日本政府観光局(JNTO)は11月15日、2023年10月の訪日外客数推計値を発表しました。
10月の訪日外客数は251万6,500人で、2019年同月比100.8%を記録。新型コロナウイルスの拡大後初めて、2019年の水準を上回りました。9月の訪日外客数(218万4,300人)と比較しても30万人以上の大幅な増加となっています。
23市場のうち14市場で10月の過去最高を記録し、中には単月の過去最高を更新した国も。本記事では10月の訪日外客数について、各市場のデータを踏まえて解説します。
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10月の訪日外客数は251万人
日本政府観光局(JNTO)が11月15日に発表した訪日外客数推計値によると、2023年10月の訪⽇外客数は251万6,500人でした。9月の218万4,300人と比較すると30万人以上増加し、5か月連続で200万人を超えています。
2019年同月比は100.8%で、コロナ禍前を上回る水準まで回復。2019年同月比で100%を超えるのは新型コロナウイルスの感染拡大後初めてのことです。
※ただし2019年10月は、8〜9月に引き続き韓国における不買運動の影響を受けていた点に注意が必要です。
また、調査された23市場のうち14市場で10月の過去最高を記録していて、中でもカナダ、アメリカ、ドイツは単月の過去最高を更新しました。
国際線の運航便数がコロナ禍前の約8割まで回復したことや、円安が進んだ影響で全体的な需要拡大に繋がったようです。中でもシンガポールなどの東南アジアや、欧米地域における訪⽇外客数の増加が顕著であり、これらの地域が10月の伸び率を後押ししたとみられています。
国別では韓国が前月から引き続き1位となっています。2位が台湾、3位が中国、4位が米国、5位が香港でした。
10月データ詳細:東アジア
10月の東アジアの訪⽇外客数は、韓国が63万1,100人、中国は25万6,300人、台湾は42万4,800人、香港は17万9,300人でした。
韓国の2019年同月比は319.9%を記録。全23市場の中で最も多い訪⽇外客数と最も高い伸び率となっています。その要因としては、仁川ー岡山間、仁川ー鹿児島間などの地方路線を含む日本への直行便数の回復や、那覇港などへのクルーズ船の寄港が挙げられます。
韓国では先述の通り2019年7月以降、日韓関係の悪化により訪日韓国人旅行者数が減少傾向にありました。韓国からの訪日外客数の2019年同月比を見る際にはその点に注意が必要です。
中国の2019年同月比は35.1%であり、23市場で最も伸び率が小さい結果に。団体旅行の解禁による需要回復が予想されていましたが、9月の32万5,600人と比べても7万人近く減少しています。日本への直行便は回復傾向にあるため、今後の需要回復が期待されています。
台湾からの訪日外客数は、旅行代金の高騰などの影響があるものの2019年同月比で102.7%を記録。9月の38万5,300人と比べて4万人近く増加しました。地方路線を含む直行便数の回復や紅葉シーズンによる訪日需要の高まりなどが影響し、9月に引き続き堅調な伸びを見せています。
同様に香港も、直行便数の回復、紅葉シーズンの需要増などが影響し、2019年同月比は99.3%。コロナ禍前とほぼ同じ水準に回復しています。
10月データ詳細:東南アジア
10月の東南アジアからの訪⽇外客数は、タイが12万4,600 人、シンガポールが5万5,100 人、マレーシアが4万5,200 人、インドネシアが4万300人、フィリピンが6万9,200人、ベトナムが5万400人、インドが1万6,800人でした。
このなかでシンガポールが、2019年同月比131.4%と最も高い伸び率を記録。円安の影響に加え、日本への直行便数の回復などが需要拡大を後押ししたようです。
タイは、国内産業界の業況感を表す「産業景況感指数」が悪化していたものの、2019年同月比では85.7%まで回復しました。日本への直行便数の回復や紅葉シーズンによる訪日需要の高まりなどが影響しているようです。
マレーシアの訪⽇外客数は2019年同月比で92.5%。コロナ禍前の水準にあと一歩のところまで回復しています。旅行代金の高騰やLCCの地方路線回復の遅れなどの影響があるものの、訪日需要は堅調に回復しています。
インドネシアは2019年同月比118.2%、フィリピンは107.0%といずれもコロナ禍前を上回る訪⽇外客数を記録。日本への直行便の回復や紅葉シーズンによる需要の高まりが要因のようです。
ベトナムでは中国・タイなどの近隣国への旅行需要が増加傾向にあるものの、2019年同月比108.4%を記録。インドは、2019年同月比120.6%とシンガポールに次ぐ高い伸び率となっています。
10月データ詳細:豪州、北米
10月の豪州、北米の訪⽇外客数は、オーストラリアが6万2,000人、アメリカが21万1,900人、カナダが5万1,700人、メキシコが1万2,500人でした。
2019年同月比は、オーストラリアが120.2%、アメリカが138.2%、カナダが137.3%、メキシコが 169.3%でした。メキシコは23市場の中で韓国に次ぎ2番目に高い伸び率となっています。
豪州、北米の需要拡大の要因としては、円安に加え、日本行きの直行便数が2019年の水準まで回復したことなどが挙げられます。航空券の価格高騰などが懸念されていましたが大きな影響はなく、訪⽇外客数の大幅な増加となりました。
10月データ詳細:欧州
10月の欧州の訪⽇外客数は、イギリスは3万7,400人、フランスは3万4,400人、ドイツは3万900人、イタリアは1万6,300人、スペインは1万5,500人、ロシアは5,700人、北欧地域(スウェーデン、フィンランド、デンマーク、ノルウェーを合算)は1万4,400人でした。
このなかで2019年同月比で100%を上回ったのは、ドイツ(117.6%)、イタリア(110.7%)、スペイン(112.8%)の3か国。直行便数の回復、経由便航空商品の多様化、紅葉シーズンによる訪日需要の高まりなどが理由として挙げられます。
イギリスは、2019年9〜10月にラグビーワールドカップの日本開催で旅行者が大幅に増加した影響で、2019年同月比は54.7%でした。2023年9月の2万9,700人と比較すると8,000人近く増加していて、需要は回復傾向にあると言えるでしょう。
フランスの訪日外客数も、2019年ラグビーワールドカップの需要増があったにも関わらず、2019年同月比87.2%まで回復。ロシアは、引き続き各国からの制裁が続き、日本への直行便も運休している影響で、2019年同月比は39.7%でした。
北欧地域の2019年同月比は95.4%で、コロナ禍前とほぼ同じ水準となっています。
10月データ詳細:中東
GCC6か国(UAE、サウジアラビア、オマーン、バーレーン、カタール、クウェート)とイスラエル、トルコを合わせた中東地域の10月の訪日外客数は10,200 人でした。
イスラエル・パレスチナの情勢が悪化しているものの、2019年同月比は85.3%まで回復。一部の国における査証申請・手続きの緩和や直行便数の回復などが影響しているようです。
日本への直行便は、アブダビー関空間の新規就航などもありコロナ禍前を上回る数に。一方、テルアビブー成田間は情勢悪化を踏まえ10月26日以降運休が続いています。
<参照>
日本政府観光局(JNTO):訪日外客数(2023年10月推計値)