2015年のインバウンド(訪日観光客数)は前年比47.1%増の1,973万7,000人(JNTO調べ)。2020年の東京オリンピックに向け、さらなる訪日外国人の増加が予測されるなか、タクシー業界の風雲児、MKタクシーのインバウンド戦略が注目されています。ここでその概要を見ていきましょう。
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1.「おもてなし」をサービスに導入
業界でいち早く接客の大切さに着目したのがMKタクシーでした。タクシーを停めると運転手が外に出て、ドアの開け閉めまでしてくれるというのも、きめ細かなサービスとして同社を特色づけています。
創業は1960年ですが、70年代に入ると早くもさまざまな創意工夫をサービスに取り入れていきます。72年には「深夜ステーション」を設置し、急病患者や出産を目前にした妊婦へのサポートを打ち出しました。続いて、75年には大学新卒者のドライバーを募集開始、78年には救急タクシーを発足するといった具合です。
2.社内資格制度
全社員に対して、日本赤十字救急員の資格取得を義務付けているのもユニークなところです。
そのほか、「京都通」のドライバーを育成するために、社内観光資格制度も設置しているほか、「京都・観光文化検定試験」の受験も奨励しています。結果として、京都の魅力発信に貢献することで任命される「京都観光おもてなしコンシェルジュ」には、多くのMKタクシータクシードライバーが選出されています。
3.社内英語研修
同社はインバウンド対応への取り組みにおいて出色した面があります。たとえば、1985年の時点で早くも「英語タクシー」に着手をスタートし、90年には「英会話ドライバー(ESD:English speaking driver)制度」を整備します。それに伴って社内での英語研修が多く行われるようになっていったのでした。
現在では、「初級」「プレ中級」「中級」「上級」と、4つのレベルごとに各営業所で英会話研修が月2回行われていますが、その内容というのは驚くほど高レベルのものです。たとえば、50~60歳代の運転手が集まり、観光地の概要のみならず、地酒から伝統文化等をテーマに、英語でディスカッションを行うのです。
4.留学制度
「留学制度」もまたタクシー業界において斬新な試みでした。
1992年から導入された制度で、当初は年に1度、4~5人の運転手をイギリスへ語学留学に送り出すだけでしたが、近年ではそれを年3回、人数も最大40人に増やしています。留学先も広がり、初級の場合はフィリピンに2週間、中級の場合はイギリスに2カ月間、上級の場合はオーストラリアに1カ月に派遣されています。
5.ユニークな採用制度
MKタクシーは高校新卒者の採用にも踏み切っています。普通自動車免許は18歳でも取得できますが、その後、3年間はタクシー運転手に必要な二種免許を取ることができません。そのため、二種免許をとるまでは事務職で働きながら、語学や労務、おもてなし、観光について腰を据えて学んでもらうのです。
TOEICや運行管理者などの各種検定試験への参加も奨励し、トラベルコーディネーターとして養成する道も切り開いています。
<最後に>
インバウンド戦略だけでなく、グローバルな事業展開でも積極的です。今日、同社は京都を本拠地として、北海道から九州までの大都市で事業活動を行っていますが、2011年に米国ロサンゼルスに進出したのを皮切りに、その後、ソウル、上海等にも軸足を広げています。
進出先では、他の公共交通機関と連携しながら新たな「交通ネットワークの創出」に取り組み、存在感を誇示しています。
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