【連載:マーケティング用語・施策の基礎解説】 |
近年、マーケティング、人材育成、教育、ヘルスケアなど、幅広い分野で「ゲーミフィケーション」という言葉を耳にする機会が増えました。
ゲーミフィケーションとは、ゲームで人々を夢中にさせる要素(ポイント、レベル、バッジ、ランキング、チャレンジ、ストーリーなど)を、ゲーム以外の領域に応用し、人々のモチベーションを高め、特定の行動を促すための戦略的なアプローチです。
多くの企業や組織がゲーミフィケーションに注目している背景には、ユーザーのエンゲージメント(関与度)向上、顧客ロイヤリティの醸成、従業員の学習意欲向上や生産性向上といった、現代的な課題を解決するポテンシャルがあるからです。
人々は「楽しい」「達成感がある」と感じる体験には、自然と積極的に関わるようになります。
この記事では、「ゲーミフィケーションとは何か?」という基本的な定義から、その具体的なメリット・デメリット、注目されるようになった背景、効果的な設計のための構成要素(作り方のポイント)、そして国内外の様々な成功事例まで、分かりやすく解説していきます。
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ゲーミフィケーションとは
ゲーミフィケーションとは、「日常生活のあらゆる要素をゲームの形にする」という意味の「ゲーム化(Gamify)」という言葉から派生しました。
人を楽しませることに長けた「エンターテイメント」の代表格であるゲームの要素や考え方を、ビジネスなどの分野において、ユーザーとのコミュニケーションに応用していく取り組みを指します。
ゲームならではのユニークかつ柔軟な発想や仕組みで、ユーザーの関心を集め、消費行動を活発化させる手法として注目されています。
ゲーミフィケーションが注目されるようになった背景
ゲーミフィケーションという言葉は2010年頃から使用されるようになりましたが、考え方自体は以前から存在していました。
改めて注目を集めるようになった背景としては、インターネット環境が整い、ユーザー側がゲーム的要素をより容易に体験できるようになったことが考えられます。
スマートフォンの普及により日々の生活や体験の記録が身近になったことは、ゲームの「レポート」といった要素と親和性が高く、日常生活の様々な要素をゲームに組み込みやすくなりました。
インターネットの高速化でコミュニケーションが容易になり、迅速かつ的確なフィードバックが得られるようになったことも理由のひとつとして挙げられます。
ゲーミフィケーション導入のメリット・デメリット
ゲーミフィケーションは多くの可能性を秘めていますが、導入を検討する際には、その利点と注意点の両方を理解しておくことが重要です。
ゲーミフィケーションの主なメリット
主なメリットとしては、まずユーザーエンゲージメントの向上が挙げられます。ゲームの持つ「楽しさ」や「達成感」が、ユーザーをサービスに引き込み、継続利用や積極的な関与を促します。
また、明確な目標や報酬はユーザーのモチベーションを高め、学習意欲や目標達成への意欲向上につながります。これにより、ポイント獲得のための購買行動や、健康アプリでの運動習慣化といった望ましい行動変容を自然に促すことも可能です。
さらに、ポジティブな体験はブランドへの愛着(顧客ロイヤリティ)を育み、ファン獲得にも貢献します。教育分野では学習効果の向上も期待でき、収集した行動データはサービス改善に活用できます。
ゲーミフィケーションのデメリットと注意点
一方で、デメリットや注意点も存在します。
効果的なゲーミフィケーションの設計・実装は専門知識を要し、コストや時間もかかります。また、導入当初は効果があっても、ユーザーが飽きてしまうと効果が長続きしない可能性があり継続的な改善が必要です。
報酬のみが目的となったり、過度な競争がユーザー間の不和を招いたりするリスクもあります。ターゲット層に響かない設計は逆効果になることも考慮すべきです。
加えて、ユーザー心理を利用する側面があるため、過度な利用や依存を助長しないよう、倫理的な配慮に基づいた慎重な設計が求められます。
身近なサービスに活用されるゲーミフィケーションの例
ゲーミフィケーションは、意識していなくても、私たちの周りの様々な業界やサービスで活用されています。
ここでは、業種やサービスの種類別に、具体的な3つの活用例を見ていきましょう。
1. 小売・サービス業:ポイントプログラムと会員ランク制度
多くのカフェ、小売店、航空会社などで導入されているポイントプログラムや会員ランク制度は、ゲーミフィケーションの典型例です。
