一般的であり、旅行中にインターネットを利用する人は9割以上にのぼり、ほとんどの人がICT端末を持参しています。
異国での旅行はただでさえ非日常の体験ばかりで、不便な状況も多々あります。
不便さはありつつもICTに関する不満を解消し、訪日旅行を満足してもらうことがリピーター獲得につながると考えられます。
観光分野でのICTサービスを紹介
ICTを活用した地方創生に向けた観光分野のサービスは、多岐にわたります。
ここでは旅行中や前後に観光客が利用する代表的なサービスの導入事例から、メリット・デメリットまで解説します。
南房総いいとこどり(千葉県南房総市観光ウェブサイト)
旅行を計画している訪日外国人にとって、日本各地の魅力を発信する観光ウェブサイトは旅マエの窓口となります。
公共団体の場合、サイトの構築や機能の拡充にあたり数百万から数千万円の公共の補助金を活用し、年間百万円から1千万円の予算でサーバ管理費や通信費などの維持管理をまかなうのが一般的です。
パンフレットなど紙の広告は都度印刷の必要があるのに対し、ウェブサイトならばサーバ管理費や通信費など、最低限の費用で広報を行い、情報を更新して蓄積することができます。
千葉県南房総市の観光ウェブサイト「南房総いいとこどり」は、4か国語に対応し観光情報を発信しているほか、ツアーのオンライン予約に対応し、地域の特産品を販売するオンラインショッピング機能も有しています。
毎日ニュースを発信するなど積極的な情報更新を目指し、道の駅のスタッフや市の職員だけでなく、地域住民から情報提供をしてもらっています。
サイト開設初期は31万件だったアクセス数は、2013年には303万件へと成長しました。
観光コンテンツとして人気を博す城跡観光
日本各地に点在する城跡は、日本を代表する観光コンテンツであり、日本国内外から人気を博しています。
各城跡では城の外観だけでなく、VRやARによって当時の姿を体感できる観光コンテンツが展開されています。
福井城では、御本城橋から本丸御殿、天守、天守からの眺望など10か所の景観を、音声ガイドつきでVR画像を視聴することができます。
また岐阜城では、近年発掘が進む信長居館跡の発掘調査案内所で、モニターツアー「信長公のおもてなしガイドツアー」が実施されています。
現地貸出しのタブレットで、4Kレベルの高精密画像で再現した信長公居館を動画やARで楽しむことができます。
現代の城以外に、過去の様子をその場でリアルに体験できるICTを活用した観光体験は、通信技術の向上によって実現されたものといえます。
キャッシュレス決済
キャッシュレス決済の普及率は、日本では2020年時点で29.7%となっています。
年々増加傾向にはあるものの、普及率の高い海外と比較すると、まだまだ低い状況です。
経済産業省は大阪万博が開催される2025年までに、キャッシュレス比率を40%まで引き上げ、将来的には80%にすることを目標としています。
株式会社リクルートライフスタイルが提供する「モバイル決済 for air レジ」は、中国でのキャッシュレス決済市場で高いシェアを誇る「Wechat Pay」との連携を開始しています。
中国ではモバイル決済としてAlipayとWechatPayが主に使用されており、日本のキャッシュレス決済で最大級の普及率を誇るPayPayは、2018年からAlipayと連携し訪日外国人によるAlipayのQRコード決済に対応しています。
コロナ禍において非接触型の決済手段の普及には追い風が吹いている状況であり、キャッシュレス・クレジット決済の代行業者は増加傾向にあります。
ただし事業者側にはスキミングのリスクもあり、個人情報の取り扱いなどセキュリティ対策は必要不可欠となっています。
関連記事:コロナ後の「インフラ」担うキャッシュレス決済 注目企業、銘柄は
地方での導入事例:無線LAN環境の構築
日本での旅行中に多くの訪日外国人が不便を感じることとして、公衆無線LAN環境があります。
多くの外国人が旅ナカにおいてICT端末を観光情報の収集に活用しており、無線LAN環境の整備は欠かせません。
インフラサービスを提供するKpnetworks株式会社は2011年から、福岡県の博多天神地下街など8地点で災害通信インフラと平常時地域インフラを導入しています。
スマートフォンが爆発的に普及した2011年に、いち早く社会状況へ対応することで話題性を創出し、来訪者へのサービス向上を促進したものです。
導入の結果、同社の無線LANアクセスポイントにおいて、1台で200台の端末を安定同時接続をするとともに、設定・敷設工事、ランニングコストを従来システムの7分の1以下に軽減することに成功しました。
観光ポータルサイト:Japan-guide.com
「ジャパンガイド(Japan-guide)」は、1996年にスイス出身のステファン・シャウエッカー氏が設立した、訪日外国人向けの日本情報ポータルサイトです。
現在は英語版と繁体字版の2言語で展開しており、公式サイトによると英語版に会員登録しているユーザー数は98万人以上に達し、サイトの閲覧者の90%以上が実際に訪日中、または訪日を計画しています。
訪日意欲のある外国人にとって、20年以上にわたり主要な情報源となっており、多くの地方自治体や企業がタイアップ広告やバナー広告を掲載し、外国人の誘客に努めています。
事業者がサービスを発信する際、訪日外国人からの閲覧数の多いウェブサイトを活用することで外国人への目に留まる機会が増加し、集客力アップが期待できます。
関連記事:【観光業の未来予想図 Vol.1】「ジャパンガイド」編集長 ステファン・シャウエッカー氏|五輪開催はインバウンドへの追い風か、向かい風か
アフターコロナの観光客獲得に向け、ICTの活用を
訪日外国人の多くが旅行中にICTを活用しています。
加えてコロナ禍におけるICTの活用は必須であり、訪日外国人の円滑な観光行動とリピーター獲得のためには、VRや非接触型のキャッシュレス決済、多言語対応のためのICT導入の推進が必要です。
アフターコロナの観光客受け入れに向け、今からICTを活用したサービスを準備しておくことは、新たな市場開拓にもつながるでしょう。
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<参照>
観光庁:観光のICT化の推進
観光庁:訪日外国人が旅行中に困ったこと、受入環境整備の課題が明らかになりました ~受入環境について訪日外国人旅行者にアンケート調査を実施~
千葉県南房総市:南房総いいとこどり
ビジュアル再現 村上城:普及する城系(!)VR・ARアプリ
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