ブランドエクイティとはブランドの持つ資産の集合体を指す言葉で、マーケティングにおいて重要な概念のひとつです。
本記事では、ブランドエクイティの重要性や構成要素、ブランドエクイティピラミッドや、その測定方法について整理します。また事例も紹介します。
インバウンドの最新情報をお届け!訪日ラボのメールマガジンに登録する(無料)
ブランドエクイティとは
ブランドエクイティとは、ブランドが持つ無形の価値や資産のことを指します。特定の商品やサービスが消費者にどのように認識され、他の商品やサービスと区別されるかを表す重要な概念です。
「ブランドが持つ信頼やイメージなどが、消費者の購買行動や企業の利益にどれだけ影響を与えるか」を指すもので、高いブランドエクイティを持つことは、企業にとって競争優位性を築く重要な要素となります。
たとえばブランドエクイティが高いと、消費者はそのブランドの商品やサービスを優先して選ぶ傾向があります。たとえば、「品質が良い」「信頼できる」というブランドのイメージが購入の決め手になることがあります。
ブランドエクイティを高めるメリット
ブランドエクイティが高まると、どのようなメリットがあるでしょうか。
1. 顧客に信頼感を与えられる
消費者は商品を選ぶときにブランドを判断要素のひとつとしています。
たとえば、消費者がイヤホンを買おうと思ったとき「ソニーなら音質が良いだろう」と考え、購入候補に入れるとしましょう。消費者は同社製品の利用経験の有無にかかわらず、イヤホンにおいてはソニーというブランドの提供する価値が一定であると信頼しており、このような消費行動をとります。
その理由は、消費者はこれまでに報道や周囲の体験、広告などを通じた宣伝メッセージを通じて、ブランドのイメージを持っているからです。
このようにブランドは、実体験がなくとも消費者に信頼感を与える要素となり、安心した購入につながります。
2. 競争優位性を保てる
ブランドは顧客に信頼感を与えるのと同時に、競争優位性を保つ効果があります。
先ほどの例でいうと、ソニーというブランドによって他社の競合商品に埋もれることなく、消費者の興味を引くことが可能になります。
また、ブランドが確立できている場合、値段競争に巻き込まれるリスクを減らすこともできます。「このブランドの商品ならこの価格の価値がある」という意識を消費者に持ってもらえます。
3. リピーターが増える
ブランドエクイティを高めることは、顧客の信頼や愛着を深め、リピーターを増やす大きな効果があります。
リピーターは企業に安定した収益をもたらすだけでなく、ブランドの支持者として口コミやSNSで新規顧客の獲得にも貢献します。これにより、企業の成長と競争力の向上につながります。
ブランドエクイティの5つの構成要素|アーカーモデル
ブランドエクイティを説明するモデルには、「アーカーモデル」と「ケラーモデル」の2つがあります。まずは、「アーカーモデル」に基づく5つの構成要素について解説します。
アーカーモデルでは、ブランドエクイティを構成する5つの要素が段階的に消費者に受け入れられ、ブランドが定着していくプロセスを示しています。この過程は、ブランドの市場価値を高めることと密接に関連しています。
構成要素1. ブランド認知
ブランドが認知されている度合いを「ブランド認知」といいます。
消費者の行動は、そのブランドを知っているか知っていないかで大きく変わります。知っているブランドであれば安心感を得やすいでしょう。
また、ブランド認知はそのブランド名だけでなく、「このブランドは環境に配慮している」などといった特定のイメージも同時に認識されていることを意味します。
構成要素2. 知覚品質
消費者が対象のブランドに対して認識している品質を「知覚品質」といいます。企業の実際の商品の品質そのものではなく、消費者がブランドに対して感じている品質を指します。
たとえば、一般的に「神戸牛」は品質が高いイメージを持たれていますが、実際に他の牛肉との違いを明確にいえる人は少ないでしょう。このように、ブランドに対する品質のイメージが「知覚品質」です。
構成要素3. ブランドロイヤリティ
消費者がブランドに対して感じる愛着の度合いを「ブランドロイヤリティ」といいます。ブランドに対する愛着が高いと消費者は商品をリピート購入しやすくなり、企業の利益にもつながります。
