民泊にかかる消費税について | 法律上の取り扱い・免税となる場合・申告に関する注意を解説

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【連載:マーケティング用語・施策の基礎解説】

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自宅の空き部屋などを活用し、インバウンド需要の拡大とともに急速に普及した「民泊」。気軽に始められる一方で、「消費税はかかるの?」「どんな時に免税になるの?」「計算はどうすればいい?」など、税金に関する疑問を抱える方も少なくありません。

2018年の住宅宿泊事業法民泊新法)施行以降、民泊事業における税務上の取り扱いも明確化されてきましたが、その複雑さに戸惑う声も聞かれます。

本記事では、民泊事業で発生する消費税について、これから民泊を始める方や、すでに運営している方が知っておくべき課税・非課税の判断基準、免税事業者の条件、さらには具体的な消費税の計算・申告方法、海外サイト利用時の注意点まで、分かりやすく解説します。

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民泊と消費税の基本、なぜ課税されるのか?

民泊事業における消費税の取り扱いを理解するには、まず民泊が法令上どのように位置づけられているかを知ることが重要です。

民泊の法的な位置づけと消費税

多くの人が自宅の空き部屋などを「住宅の貸付け」と考えて非課税と思いがちですが、民泊は原則として消費税の課税対象となります。その理由は、以下の法令上の位置づけにあります。

民泊は「旅館業」に準ずるサービスとみなされるため

厚生労働省の「民泊サービス旅館業法に関するQ&A」によると、民泊は「住宅(戸建住宅、共同住宅等)の全部または一部を活用して宿泊サービスを提供すること」とされています。

そして、住宅宿泊事業(民泊新法)としての届出や、国家戦略特別区域法の特区民泊の認定を受けていない限り、原則として「旅館業法」の許可が必要と規定されています。

消費税法上の「住宅の貸付け」の例外に該当

消費税法では、「住宅の貸付け」は原則として非課税とされています。しかし、以下の場合は例外として「課税対象」となります。

  • 貸付期間が1ヶ月に満たない場合
  • 旅館業法第2条第1項に規定する旅館業に係る施設の貸付けに該当する場合

民泊は一般的に短期間の宿泊であり、簡易宿泊所のような「旅館業」に準ずるサービスとみなされるため、上記の例外に該当し、消費税の課税対象となるのです。

住宅宿泊事業法(民泊新法)とは

2018年に施行された住宅宿泊事業法民泊新法)は、民泊サービスが従来の旅館業法の枠組みに収まりきらなかったため、その法的枠組みを明確にするために制定されました。

この新法により、民泊は以下の主要な規定のもとで運営されることになりました。

利用日数の上限

年間180日を超えて宿泊サービスを提供することはできません。

法律の対象事業者

住宅宿泊事業者、住宅宿泊管理業者、住宅宿泊仲介業者の3種類が規定されています。

民泊施設として利用できる住宅の規定

人の居住の用に供されていると認められる家屋などが対象となります。


これらの法整備により、民泊事業の健全な発展が促される一方で、消費税を含む税務上の取り扱いも明確化されました。

民泊で消費税がかかるケース、かからないケース(免税事業者)

民泊事業で最も気になるのが「消費税がかかるのか、かからないのか」という点でしょう。ここでは、民泊における消費税の基本的な考え方と、免税事業者となる条件について詳しく解説します。

民泊の宿泊料は「原則課税」

先ほども触れたように、民泊の宿泊料は基本的に消費税の課税対象となります。これは、自己所有の住宅の貸付けであっても、以下の理由から「住宅の貸付け」の非課税規定が適用されないためです。

  • 貸付期間が概ね1ヶ月未満であること
  • 旅館業法に規定される簡易宿泊所に該当すること

これらの条件を満たす民泊の運営者は「消費税課税事業者」に該当し、宿泊料に消費税を上乗せして徴収し、国に納める義務が発生します。

免税事業者となる場合:年間売上が1,000万円以下

民泊事業を始めたばかりの方や、小規模で運営している方は、消費税の納税義務が免除される「免税事業者」となる可能性があります。

消費税には「免税規定」が設けられており、以下の条件を満たす場合は免税事業者となります。

基準期間の課税売上高が1,000万円以下の場合

  • 個人事業主:その年の前々年の課税売上高
  • 法人:その事業年度の前々事業年度の課税売上高

例えば、2025年に民泊事業を開始した場合、2025年と2026年は原則として免税事業者となります。しかし、上記の基準期間の課税売上高が1,000万円を超えた場合、その課税期間から消費税の納税義務が生じます。

