日本国内を移動するうえで欠かせない飛行機、鉄道といった交通機関。これらの路線や所要時間、料金などはインターネット上で簡単に調べられるようになったことで、かつてよりも使いやすい存在になりました。
「紙の路線図とにらめっこしながらアレコレ考えるよりも、その作業をコンピュ-タに肩代わりしたもらった方が楽」というのは日本人はもちろんのこと、訪日外国人観光客にも共通している点でしょう。よりスムーズにできるようになることで移動時間が縮小されることで、旅行に出かける心理的な負荷が軽くなったり、足を運ぶ観光スポットが増やせたりといった効果が期待できます。ここから消費額の増加につながることも考えられるでしょう。交通機関の利便性が向上することは、インバウンド関連事業を行う事業者にとってもメリットがあるのです。
しかし、このような変化に乗り遅れている交通機関もあります。それは バス です。大手 企業のバスは、ネットでの路線検索に対応するようになっているものの、中小バス会社が運行しているものは対象外とされているケースが少なくありません 。通勤や通学で頻繁に使っているならともかく、旅行時のように多くても数回程度しか利用しないバス路線の場合は、一手間、二手間かけて調べなけれなばならないのが現状なのです。
乗り降り自由チケットで高速バス、鉄道を使いやすく! 交通機関で進められているインバウンド対策
訪日外国人観光客の旅行ルートに大きく影響する交通機関。駅や空港では多言語対応、旅行しやすいチケットの販売などが進められています。訪日外国人観光客は言うまでもなく日本のルールや言葉に不慣れなため、利用促進をはかるうえでは非常に重要な取り組みです。平成28年(2016年)7月20日、日本全国の高速バス事業者の提携による「JAPAN BUS LINES協議会」が設立され、高速バスでも積極的なインバウンド対策が行われるようになりました。鉄道や航空機とは異なり、バスには訪日外国人観光客の増加に合わせ...
平成29年(2017年)3月31日、国土交通省は「 標準的なバス情報フォーマット 」を定めたことを発表しました。これを使うことでバス事業者が経路検索サービスを手掛ける「NAVITIME」「ジョルダン」のような企業に情報提供しやすくなり、バス路線を調べるのが難しい現在の状況が改善される可能性があります。
小さな取り組みではあるものの、日本の交通機関がもっと便利になるかもしれない、今回の国土交通省の取り組みについてご紹介します。
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経路検索サービスへの対応が目立つ中小バス事業者
発表によれば、国土交通省はかねてより、バス事業者と経路検索事業者とのあいだで簡単に情報をやり取りできる手法について検討していたとのこと。その背景には、経路検索サービスが広く利用されるようになっているにもかかわらず、多くの中小バス事業者が対応できていないという理由があります。
内閣府の世論調査などによると「路線バスの経路等を調べる際の情報取得先」「バス事業者の経路検索対応状況」は以下の通りとなっています。
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路線バスの経路等を調べる際の情報取得先
- インターネット等の経路検索:41.3%
- バス停の掲示物:29.1%
- 交通事業者配布の時刻表:11.8%
- 交通事業者への問合せ:8.5%
- 交通事業者のHP:7.1%
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バス事業者の経路検索対応状況
- 30両以上の事業者:89%
- 30両未満の事業者:21%
約4割の人が、路線バスを調べる際に「インターネット等の経路検索」を使う としているにもかかわらず、 30両未満の事業者が同検索サービスに対応している割合はわずか21% 。このような対応の遅れは、利用者数の伸び悩みなどに影響するのではないでしょうか。特に日本語を読めない人が多いであろう訪日外国人観光客にとっては、非常に使いにくいはずです。
何故中小バスはインバウンド対応含め、デジタルに遅れをとったのか
中小バス事業者の多くが経路検索サービスに対応できていないのは、そもそも 時刻表などのデジタル化を行っていなかったり、利用者が少ないため、経路検索サービス側がデータ収集にそこまで注力していなかったりするため 。企業としての体力が弱く、競争に乗り遅れてしまったという見方もできるでしょう。
また、もうひとつの原因として「 データを提供する際のフォーマットが定まっておらず、その作成に手間がかかってしまう 」という点が考えられ、この解消のために用意されたのが、国土交通省の「標準的なバス情報フォーマット」。グーグル社向けのフォーマットとして開発されたのち、仕様がオープン化され、北米、欧州を中心に海外で広く利用されている「GTFS(General Transit Feed Specification)」というフォーマットとの互換性を保ちつつ、必要な項目を拡張した仕様になっています。
経路検索サービス事業者への情報提供はもちろんですが、アプリ開発者が利用できる状態にし、新たなサービスが創出される可能性も視野に入れています。「そもそもデジタル化ができていないバス事業者もあるのに、こんな制作作業ができるのだろうか」という疑問も湧きますが、この作業は自治体が担当する可能性もあるようです。
まとめ:使いやすい交通機関の実現につながる、小さいけれど大きな一歩
国土交通省が、経路検索サービスへの対応が遅れている中小バス事業者向けに「GTFS」をベースにした「標準的なバス情報フォーマット」を定めました。利用するかどうかは任意としたうえで、同省は「バス事業者をはじめとする関係者への働きかけを積極的に行ってまいります」としています。
国による政策としてはやや小規模な印象も受けますが、バス路線に関する情報がインターネットから検索できるようになると、利用へのハードルがグッと低くなるのではないでしょうか。バスの使い勝手を向上させるために必要な、小さいけれど大きな一歩なのではないでしょうか。
<参考>
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