AIテクノロジーと「おもてなし」をどう両立するか──ブッキングドットコム主催イベントレポート

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5月22日、EXPO 2025(大阪・関西万博)会場内のオランダパビリオンにて、ブッキング・ドットコム・ジャパン株式会社が主催するセッションイベント「オーセンティックジャパン」が開催されました。

「オーセンティックジャパン」は、さまざまな宿泊施設や旅行体験を提供する世界最大級のデジタルトラベルプラットフォーマー・Booking.comが、日本全国の旅館施設関係者総勢80名以上を招き、テーマに沿ってパネルディスカッションなどを行うイベントです。

オランダ王国パビリオン
▲オランダ王国パビリオン

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「誰もが世界を体験できる社会」を実現するために

1部の冒頭では、Booking.com アジア太平洋地域担当マネージング・ディレクターのローラ・ホールズワース氏より開会の挨拶が行われました。

ローラ氏は、Booking.comのミッション「誰もが世界を体験しやすくすること」について「私たちは技術の力を活用して、旅行者と皆様のような旅行提供者をつなぎ、また、目的地での体験や文化的な体験ともつなげています」と述べ、「イノベーションは私たちのすべての活動の中心にあり、本日はその点について多くを共有する予定です」と意気込みを語りました。

続いて、日本が観光業の活性化のために掲げている「2030年までに6,000万人の訪日旅行者を目指す」という目標について、この数値が今年予測されている訪日旅行者数のほぼ倍増にあたるとし、目標達成のためには「東京や大阪といった主要都市の枠を越えて、観光客が国全体にわたって観光を楽しめるようにすること」が大切だと述べました。

さらに「世界中の旅行者の約80%が本物の文化的体験を求めている」「60%以上の旅行者が伝統を重視したウェルビーイング体験を求めている」といったデータを発表。それらのニーズが日本の特徴に合致すると話し、日本のインバウンドは今後より盛り上がりを見せるのではないかと強調しました。

ローラ・ホールズワース氏
▲ローラ・ホールズワース氏

続いて、大阪・関西万博内のパビリオンを担当するオランダ外務省 アイノ・ヤンセン氏、Booking.com 渉外部門最高責任者のピーター・ロックビラー氏によるトークセッションが行われました。

ピーター氏は「エキスポに参加させていただきましたが、活気に満ちていて素晴らしいですね」と感想を述べ、「子どもたちが私たちに手を振って『こんにちは』と声をかけてくれました。このエキスポを実現するために、皆さんが何年も努力されてきたことを知っています」とねぎらいました。

ピーター・ロックビラー氏
▲ピーター・ロックビラー氏

続いてアイノ氏からパビリオンの紹介が行われました。オランダパビリオンはオランダ人建築家のトーマス・ラウ氏によって設計され、上から見ると日本国旗のように見えるなど、両国間の関係を表したものになっているそう。

アイノ氏は、「パビリオンを出展すること以上に重要なのは、万博への参加を通して、経済・文化・政治のあらゆる分野において、来場者との確かな関係を強化することです」と述べ、「日本はオランダにとってますます重要な国になっているので、世界のあらゆる発展を考えても、日本との良好な関係を築くことは戦略的に重要です」と語りました。

アイノ・ヤンセン氏
▲アイノ・ヤンセン氏

実際に視察をした際のエピソードも交えながら、パビリオンの盛り上がりを祈るトークセッションとなりました。

AIテクノロジーと「おもてなし」をどう両立するか

2部のパネルディスカッションでは、「旅館業界が抱える課題と展望」をテーマに、油谷湾温泉ホテル楊貴館 取締役 岡藤 明史氏、ホテルおかだ 常務取締役 営業部長 原 洋平氏、Booking.comアジア地区統括ディレクター 竹村 章美氏が登壇しました。

