訪日ラボでは、最新の口コミデータを元に、都道府県ごとの「インバウンド人気観光地ランキング」を発表しています。千葉県編では、成田空港やディズニーリゾートといった、全国的に知名度の高い観光スポットが上位を占めました。そんな中、6位にランクインして注目を集めたのが「イオンモール成田」です。
イオンモール成田は、イオングループが全国に展開する商業施設の一つで、成田空港から車で15分ほどの場所に位置します。その立地から多くの訪日外国人が訪れ、シャトルバスを利用して訪れるインバウンド客数は、土日だけでも年間3万人を超えるそう。
訪日外国人から支持を得ている「イオンモール成田」は、どんな特徴があり、どのような取り組みを行っているのでしょうか。
今回編集部は、イオンモール成田でインバウンドを担当している牛牧氏、木川氏にお話を伺いました。
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スイスのスニーカーが爆売れ?イオンモール成田には、◯◯人が多く集まる
ーー館内に入って気が付いたのが、多言語表記にタイ語が使われているところです。タイからいらっしゃる方は多いのでしょうか。
はい、多いですね。最近は中国の方も増えつつありますが、タイ・ベトナム・台湾からいらっしゃる方で8割弱を占めていると思います。成田には、タイの寺院である「ワットパクナム」の日本寺院があり、その影響もあると思います。

ーー全国における9月の訪日タイ人は全体の約1.6%なので、かなり高い割合ですね。
はい。ひとつ特徴的な点で言うと、スポーツオーソリティ(大型スポーツ専門店)では、スイスのスニーカーブランド「On」がタイの方に非常に売れているそうです。そのため、全国から「On」の在庫を集めているそうですよ。
ーー「On」は、タイで人気を集めるバンコク都知事が履いていたことから、一躍タイ国内で話題になったそうです。「On」が売れているのは、イオンモール成田にタイ人が集まっている表れですね。

スーパーにお土産用売り場 イオンモールは「旅の最後に寄る場所」
ーー空港が近いという点では、イオンモール成田ならではの特徴はありますか?
キャビンクルーの方が来店される点は、特徴的ですね。クルーの方が宿泊されているホテルにヒアリングして、どのような声が届いているか聞くこともあります。
また全国のイオンモールでもインバウンドが強い店舗では、イオンモールが旅の目的地になることが多々あります。しかし成田に関しては、空港が近いため旅の最初か最後に寄るという方が多い傾向です。

特に東南アジアは深夜便が多いことから、帰りの飛行機までにホテルのレストランがやってない、あるいは食事を安く済ませたいという理由でイオンモールに来店されるケースがあります。
そのような場合は食事のほかにお土産を購入されることがあるので、カバンを扱う専門店ではお土産が入る大きいスーツケースがよく売れます。
そうなると今まで使っていたスーツケースが不要になるので、モールで廃棄できないかという相談も多く、困ってしまう場合があります。
ーーお土産は、どんなところで買うのでしょうか?
館内のスーパー(イオンスタイル)は、夜になると訪日外国人の方が多くいらっしゃいますね。一部のコーナーは、完全にインバウンド仕様にしていて、お茶やお菓子、インスタントラーメンなどが置いてあります。
ーー確かに、普通のスーパーでは見ないようなラインナップですね...!地元の方が使うスーパーに、突然インバウンド向け売り場が現れるのは面白いです。



話せなくてもOK インバウンドに「多言語対応」が評価された理由
訪日ラボが発表した「インバウンド人気観光地ランキング」千葉県編で、6位にランクインしたイオンモール成田。訪日外国人からの口コミでは、「多言語対応」が充実している点や、「従業員のおもてなし」が高評価の一因となりました。
ーー訪日外国人の方からは「多言語対応」の充実が評価されていますが、具体的にどういった施策をしているのでしょうか。
イオンモール成田では2019年に大規模リニューアルを行い、そこで多言語対応を行いました。館内では、最大で5言語(日本語、英語、韓国語、繁体字、タイ語)表記を行っています。

