三菱UFJリサーチ&コンサルティングは2017年における中部圏のインバウンド消費についての調査データを公表しました。2017年、中部圏を訪れた外国人数は 392万人と過去最高を更新 したと発表。しかし一方で、中部圏の述べ宿泊者数の外国人比率、観光目的で訪れる外国人比率、一人あたりインバウンド消費額、平均滞在日数などは全国平均を下回っています。詳しく見ていきましょう。
東海地方のインバウンド需要
東海地方は愛知県、静岡県、三重県、岐阜県などが所属しており、訪問率は全国7位の愛知県(9.5%)を筆頭に、静岡県(5.4%)、三重県(0.7%)、岐阜県(2.8%)となっています。ゴールデンルートと呼ばれる訪日外国人のメインの観光ルートの影響のため全体的に数値は高く、宿泊者が増えてきているエリアです。
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2017年に中部圏を訪れた外国人は最多となる392万人
2017年に中部圏を訪れた外国人は 392万人と推計され、歴代最高の数値を記録 しました。これは前年比では+8%の成長となっています。昨年は対前年比+23.3%の成長となっているので、昨年と伸びを比較すると伸び自体は鈍化していると言えます。全国的には+19.3%、関東+13.3%、関西+17.8%となっているため、中部圏の伸びは全国平均よりも低かった と言えます。
県別に見ていくと、愛知県は前年比+11.9%となる255.4万人が訪れ、岐阜県は前年比+4.4%となる71.4万人、三重県は前年比ではー3.5%となる17.3万人という結果でした。中部5県の平均は前年比+8.0%で、関東地区の前年比13.3%、関西地区の対前年比+17.8%と比較すると、伸び率は低くなっています。
<中部5県の2016年インバウンド需要データはこちら>
中部圏の述べ宿泊者数の外国人比率は全国平均を大きく下回る
述べ宿泊者数における外国人の比率を見ていくと、中部全体では2015年に対前年比で大きく成長したものの、2016年、2017年と連続で低下 しました。県別に見ていくと、中部全体で外国人宿泊者数が最も多い 岐阜県は僅かに減少、同じく外国人宿泊者数が多い 愛知県は微増。静岡県では微減 となっています。
全国平均と比較すると、静岡県を訪れる外国人の割合は低く、こうした事から中部全体の外国人比率も10%以下と、全国平均と大きな差が見られます。
中部圏を観光目的で訪れる外国人は24.5%で、全国平均27.4%を僅かに下回る
観光目的で中部圏を訪れた外国人は2017年全体で 24.5% となっており、全国平均の27.4%とほぼ同水準となりました。県別では 三重県では観光目的で訪れた外国人が前年比90%となり全国的に見ても特筆すべき数値 と言えます。
一方、愛知県の場合は17.2%と低く、関東の平均値である17.5%と同水準です。愛知県の場合は中部圏の中でも国際的な企業が多く、トヨタ、そしてその関連企業が多いことなどから、ビジネス目的で訪れる外国人が中部圏の他県よりも多いことなどが要因として考えられます。
実はインバウンド満足度95.2%の愛知県:愛知訪問者はリピーター・10万円以上消費・2日滞在などの特徴が
愛知県は訪日外国人の観光におけるゴールデンルートの1つに数えられる都市ですが、実際に訪日外国人は愛知県でどのような観光を楽しんでいるのでしょうか?中部国際空港が中部国際空港から出国する訪日外国人に実施したアンケート調査からその内容を見ていきましょう。インバウンド市場や各国の訪日外国人に関する調査やもっと詳しいインバウンドデータ知るには?「調査・リサーチ」の資料を無料でダウンロードする「インバウンドデータ」の資料を無料でダウンロードする目次観光客の属性情報他、合計1,156人からの回答が得ら...
中部圏の一人あたりインバウンド消費額は対前年比+8.6%となったが、全国平均と比較すると依然として低い
インバウンド消費額を訪日外国人数で割った「一人あたりインバウンド消費額(消費単価)」は、全国では前年比-1.3%(15.4万円)となり、2016年に引き続き減少。一方、中部圏は対前年比+8.6% となりました。しかし県別に実数を見ると愛知県が6.5万円、岐阜県が2.4万円、三重県が4万円となり、中部圏平均は6.1万円 となりました。関東地区では前年比2.0%と微増ながら、実数としては14.3万円と、関西地区の9.6万円と比較しても 金額の高さが目立ちます。
中部圏の平均滞在日数と全国の平均滞在日数には多きな隔たり
訪日外国人の平均泊数を見ていくと、中部圏、関西地域と関東地域、全国平均との間には大きな隔たりがあることがわかります。中部圏は2017年の平均泊数が7泊を超えた事は無く、関西地域は2017年に平均泊数が6泊を超えた事はありません。対して関東地域は2017年の7-9月には2015年以降最高となる12泊を記録。全国平均は同じく7月-9月に11泊を超えています。当然、宿泊日数が短ければ、消費金額も少なくなりますので、前出の中部圏の一人あたりインバウンド消費額が全国平均、関東地区と比較しても低いのは当然と言えます。
まとめ:今後中部圏で求められるインバウンドの方針は、観光目的で訪れる外国人を増やし、滞在日数を伸ばすこと
今後中部圏でも全国平均と同様のインバウンドの盛り上がりを実現するには、まず中部圏での滞在日数を伸ばしてもらうことが何よりも重要です。そのためには中部、近畿の広域観光周遊ルート「昇龍道」のさらなる認知が必要でしょうし、この中でも滞在日数が長いモデルコースの人気が高まるようにしていく努力も必要だと言えます。滞在日数が延びることで訪日外国人の消費額も上がりますし、SNSを中心として中部圏の魅力を発信するビデオ、写真が増えていくに連れ、観光目的で中部圏を訪れる外国人も増えていくでしょう。
中部、近畿の広域観光周遊ルート「昇龍道」の特徴:多彩な観光資源でリピーターなどの獲得を目指す
訪日外国人観光客による周遊旅行の拡大を目的に、テーマ、ストーリー性を持った形で観光ルートをまとめ、海外へ積極的な発信を行う「広域観光周遊ルート形成促進事業」。日本各地で、それぞれの地域の魅力を活かした個性的なモデルコースが設定されており、想定されるターゲット層、ニーズまで掲げられています。今回は、豊富な観光資源を持つ近畿、中部地方の広域観光周遊ルート「昇龍道」について見ていきましょう。 目次近畿、中部地方をまたがる「昇龍道」モデルコースDragonコース《伝承空間への誘い》Nostalgi...
また、関西地域同様に、中部圏では観光目的で訪れる外国人数は多いものの、インバウンド消費額の低さが目立ちますので、1人あたりのインバウンド消費額を引き上げるためにはどのような取り組みが必要なのか?という視点も必要でしょう。
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