農家楽(繁体字:農家樂、簡体字:农家乐、読み方:ノンジアールー)とは、中国語でグリーンツーリズム、農家民泊のことを指します。都市から離れた自然豊かな郷村の農家を整備し、宿泊をはじめとする各種アクティビティを楽しめるようにした施設が近年続々と増えており、中国人の関心の的となっています。
中には田舎のレストランへ足を運び、地元産の野菜をふんだんに用いた農家料理を食べることを「農家楽」と言う場合もありますが、一般的には日帰りから数泊程度で農家に泊まり、食事を楽しみつつ田植え、収穫、登山、釣りなどを体験することが多く見られます。夜は麻雀、象棋、ダンス、カラオケなどが楽しめるよう、各種設備が整えられた農家楽用の宿泊施設も多く存在します。
農家楽文化の発展
中国大陸では1990年前後から、郷村で農業を営む一部の豪農が宿泊施設を整備し、都会からの行楽客を招き入れることが始まりました。後にこの形の旅行は全国に広まり、農家楽という名前が付けられました。
初期の農家楽は地域の豪農などが独自に営んでいましたが、1990年代後半になると農家楽を請け負う企業が出現し、観光商品としての農家楽を推進するために農家から土地や家屋を借り、農家楽のために造られた大規模な観光施設が出現しました。食事と宿泊は勿論のこと、釣り池、麻雀室、カラオケ室、果物狩り用の果樹園などが独自に設けられ、農家楽の魅力が高まりました。
ここ数年は、都会の人混みに気疲れした社会人や田舎での団欒を楽しみたい家族を中心に農家楽は休暇の選択肢としての存在感を高めており、諸外国においても田舎の民宿に泊まりその地の自然と料理を楽しむ中国人観光客が増えつつあります。
農家楽の今後と課題
中国大陸で「洗肺(シーフェイ、肺を洗い新鮮な空気を取り入れること)」という単語と共に普及した農家楽は、訪日中国人の旅行目的にもなりつつあります。農家楽を求め日本を訪れる中国人は、東京、名古屋、大阪などの大都市ではなく山奥の村や海辺の街を目指します。田舎に宿をとり、その地の特産品や自然環境を心ゆくまで満喫するのが彼らの旅行スタイルです。大都市が日進月歩で発展している中国大陸では、その反動から農家楽を楽しむ人々が増しており、日本においても農家楽への受け入れ体制を整えることは訪日中国人の増加に繋がるでしょう。
また、中国大陸では農家楽で提供される食の安全性や、観光を専門としない農家が宿泊施設を営む故のサービス不足などが問題視されています。日本は「おもてなし」を重視する国だということは多くの中国人に知られているため、観光業としての「農家楽」に重点を置いたサービスを提供できるように、受け入れ体制を整えることが重要です。
具体的には、外国語対応や地域における無料Wi-Fiの整備などの基本的な箇所から、高所得者向け観光商品の整備や中国の旅行サイトと連携したプロモーションなど、多くのアプローチが行えます。年々増えつつある訪日中国人に的確なサービスを提供することで、より満足度の高い日本旅行を体験してもらえば、リピーターの増加にも繋がるでしょう。