ただし、リピート購入する理由が「他にいい商品がない」という消極的なものだと、ブランドロイヤリティが高いとはいえません。リピートの理由がどういったものなのか見極めることが重要です。
構成要素4. ブランド連想
消費者がブランド名を聞いて連想できるものすべてを「ブランド連想」といいます。
たとえば、「LEGO(レゴ)」と聞いて、カラフルなブロックや子供のおもちゃ、踏むと痛いといったイメージを思い浮かべるでしょう。
消費者がブランド名から連想する情報すべてがブランド連想です。ポジティブでしっかりしたイメージを消費者に持ってもらえると、競合との差別化にもつながります。
構成要素5. その他のブランド資産
ブランドに関係するいろいろな無形資産のことを「ブランドエクイティのその他の資産」といいます。企業が過去に築き上げてきた取引先との関係性、商品の商標や特許などの知的所有権などもこれに当たります。
たとえば、特許などは競合から技術やアイデアを守ることができ、優位性を保てます。このようなブランドを守る力も資産と見なされます。
ブランドエクイティピラミッド|ケラーモデル
ケラーモデルは、ブランドエクイティ(ブランドが持つ無形の価値)を構築するプロセスを、ピラミッド型で示したフレームワークです。ケラーモデルでは、ブランド価値を高めるために、顧客との関係を段階的に深めていく必要があるとされています。
ピラミッドは4つの層と6つの構成要素で構成され、ブランドが最終的に消費者の「共感(Resonance)」を得ることを目指します。
1. 基盤:ブランド認知(Brand Identity)
ブランドを消費者に認識してもらう段階です。ブランド名やロゴを覚えてもらい、特定のカテゴリー内で思い出される存在になることが目標です。ここでの構成要素は「知名度(Brand Salience)」が該当します。
2. 第2層:ブランドの意味(Brand Meaning)
ブランドがどんな価値やイメージを持っているのかを消費者に伝える段階で、ブランドの実用的な価値と感情的な価値を消費者に理解させることが目標です。構成要素は、商品やサービスの機能、品質、信頼性を示す「性能(Performance)」とブランドが消費者に与える感情やライフスタイルとの関係性を示す「イメージ(Imagery)」が該当します。
3. 第3層:ブランド応答(Brand Response)
ブランドに対する消費者の評価や感情を形成する段階です。消費者にブランドへのポジティブな評価や感情を持たせることが目標となります。この段階の構成要素は、ブランドの信頼性、品質、適合性に関して理性的に評価する「判断(Judgments)」と、ブランドが消費者に与える感情的な影響(安心感、誇り、喜びなど)を示す「感情(Feelings)」です。
4. 頂点:ブランド共鳴(Brand Resonance)
消費者とブランドが強く結びつき、ブランドへのロイヤルティが形成される最終段階です。ブランドが消費者にとって唯一無二の存在となり、他に代替が効かない状態を作るのが目標です。この段階の構成要素は、ブランドへの強い支持を示す「共鳴(Resonance)」です。
ブランド価値を高めるには、顧客との関係を基礎から段階的に深めていく必要があります。ブランドの成功には、品質などの実用的な価値だけでなく、感情に訴える価値も重要です。
ブランドの認知から共鳴までの4つの段階を体系的に整理し、それぞれの階層で達成すべき目標を明確にすることで、持続可能なブランド価値の向上を図ることができます。
ブランドエクイティの測定方法
ここではブランドエクイティ、すなわちブランドの価値をどのように測るのかを説明します。
計測方法はおもに、「コスト・アプローチ」「キャッシュフロー・アプローチ」「NPS®」の3つがあります。それぞれ解説します。
1. コスト・アプローチ
そのブランドを確立するために費やされたコストを合計して評価する方法を「コストアプローチ」といいます。
広告やロゴ、Webサイトの制作費用、ライセンスの登録などがコストとして計算されます。具体的には、企業が実際に支出した費用を合計する「歴史的原価によるアプローチ」と、そのブランドと同規模、同ジャンルのブランドを新しく作るために必要な費用を計算する「再調達原価によるアプローチ」があります。
2. キャッシュフロー・アプローチ