竹村 章美氏、岡藤 明史氏、原 洋平氏
▲左から、竹村 章美氏、岡藤 明史氏、原 洋平氏

パネルディスカッションでは、竹村氏がBookng.comの最新のレポートについて触れ、「世界の旅行者のおよそ66%のお客様がテクノロジーを活用して旅行を決めたという結果が出ています。どのような形でAIを活用していらっしゃいますか?」と質問。

原氏は、機械学習を用いて、プランの出し入れの自動化、チャットボットの導入などを進めていると回答。さらに「不満点・満足点といったお客様からのお声をはじめとした社内の情報を収集して、社内のノウハウ蓄積にも活かしています」と話し、「不満点としてよくお声をいただく、アクセスのしづらさや渋滞など交通状況については、2年前に箱根DMOがリリースした箱根観光デジタルマップを活用し、運行状況がリアルタイプでわかるように工夫をしています」と具体的な活用方法を述べました。

岡藤氏は、「AIDXに関してはあくまで手段として捉えていて、それが目的にならないようにしています」とテクノロジー導入に対する見解を示し、「たとえば海外のお客様が来られると、宗教的な考えの違いから生まれる食事への細やかな対応が必要になりますよね。そういった場面でデジタルを活用することで、ヒューマンエラーが起きない状況をどう作っていくかを考え、導入を進めています」と回答しました。

最後に、インバウンドAIなどで変わりつつある旅館の未来について問われた岡藤氏は「我々は今まで守られてきたものをより磨いて、どう伝えていくかをテーマにしています。そうすることで唯一無二の旅館になっていくと思いますし、選ばれる旅館づくりにつながると思っています」と語りました。

続いて原氏は「日本の旅館はずっと“一泊二食”のプランが主流となってきました。そういったプランを選択するお客様が増えると自然と滞在時間も延びるので、それに合わせて温泉や気軽に入れる足湯を用意し、一日中楽しめるようなプランを練る必要があると思っています。さらに、それだけお客様に接客をする時間も延びるので、おもてなしの心を育む姿勢も大切になるのではないでしょうか」と話しました。

生成AIがオーバーツーリズムの問題を解消する

3部では、Booking.comAIプロダクト最高責任者のエイドリアン・エンギスト氏が登壇。「最新のAIテクノロジーと世界中の旅行着の交差点を探る」をテーマにプレゼンテーションを行いました。

エイドリアン・エンギスト氏
▲エイドリアン・エンギスト氏

エイドリアン氏は、以前はガイドブックや専門の旅行代理店を通じてでしか手に入れられなかった観光地の情報が、インターネットの誕生やBooking.comの影響によって、訪日外国人観光客が日本の宿泊施設を簡単に予約できるようになった経緯について触れました。訪日外国人観光客数が増えたというポジティブな面もある一方で、そのような経緯があったからこそ、特定の場所に観光客が集中し、オーバーツーリズムが発生する問題が生まれたと切り込みました。

続いて、オーバーツーリズムの問題を解消してくれるのもまた、InstagramTikTokといったオンライン上の動画コンテンツであると話し、観光地に辿り着く情報量が増えることで、観光の多様化やスポットの発見されやすさにつながると語りました。

そのうえで「これらのコンテンツが興味を引く一方で、実際の移動手段や計画といった現実的な情報が不足しているのも事実です」と指摘。この状況を打破するためにAIが活用できるとし、「生成AIは、動画やブログ、既存のドキュメント、調査結果などを分析し、分かりやすい情報に変換します。さらに、生成AI多言語対応の力を持っているので、どんな言語であってもユーザーに応答できます」と魅力を語りました。

最後に「生成AIは言語の壁を取り払い、地域の魅力的なスポットを発見しやすくする大きな可能性を秘めています」と、AI活用によってオーバーツーリズムの解消や訪日外国人観光客の利便性向上につながる期待を述べ、プレゼンテーションを締めくくりました。

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      この記事の筆者

      訪日ラボ編集部

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