合同会社Life Droneのプレスリリースによると、同社は訪日外国人観光客向けに防災備品「sonae」のレンタルサービスを開始しました。今までであれば訪日外国人観光客への防災対策は主に政府によって行われてきましたが、今回は民間企業による防災インバウンドへのアプローチ。ホテル、宿などの宿泊施設、また観光施設などの従業員にとっては朗報です。
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民間企業から防災インバウンド対策へのアプローチ:新サービス「sonae」防災備品をリュックサック1つに
Life Droneのインバウンド防災事業ページには今回の新サービス「sonae」に関しての説明がされています。
右の写真のように、レンタル防災備品には保存水、非常用食料、救急セットなど災害時に必要なものがリュックサック一つにまとまっています。すべての備品に多言語での使用説明書がついています。
sonaeは基本的に3日セットと5日セットに分けて訪日外国人観光客への提供がされています。また、備品内容においても訪日外国人観光客が選べるようになっており、「ベーシックセット」「フルセット」「プレミアムセット」に分けられて提供がされています。Life Droneは、2016年9月1日から東京都、横浜市、川崎市でsonaeのレンタルサービスを開始。その後はサービスを主要都市へ広めていくとしています。関東近郊からのサービスは、いつ起きてもおかしくないとされている首都直下型地震を想定してのことでしょう。民間企業からの防災に関するインバウンド対策という新たな試み。それでは、これまで政府ではどういった対策を行ってきたのでしょうか。
これまでの政府の災害発生時における訪日外国人観光客対応:マニュアルの配布、情報発信アプリの配信など
観光庁によるプレスリリースによると、政府はこれまでに震災時のインバウンド対策として主に3つのことを行っています。
観光・宿泊施設向け:対応マニュアルの配布
初動対応マニュアル策定ガイドライン 観光庁より
観光庁は、観光・宿泊施設向けの災害時における訪日外国人観光客の対応ガイドラインを配布しています。このガイドラインは
- 訪日外国人旅行者に関する基礎知識
- 訪日外国人旅行者に対する初動対応内容
- 平常時から取り組むべき準備
- 訪日外国人旅行者への情報提供の仕方
の4項目に関して解説してあります。活用方法に関する資料と合わせて使用します。前もって震災時における訪日外国人観光客の対応マニュアルを頭に入れておくことでスムーズな避難が実現します。
自治体向け:安全確保のための手引き
また、政府は各自治体向けの上の対応マニュアルと同様の安全確保の手引きも配布。災害時に訪日外国人旅行者に関して知っておくべき特性や過去の災害時における訪日外国人観光客の被災状況、またそれに対する具体的な対策事例などが載っています。
訪日外国人観光客向け:プッシュ型情報発信アプリ「Safety tips」の配信
訪日外国人観光客向けには「Safety tips」の配信を始めています。これは日本国内における緊急地震速報及び津波警報を英語で通知するプッシュ型情報発信アプリです。災害時における避難行動を英語で示した避難フローチャートや周りの人から情報を得るためのコミュニケーションカードなども配信。被災した訪日外国人観光客に役立つ様々な機能があります。事前に訪日外国人観光客にダウンロードをしてもらうことで、訪日外国人観光客からも防災対策に関心を払ってもらうのが目的です。
政府は観光関連施設、地域自治体、また訪日外国人観光客のそれぞれに震災時における対策を促しているいます。自治体レベルでは訪日外国人観光客に向けて「やさしい日本語」での防災対策を行っている場所もあります。
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2016年8月18日の株式会社電通によるニュースリリースによると、日本語教師養成講座ほか教育事業を行うヒューマンアカデミー株式会社および東京外国語大学の荒川洋平教授との共同で、産学連携の「やさしい日本語ツーリズム研究会」を発足すると発表しました。簡単に説明すると、「訪日外国人観光客を簡単な日本語を通じてもてなそう。」という試みの模様です。 目次既存のインバウンド対策における外国語対応への行き詰まり半数がインバウンド市場獲得を今後の優先課題とみなすも未だに拭えない外国語への抵抗感 訪日外国人...
先述の通り、今までに様々な防災に関するインバウンド対策が行われてきました。では、実際に被災された訪日外国人観光客は、これらの取り組みに対してどういった印象を持っているのでしょうか?
政府による様々な防災インバウンド対策も 熊本地震では訪日外国人観光客から不安の声が
株式会社サーベイリサーチセンターは、熊本地震直後の訪日外国人観光客に「避難中に困ったこと・改善してほしいこと」に関しての調査を行いました。
地震発生で困ったこととして「外国人向けの地震避難のマニュアルが無く行動が理解できなかった。」との回答が全体で36.5%と最も高い結果となりました。また、「言語がわからなかった。」「どのようなものを持ち出せばよいのかわからない。」などの回答も多くみられました。
また、訪日外国人観光客の災害発生時のニーズとして多く上がったのは「母国語のマニュアルを配布してほしい。」との回答。62.6%と最も高い結果となりました。既存の政府や自治体による取り組みも、現場ではなかなか効果を発揮していないことがわかり、宿泊施設、観光施設のスタッフ、自治体の防災担当者はもう一度政府によって配布されたガイドラインの確認、「Safety tips」の宣伝、また冒頭でご紹介した「sonae」のような防災備品レンタルサービスの活用を検討するべきかもしれません。
まとめ:政府の大枠の防災インバウンド対策の不足点を民間企業が補完 個々のケースにおいて対応が可能に
こういった現状を踏まえると、「sonae」のような民間企業からの防災インバウンド対策により、これまでの政府の訪日外国人観光客に対する防災対策で足りなかった部分を埋めることが可能になります。政府による訪日外国人観光客向け防災対策の確認+民間企業からの防災インバウンド対策の活用によって訪日外国人観光客にとってより安全な旅行が実現します。
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