ブランドが将来的に生み出す利益からブランドの価値を評価する方法を「キャッシュフローアプローチ」といいます。
コストアプローチと比べて将来の利益を加算できるメリットもありますが、将来の利益はあくまで予測であり、正確にブランドエクイティが測れないというデメリットもあります。
3. NPS® (ネットプロモータースコア)
企業に対する消費者の愛着や信頼を測る指標を「NPS® (ネットプロモータースコア)」といいます。
ベインアンドカンパニー社によって提唱された指標で、「第三者にすすめたいかどうか?」といった質問を消費者に投げかけ、ブランドに対する愛着や信頼を数値化します。
この方法は、企業の業績とも関連し計測の方法も簡単なため、多くの企業で取り入れられています。
ブランドエクイティの構築という視点から、市場でのポジション確立を考える
ブランドエクイティは、売り上げを左右する重要な要素です。高いブランドエクイティが構築できれば、消費者に広く認知されるため、リピート購入や競合との差別化がはかれ長期的な利益につながります。
ブランドエクイティの内容を理解したうえで、さまざまな測定方法から自社のブランドエクイティを分析し、今後の経営に活かすことで売上向上が見込めるでしょう。
インバウンド対策にお困りですか?
「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウンドの集客や受け入れ整備のご相談に対応します!
<参照>
Rakuten Insight:ブランドエクイティの測定方法(1)
「売れる観光コンテンツ」5つの法則!地域独自の魅力を活かしたインバウンド向け体験商品のつくり方
インバウンドを地方へ誘客するにあたり、課題の一つとして挙げられるのが観光コンテンツの不足です。地域の魅力を最大限に活かした「この地域だからこそ体験できるコンテンツ」をつくるのが理想ですが、どのように他の地域と差別化すればいいのかがわからず、悩んでいる自治体・企業の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回訪日ラボでは、観光庁「地域観光魅力向上事業」の一次公募が3月3日から開始されるのに合わせて、「売れる観光コンテンツ」をつくるポイントを専門家が解説するセミナーを開催します!無料でご覧いただけますので、ご興味のある方はぜひお申し込みください。
※観光庁の事業に応募しない方もお申し込み可能です!
<本セミナーのポイント>
- 国内外の観光客から支持されるコンテンツをつくる専門家・ライフブリッジ代表の櫻井氏が登壇!
- 「ほかの地域と被らない」ユニークな観光コンテンツをつくるための考え方が学べる!
- インバウンドの集客につながりやすいコンテンツの特徴が理解できる!
詳しくはこちらをご覧ください。
→「売れる観光コンテンツ」5つの法則!地域独自の魅力を活かしたインバウンド向け体験商品のつくり方
【インバウンド情報まとめ 2025年2月前編】12月の外国人宿泊数1,529万人、2024年累計は過去最高 ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月発行しています。
この記事では、主に2月前編のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
※口コミアカデミーにご登録いただくと、レポートの全容を無料にてご覧いただけます。
詳しくはこちらをご覧ください。
→12月の外国人宿泊数1,529万人、2024年累計は過去最高 ほか:インバウンド情報まとめ【2025年2月前半】
今こそインバウンドを基礎から学び直す!ここでしか読めない「インバウンドの教科書」

スマホ最適化で、通勤途中や仕込みの合間など、いつでもどこでも完全無料で学べるオンラインスクール「口コミアカデミー」では、訪日ラボがまとめた「インバウンドの教科書」を公開しています。
「インバウンドの教科書」では、国別・都道府県別のデータや、インバウンドの基礎を学びなおせる充実のカリキュラムを用意しています!その他、インバウンド対策で欠かせない中国最大の口コミサイト「大衆点評」の徹底解説や、近年注目をあつめる「Google Map」を活用した集客方法など専門家の監修つきの信頼性の高い役立つコンテンツが盛りだくさん!