また各専門店にタブレットを貸し出していて、その中に翻訳アプリを入れています。警備や清掃を担当されている方にも、「ポケトーク」などの翻訳機を使用してもらっています。
外国語が話せない専門店スタッフも多いですが、よく訪日外国人の方にお目当ての専門店やトイレの場所などを聞かれるため、翻訳機を利用して対応しています。また、館内インフォメーションでも、タイ語や英語などで案内をしています。
関連記事:AI通訳機「ポケトーク」5年ぶり新機種、翻訳機能やセキュリティ強化
ーー人材教育という点ではどんなことをされているのでしょうか。
年数回、専門店向けのセミナーの中でインバウンドについても取り扱っています。
たとえば英会話の先生を呼んで、接客などの実際のシチュエーションで使えるフレーズを教えてもらう機会を設けたり、おすすめの翻訳アプリをスマートフォンに入れて、みんなで使ってみようというセミナーも実施しました。
ーー外国語が話せなくても、普段からツールなどを使った対応に慣れておくことで、満足度向上につながるんですね。インバウンド受け入れの中で、お客さまの反応が良かった施策はありますか?
イオンモール成田と連携しているホテルで、ノベルティの引換券を配布しているのですが、ゆるキャラの「くまモン」やボールペンの「フリクション」、最近では和のモチーフのキッチンスポンジが好評でした。
ノベルティをもらった方がSNSにあげ、それを見て興味を持った方がイオンモール成田に訪れる、という循環の輪が広がっていき、以前は月10件程度の引換だったのが、現在は1日10件まで伸びています。
ホテルのほか、ホームページでも同じ券を配布しているため、旅行の直前や旅ナカに投稿を見つけて来店される方も増えていますね。

インバウンド客が多くても、地元の人の声も大切に
ーーインバウンドにどんなものがヒットするかは予測不可能なところがありますが、施策のヒントはどこから得るのでしょうか。
先述の通り、キャビンクルーの方が宿泊されているホテルから生の声を聞いたり、簡単な来店アンケートを実施したりすることもあります。また、私たちがお客さま目線になって、こういうのがあったらいいな、と思うものを社内の打合せでそれぞれ出し合い、具現化することも多いですね。
イオンモール成田はインバウンドのお客さまが多いものの、基本的には地元のお客さまのご利用がメインです。
「地域の方々に日常生活でご利用いただきながら、インバウンドにおいてもご来店いただける施設」になれるよう、双方にとって利便性の高い、価値ある施設づくりを目指しています。
例えば以前、大人気キャラクターの「ちいかわ」のポップアップショップを開催したことがあります。「ちいかわ」は日本でブームになっているのに加え、海外の方にも大変人気のコンテンツということで、大好評でした。
インバウンドも意識しつつ、地域のお客さまとのバランスを大切にしています。
ーーターゲットとして、ついインバウンドに目がいきがちですが、まず地元の方に利用してもらえるかという視点をもち、バランスを取ることが重要ですね。今後、行っていきたい施策はありますか。
クーポンや引換券などを活用してお買い物を楽しんでいただく取り組みや、SNSを利用した旅マエ、旅ナカ施策は強化していきたいと思っています。あとは、地元やインバウンドの方々が、目で見て楽しんでいただける企画やイベントを実施していきたいですね。
以前、イベントの一環として、屋外のイベントスペースでお客さまが手持ち花火を楽しんでいたら、シャトルバス待ちの訪日外国人の方々に、大変興味を持っていただきました。
そういった言葉の壁を感じさせない、誰もが気軽に楽しめるコンテンツをご提供できるよう取り組んでまいります。
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<参照>
日本政府観光局(JNTO):訪日外客数(2024年9月推計値)
【6/11開催】欧米豪インバウンドに刺さる!“地域にどっぷり浸かる”ローカルイマーシブ観光とは?
本ウェビナーでは、株式会社movと株式会社大阪メトロ アドエラの共催により、欧米豪向けインバウンドをターゲットとした「ローカルイマーシブ “地域にどっぷり浸かる没入体験”の提供」をテーマに最新情報をお届けします。
2025年大阪・関西万博の開催を契機に、欧米豪を中心とした訪日外国人観光客が関西を中心に日本全国に訪れる機会が急増しています。
一方で、地域の受け入れ側には「英語対応が難しい」「どう関わればいいかわからない」「コンテンツや訴求方法がわからない」「対応できる人材がいない」といった課題も多く、せっかく外国人観光客が訪れても、地元に経済的な波及効果が十分届いていないのが現状です。
本セミナーでは、大阪メトロ アドエラが展開する欧米豪向けインバウンド事業「Osaka JOINER」をもとに“まち全体でインバウンド受け入れるスキーム”を通じた、インバウンドに関わる人と経済のパイを増やすための可能性を紹介します。
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<本セミナーのポイント>
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詳しくはこちらをご覧ください。
→欧米豪インバウンドに刺さる!“地域にどっぷり浸かる”ローカルイマーシブ観光とは?【6/11開催】
【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
<こんな方におすすめ>
- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
- 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
- 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
- インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
→「THE INBOUND DAY 2025」特設ページを見てみる
【インバウンド情報まとめ 2025年5月後編】2025年の訪日客数「4,500万人」へ、観光庁長官の見解は? ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。
この記事では、主に5月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
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→2025年の訪日客数「4,500万人」へ、観光庁長官の見解は? / 2025年訪米旅行者支出「125億ドルの損失」予想 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年5月後編】
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