【注意点】特定期間の課税売上高

基準期間の課税売上高が1,000万円以下で免税事業者となった場合でも、以下の「特定期間」における課税売上高が1,000万円を超えた場合は、その課税期間から納税義務が生じます。

  • 個人事業主: その年の前年1月1日から6月30日までの6ヶ月間
  • 法人: その事業年度の前事業年度開始日以後6ヶ月間

この特定期間の売上高は、給与等支払額で判定することも可能です。

インボイス制度との関連性

2023年10月1日から始まったインボイス制度(適格請求書等保存方式)は、消費税の仕入れ税額控除の仕組みに大きな影響を与えます。

免税事業者のままだと、課税事業者である利用者が仕入れ税額控除を受けられなくなるため、取引に影響が出る可能性があります。ご自身の事業規模や取引先との関係性に応じて、課税事業者となるべきかどうかの検討も必要です。

消費税の計算や申告に関する注意

民泊サービスにおいて消費税の計算をする場合、食事の有無により適用されるみなし率が異なるなど注意すべき点があります。そこで、民泊サービス業者が消費税を申告する場合の注意点や、意外と複雑な具体的な計算方法について解説します。

民泊における消費税の計算

消費税の納税額は、次のような計算式で計算します。

納付税額=売上にかかる消費税額-仕入れ等にかかる消費税額

売上にかかる消費税額とは、税抜きの課税売上高を千円未満切り捨てにし(課税標準)て国税率を乗じて算出するもので、現在消費税の国税率には8%と10%の2種類の税率が混在しています。

仕入れ等にかかる消費税額は、課税売上高が5千万円以下の事業者の場合、簡易化された仕入控除税額の計算を認める簡易課税制度が適用されます。

民泊サービスの場合は第5種事業に分類されるため、仕入れに対するみなし率は50%として計算します。つまり、仕入れ等にかかる消費税額は、売上にかかる消費税額にみなし仕入れ率50%をかけて算出します。

食事を提供する場合の取り扱い

ただし、宿泊者に食事の提供をする場合には、宿泊のみの場合とは消費税の計算方法が異なります。

納付税額の基本的な計算式は同様ですが、簡易課税制度において宿泊代が第5種事業に属するのに対し、食事代は第4種事業扱いになり、仕入れのみなし率が60%になるため納付税額が変わってきます。

しかし、上記の例は「宿泊代+食事代」として利用者に料金を請求する場合に適用されるものであるため、同じように食事を提供する場合でも「2泊3日夕食代込みで3万円」のように食事代込みで宿泊料を定めている場合には該当しません。

この場合には食事を提供していても宿泊料全額が第5種事業の対象となるため、仕入れのみなし率は50%になります。

海外の民泊サイト等を利用した場合

日本国内で民泊サービスを行う場合でも、国外事業者が運営するインターネット宿泊予約サイトに宿泊施設を掲載することが少なくありません。現在こうしたケースで適用されているのが、リバースチャージ方式です。

海外民泊サイトの利用に際して支払った広告料に対しては、消費税がかかりません。ところが、同様のサービスを提供する日本企業に対して広告料の支払いを行った場合には消費税が課税され、広告主の仕入税額控除の対象となります。

リバースチャージ方式はこの不平等を解消するために導入されたもので、「国外事業者から事業者向け電気通信利用役務の提供を受けた場合、サービスの受け手である国内事業者に消費税を課す」と定義されています。つまり、海外の民泊サイトを利用した場合には、広告料の支払い者が消費税を納めることになります。

ただし、課税売上割合が95%以上なら支払った消費税の全額が控除できるで、この場合は実際の消費税負担はない計算になります。

民泊事業における消費税、正しい理解と適切な対応を

本記事では、民泊事業者が知っておくべき消費税の基本から、課税・免税の条件、具体的な計算方法、さらには海外の民泊サイトを利用した場合の「リバースチャージ方式」まで、多岐にわたる側面を解説しました。

ご覧いただいたように、民泊の消費税は、宿泊料金の設定(食事の有無)や売上規模、利用するプラットフォームによって取り扱いが複雑に変化します。法令遵守はもちろんのこと、消費税をはじめとする税務の正しい知識を身につけ、適切な申告・納税を行うことは、民泊事業を安定的に運営していく上で不可欠です。

ご自身の状況で判断に迷う場合は、管轄の税務署や税理士などの専門家へ相談することをおすすめします。正確な税務処理を行い、安心して民泊事業に取り組みましょう。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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