• 訪日ロシア人の回復時期は不透明
    • ハイシーズンは春季と秋季
    • 観光目的では長期滞在する訪日ロシア人が多数

インバウンドにおけるロシア市場の特徴とは

訪日ロシア人数は2019年には約12万人でしたが、2022年には約1万人でした。2022年、訪日ロシア人は一人あたり44万3,351円を訪日旅行時に使っています。2023年第1四半期に訪日したロシア人を年齢・性別ごとに見てみると、男女共に20代が大きな割合を占めています。また、訪日ロシア人のインバウンド市場で特筆すべき点は「訪日ロシア人の回復時期は不透明」「ハイシーズンは春季と秋季」「観光目的では長期滞在する訪日ロシア人が多数」の3つです。それぞれ詳しく解説していきます。

訪日ロシア人インバウンド市場、3つの特徴を解説

1. 訪日ロシア人の回復時期は不透明

2022年以来、ロシアを取り巻く国際情勢は緊張が高まった状態が続いています。インバウンドに関連するところでは、ロシアを発着・経由する航空便の有無など、渡航に関する状況も変わってきます。訪日ロシア人が今後どの程度まで回復するかについては不透明であり、そうした国際情勢の風向きに大きく左右されることは間違いないでしょう。

2. ハイシーズンは春季と秋季

コロナ前の2019年までの傾向では、訪日ロシア人の人気を集めたのは4月を中心とする春季、およびに10月を中心とする秋季でした。その間の夏季にも一定の訪問数がありますが、1~2月には大きな落ち込みがみられます。

3. 観光目的では長期滞在する訪日ロシア人が多数

2019年のデータでは、観光目的で訪日するロシア人の約80%は、7〜90日間日本に滞在しています。ロシアと日本は時差にして7時間離れているため、たまの訪日旅行を満喫するために滞在期間を長く取るロシア人が多数存在するようです。

ロシア人の特徴

ロシア人の性格・国民性

ロシア人の性格・国民性には、一般的に以下のような特徴があるといわれています。

  • 感情的・情緒的・開放的
    • ロシアといえば、北方領土の関係から、政治上日本と対立しているというイメージの影響で、比較的冷たく無口な印象を持たれやすいですが、実際のロシア人は感情的でおしゃべりな人種です。自分の感情を表現することに長けています。ただ、人間関係を構築するまでに時間がかかり、心を閉じてしまうとどうにも動かない頑固さも持ち合わせています。
  • 男性は男らしさ・女性は美しさが求められる
    • ロシアでは男性は男らしくあること、女性は美しくあることが求められます。しかし、実際には女性にはしっかり者が多く、男性にはお酒に走ってしまう傾向があるようです。
  • 怠け者が多い
    • ソ連時代は、共産主義であったため、いくら仕事をしても仕事をさぼっても給料は同じでした。そのため、ロシア人は「働く意欲が低い」とたびたび言われます。今日できることを明日に先延ばしにしてしまう、無気力でいい加減な性格と揶揄されることもあります。

<参照>

  • 草思社出版:片野優須貝典子著「こんなに違うヨーロッパ各国気質 32か国・国民性診断」

ロシア人と接するうえで気を付けておきたいマナー

ロシア人と接する場合には、以下のポイントに注意しましょう。

  • ドアを開けて先に女性を入れるなど、レディーファーストを心がける
  • 食事の際は、ナイフは右手に、フォークは左手を持つ
  • 食事の際は、食器に口を付けない
  • 食事の際は、音をたてないようにする

ロシア人の親日度・日本語学習者数

電通「ジャパンブランド調査」によると、ロシアは2019年時点で「親日度ランキング」全20か国のうち12位となっており、親日度が特別に高い訳ではないことが分かります。(*1) 国際交流基金「海外日本語教育機関調査」によると、ロシアには2015年時点で126校の日本語教育機関と480人の日本語講師が存在し、8,650人が日本語を学習しています。(*2)

<参照>

(*1)電通 チーム・クールジャパン「ジャパンブランド調査2019」 (*2)国際交流基金 2015年度 海外日本語教育機関調査

ロシア人のスマホ事情:人気の機種やSNSは?

ロシアはAndroidがiOSより人気で、約74%のシェアを持っています。ロシアの平均月収は468.21米ドルと低水準であり、多くの人は約100米ドル程度から購入できるAndroidスマートフォンを選んでいるようです。人気のSNSアプリはiOS・Android共にWhatsAppとTelegramがランクインしています。WhatsAppはアメリカ企業のSNSアプリで、Telegramはロシア製のアプリです。ロシアで人気のあるSNS「VK」や、日本・楽天株式会社がサービスを展開しているViberもそれぞれ第3位にランクインしています。

ロシアのイベント・祝日カレンダー(2022年・2023年)

2022年2023年
新年休暇1月1日(土)1月1日(日)
新年休暇1月2日(日)1月2日(月)
新年休暇1月3日(月)1月3日(火)
新年休暇1月4日(火)1月4日(水)
新年休暇1月5日(水)1月5日(木)
新年休暇1月6日(金)1月6日(土)
ロシア正教クリスマス1月7日(金)1月7日(土)
新年休暇1月8日(土)1月8日(日)
祖国防衛者の日2月23日(水)2月23日(木)
国際婦人デー3月8日(火)3月8日(水)
春と労働の祝日5月1日(日)5月1日(月)
戦勝記念日5月9日(月)5月9日(火)
ロシアの日6月12日(日)6月12日(月)
民族統一の日11月4日(金)11月4日(土)

(参照)日本政府観光局(JNTO) 訪日旅行データハンドブック 2022年より

ロシアの歴史

17世紀に大貴族と農奴制に支えられたロマノフ朝はロシア帝国の基盤を築きます。ヨーロッパを席巻したナポレオン軍を撃退したのち、侵略に十分な国力を蓄えたロシアは、19世紀は南下政策を進めます。もともと極寒の地であったロシアでは、一年中凍らない港が存在せず、ヨーロッパや中央アジア、中国方面に南下を進めることで不凍港を手に入れることが目的でした。しかし、同時期は帝国主義の時代とあって、どれもうまくはいかず。結局、帝国は弱体化してしまいました。

そのような中、起こったのが1917年のロシア革命です。ボリシェビキ主導で世界初の社会主義国家である「ロシア・ソビエト連邦社会主義共和国」が成立します。第二次世界大戦では戦勝国となり、戦後、アメリカと二大超大国として国際社会での地位を確立していきますが、世界初の社会主義国の内情は最悪に等しく、多くの人々が粛清され国民の生活レベルも落ちる一方でした。

1985年、ゴルバチョフがソ連書記長に就任するとマルタ会談にてアメリカとの冷戦が終結。西欧的な改革を進めるゴルバチョフにより、ソ連を構成していた国々は次々独立していきます。こうしてソ連は崩壊し、現在のロシアが誕生します。

ソ連崩壊後も、ロシアは大国として世界情勢に影響を与えています。日本とは北方領土等、いくつかの政治的問題を抱えています。

ロシア宗教観

ロシアでもっとも多くの信者を抱えている宗教は「ロシア正教」です。ロシア正教は正教会に属するキリスト教の教会であり、数多くある独立正教会の一つです。ロシア人のうち41%がロシア正教を信じています。

次に多いのがイスラム教徒です。ロシア人の6.5%がイスラム教を信仰しています。また、ロシア人のうち12.9%は無宗教者です。


<参照>

- Arena:Atlas of Religions and Nationalities of the Russian.