観光庁の村田茂樹長官は9月17日、定例会見を実施。同日に発表された日本政府観光局(JNTO)訪日外客統計などについて報告しました。
さらに長官は、一部市場の動向や、開催が迫るツーリズムEXPOジャパン2025、観光客によるスーツケースの放置問題などについて、それぞれ所感を述べました。
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訪日客数、8月として初の300万人超え
8月の訪日外国人数は342万8,000人(前年同月比16.9%増)となり、8月として初めて300万人を超え、過去最高を記録しました。昨年2月以降、19か月連続で同月過去最高を更新しています。訪日需要の堅調な推移と航空便の回復により、「力強い成長軌道に乗っている」として、引き続きインバウンドが好調であると語りました。関連記事:8月の訪日外客数342.8万人、中国がコロナ後初「100万人超」で1位
中国は8月までの累計で前年比46.1%増
1月から8月までの訪日中国人数は671.2万人で、前年比46.1%増となり、全市場のなかでもっとも増加率が高くなっています。その要因としては、航空便の座席数増加や円安が寄与しているという考えを述べました。また、10月に控える国慶節や中秋節の大型連休については、「例年この時期には多くの中国人の方が日本を訪れていると承知している」とした上で、今後の見通しについては明言を避けたものの、引き続き戦略的な訪日プロモーションと地方誘客を積極的に進めていきたいと語りました。
香港とシンガポールでは前年比減
香港については、「7月に日本で大災害が起きる」という噂の影響を受けて、6月と7月は前年比で30%以上減少しました。8月は前年同月比8.3%減となったことで、「かなり改善した状況である」という認識を示しました。今後について、一般的に旅行の検討から実際の訪日までは一定の時間がかかるとして、来月の状況などを見極める必要があるとしています。シンガポールについては、前年同月から17.8%減少しました。減少の要因については、昨年は8月末だったスクールホリデーが今年は9月となっていることや、ジェットスター・アジア航空の撤退による航空便の減少などが考えられるとのことです。
また、日本の猛暑がインバウンドに与える影響について問われると、「定量的な把握はできていない」としつつも、国内でも外出を控える動きがあることから、インバウンドにも多少の影響が出る可能性はあると述べました。その上で「全体としては(訪日客数が)増加しているため、大きな影響にはなっていない」との考えを示しました。
「人手不足解消が急務」2026年度の予算要求について
観光庁が公表した令和8年度(2026年度)の予算概算要求の総額は約814億円で、前年度比1.4倍に増加しました。前年度比6倍が計上された「観光地・観光産業における人材不足対策事業」について、長官は「受け皿となる宿泊産業の人手不足の解消が急務と考えている」として、インバウンド需要を着実に取り込むために、宿泊業への人材活用の高度化に向けた設備投資支援や外国人材の採用活動支援など、あらゆるフェーズの対策を総合的に実施するために必要な予算の確保を目指したいと語りました。
また前年度比6.25倍が計上された「外国人向け消費税免税制度の『リファンド方式』移行支援事業等」については、2026年秋からの実施に向けて、旅行者向けの注意喚起が不可欠であることから、必要予算を確保して日本全国の国際空港などでの周知活動が必要だと話しました。
「能登半島地震からの復興に向けた観光再生支援事業」については、令和6年度(2024年度)補正予算で措置し、令和8年度の予算でも引き続き要求することで、能登半島に対するきめ細やかな対応を続けていく考えを示しました。また、能登地域を対象とした復興応援割について問われると、復興状況の進捗や地元の意見を踏まえながら検討していきたいと述べました。
関連記事:2026年度の観光庁予算要求、814億円 「人手不足対策」や「免税関連施策」が前年比6倍
観光客によるスーツケースの放置問題について
最近、訪日客を含む観光客によるホテルや空港などへのスーツケース放置が問題となっています。スーツケースは保管場所や廃棄費用が必要になるため、利用規約などに基づいて放置しないように求めている宿泊施設も多くなっています。また、大阪観光局が実施した調査では、回答した宿泊事業者の85%が「スーツケースの放置が問題になっている」と答えたことがわかりました。
長官は「スーツケースの放置といった課題に対して、大阪観光局が賛助会員向けにアンケート調査を行ったことは承知している」と述べ、「観光庁としては、ルールを適切に理解した上で観光を楽しんでいただけるよう、地域におけるマナー啓発に必要な予算の確保に努めたい」と話しました。
「ツーリズムEXPOジャパン2025」について
世界最大級の旅の祭典「ツーリズムEXPOジャパン2025 愛知・中部北陸」が愛知県で初開催となり、9月25日より4日間開催されます。「旅は“知”の再発見」をテーマに、世界約80か国・地域から約1,000の出展が見込まれています。国内外の観光事業者によるブース出展やインバウンド商談会のほかに、愛知県を含む中部・北陸9県による共同ブースの初出展や能登半島地震からの復興応援コーナーも設けられます。
長官は、同エキスポを契機に、インバウンドとアウトバウンド双方向の交流拡大や、地方誘客のきっかけにつながる機会となることを期待していると述べました。
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