顧客は購入金額や利用頻度に応じてポイントを獲得し、貯まったポイントを割引や特典と交換(報酬)できます。さらに、年間の利用実績などに応じて会員ランク(ステータス)が上がり、ランクに応じた限定オファーや優先サービスを受けられることもあります。
これらの仕組みは、顧客に「もっと利用したい」「上のランクを目指したい」という動機を与え、リピート利用や顧客単価の向上、そしてブランドへのロイヤリティを高める効果を狙っています。
2. 教育・学習分野:学習プラットフォームやアプリ
語学学習アプリやオンライン学習プラットフォームなど、教育分野でもゲーミフィケーションは積極的に活用されています。学習者は、レッスン完了や課題提出によって経験値(XP)やポイントを獲得し、レベルアップを実感できます。
学習を毎日続けることで報酬が得られる連続記録(Streak)機能や、他の学習者と進捗を競い合うランキング機能は、学習モチベーションの維持に役立ちます。
特定のスキル習得を示すバッジの獲得や、仮想通貨でのアイテム購入といった要素も、単調になりがちな学習に「楽しさ」を加え、主体的な学びと習慣化を促進します。
3. 健康増進分野:フィットネスアプリやウェアラブルデバイス
健康意識の高まりとともに、フィットネスアプリやスマートウォッチなどのウェアラブルデバイスでもゲーミフィケーションが広く使われています。日々の歩数、運動時間、消費カロリーなどの目標を設定し、その達成度を可視化(プログレスバーなど)することで、利用者は進捗を容易に把握できます。
目標達成時にバッジやトロフィーを獲得したり、月間チャレンジなどの期間限定イベントに参加したりすることで、達成感や運動継続の意欲が高まります。
また、友人や他のユーザーとランキングで競ったり、達成記録を共有したりするソーシャル機能も、運動を楽しく続けるための重要な要素となっています。
効果的なゲーミフィケーションを設計する6つのポイント(構成要素)
ゲーミフィケーションを成功に導くためには、いくつかの重要な構成要素(ゲームメカニクス)を理解し、戦略的に組み合わせる必要があります。
ここでは、ゲーミフィケーションを効果的に設計するための6つのポイントを解説します。
1. 明確な目標 とルール
ユーザーが「何をすれば良いのか」「何を目指すのか」を具体的に示します。
例えば、「〇〇を達成する」「レベル〇に到達する」といった明確な目標と、そのための分かりやすいルールを設定することが、参加の第一歩です。
2. 課題と達成可能なステップ
ユーザーのスキルレベルに合わせて、適切な難易度の課題を設定します。
簡単すぎず、難しすぎない「ちょうどよい」挑戦が、ユーザーの没入感と「もっとやりたい」という意欲を引き出します。目標達成までの道のりを小さなステップに分けることも有効です。
3. 報酬 とインセンティブ
課題達成に対する見返りとして、ユーザーが価値を感じる報酬を用意します。
報酬には、ポイント、バッジ、仮想通貨、限定アイテム、割引クーポン、ステータス(称号)、ランキング上位表示など様々な種類があります。これらを効果的に組み合わせ、ユーザーの達成感を刺激し、次の行動への動機付けを行います。
4. 迅速なフィードバック
ユーザーの行動に対して、システムが即座に反応を返すことが重要です。
「ポイント獲得!」「レベルアップ!」といった即時フィードバックは、ユーザーに「自分の行動が認識され、評価されている」という感覚を与え、モチベーション維持につながります。
5. 進捗の可視化
目標達成までの道のりや現在の状況を、プログレスバー(進捗ゲージ)、レベル、経験値、獲得バッジ一覧などで視覚的に分かりやすく示します。
「あとどれくらいで達成できるか」が見えることで、ユーザーは目標達成への意欲を維持しやすくなります。
6. 社会的交流
ランキング、チーム協力、掲示板、SNS連携などを通じて、ユーザー同士が交流できる仕組みを取り入れます。
他者との比較(競争)や協力、承認欲求などが刺激され、コミュニティへの帰属意識やエンゲージメントを高める効果が期待できます。
ゲーミフィケーションを活用し、顧客の心をつかむマーケティングを
ゲーミフィケーションを活用したマーケティングにより、ユーザーの注目を集め効率的な集客を図ることが期待できます。
明確なゴールを設定し、課題とリターンを決定、ユーザー同士の交流ができる場を作ることで、総合的にサービスの活性化、リピート率の向上や売り上げ拡大につながります。
ユーザーの心を掴むユニークな方法で、顧客の消費行動を促進させる「ゲーミフィケーション」のビジネスへの応用は、今後も注目が集まっています。
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