訪日外国人観光客が旅行しやすい環境づくりを行ううえで、欠かすことのできない通訳案内士。外国語で日本の観光地や伝統文化を解説し、訪日外国人観光客を案内する国家資格に基づいた業務なのですが、観光庁は平成21年(2009年)から「通訳案内士制度のあり方に関する検討会」を開催し、体制の見直しを図っています。
今後、通訳案内士はどのように変わっていくのでしょうか。まだ正確なことは分かりませんが、大まかな見通しを立てることは可能です。今回は、通訳案内士の今後のあり方についてご紹介します。
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訪日外国人観光客の旅行に付き添う通訳案内士とは?
通訳案内士とは、訪日外国人観光客を日本各地に案内し、伝統、文化、生活習慣などを外国語で紹介する職業。通訳者ではなく、「通訳ガイド」のように表現されます。業務内容は通訳、翻訳に留まらず、旅行スケジュールの管理、宿泊先の確認、買物のアドバイスなど極めて広く、訪問した地域の印象を大きく左右する存在であることから「民間外交官」と呼ばれることもあります。
業務を行うには国家資格が必要。外国語、日本の歴史、地理、一般常識が出題される試験に合格し、都道府県知事の登録を受けなくてはなりません。
通訳案内士をとりまく状況:昭和20年台から状況が大きく変化
「通訳案内士制度のあり方に関する検討会」がスタートしたのは平成21年(2009年)6月。「通訳案内士の制度と現状について」「通訳案内士の役割について」などをテーマに開催され、総合的な議論が進められていますが、これはどのような問題意識から実施されているのでしょうか。平成23年(2011年)3月31日 に発表された「通訳案内士制度のあり方に関する最終報告書」から紐解いてみましょう。
昭和20年台から状況が大きく変化
通訳案内士の制度の見直しなどが行われている背景には、近年進められている「観光立国」の実現という目標があります。前述した通り、訪日外国人観光客に付き添い、伝統文化の解説から買物のアドバイスまでを行う通訳案内士は、日本旅行の印象を大きく左右します。観光業を活性化させ、訪日外国人観光客の増大を目指すには極めて重要な存在なのです。
通訳案内士のように、訪日外国人をガイドする業務について定めた通訳案内業法が制定されたのは昭和24年(1949年)。当時の訪日外国人観光客は欧米の富裕層が主流でしたが、国内には多言語表記の案内板などがなく、円滑に旅行を楽しむために制度整備が行われました。旅行を楽しませるというより、他国と健全な関係を築くための日本への理解向上、訪日外国人の身体、財産の保護が目的とされていました。
しかし、時代の流れとともに状況は変化し、制度創設時点とは異なる問題が発生するようになりました。例えば、昭和20年台の訪日外国人観光客は6万人程度でしたが、平成27年(2015年)には約2000万人にまで増加。旅行者の主な国籍は欧米からアジアへとシフトしています。
現行の通訳案内士制度の問題点とは?
現在、通訳案内士における問題点とされているのは以下3点です。
1.大都市部への偏在
通訳案内士の資格保有者は全国で約2万人いるものの、75%は都市部で活動しており、地方ではサービスを受けられないのが現状です。これには、そもそも地方の仕事が少ないという理由もあると言われています。
通訳案内士は昔から稼ぐのが難しい仕事だと言われており、専業就業者は登録者の約1割しかいません。また、その4割の年収は100万円未満で、ひとりで生計を立てることが厳しいようです。
2.ガイドニーズの多様化
訪日外国人観光客のニーズの多様化に伴い、特定分野に深い知識を持った人材が求められています。たとえば、京都観光ならば日本の伝統文化に関する詳細な知識が必要とされますし、登山ならば山岳に精通していなくてはなりません。
3.悪質な無資格ガイド
通訳案内士はキックバックを受け取ってはならないと定められているのですが、これを無視した無資格のガイドも存在します。悪質な小売業者などと手を組み、効果の不明な健康食品、ぼったくり商品などを購入させることもあり、日本のイメージを著しく下げる原因になります。
まとめ:「観光立国」に向け、対応が急がれる
通訳案内士の見直しが行われている背景には、「観光立国」の推進、制度創設当時との状況の変化などがあります。訪日外国人観光客は大きく増加し、主な国籍な欧米からアジアへと変化。さらに、ニーズの多様化が起こり、特定の分野に関する専門的な知識を持つ通訳案内士が必要とされるようになりました。
通訳案内士は旅行体験を大きく左右する存在で、インバウンドビジネスには無くてはならない存在です。訪日外国人観光客数の増加に向け、制度見直しをはじめとしたさまざまな対策が行われていくと思われます。
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