今年2018年6月に発表された『骨太の方針2018』で、「働き手としての外国人の受け入れに積極的に向かう」という今後の日本の大きな方向性が示されました。これを受け、約ひと月前の7月24日に「第1回外国人材受け入れ・共生に関する関係閣僚会議」が官邸で開かれ「総合的対応策」が閣議決定されました。
外国人政策勉強会EDAS(イーダス)では、政府の「外国人材の受入れ・共生のための総合的対策」を読み解くために、数回にわたり専門家を招き、勉強会を開催します。今回のレポートは8月24日に開催された1回目の勉強会で、政府の検討方針の概要を受けた外国人材受入れに関する総論部分です。
講師は日本における公共サービス分野の多言語化コールセンター立ち上げの草分けとして活動してきたEDAS理事評議員/高橋 恵介(たかはし けいすけ)氏です。
新しい在留資格 特定技能とは
2018年6月22日都内にて「『在留資格(ビザ)』で分かる、外国人受入れの今とこれから」セミナーが開催されました。外国人政策勉強会EDAS(イーダス)が主催したこのセミナーは、特定行政書士の長岡由剛(ながおか よしたけ)氏を講師に迎え、日本の在留資格(ビザ)について学ぶために催されたものです。2018年6月5日に先立って政府が原案を示した「骨太の方針」でも、外国人材の受入拡大路線が盛り込まれました。これから日本は移民政策や外国人労働者という、今まであまり語られてこなかった課題と向き合うこと...
デービッド・アトキンソン氏「少子高齢化の日本では『移民』より『訪日観光』を促進すべき」…その理由、インバウンドのあるべき姿とは?
株式会社小西美術工藝社代表取締役、デービッド・アトキンソン氏は『新・生産性立国論』をはじめ多数の著作を持ち、グローバルな視点から日本のインバウンド業界への提言を続けています。2018年7月4日には「ヒト・モノ動きの未来塾」の勉強会に講師として登壇しました。「ヒト・モノ動きの未来塾」は運輸・観光領域の再定義、基幹産業化するために必要となる取組について、様々な企業⼈・個⼈・官庁関係者が専⾨分野を越え議論を深め交流しようと立ち上げられたものです。数値やデータの分析など、しっかりとした裏付けから導...
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今まで日本の外国人政策は「ホンネと建前の二重構造」だった
今まで日本の外国人政策の問題は「ホンネと建前」で明確に分けて論じられていたと思います。外国人受入れに関する議論は、具体的になればなるほど噛み合わない部分があった、と皆さんも承知していると思うのです。
それは例えば、このような外国人政策の事例からも明らかです。
【技能実習制度】
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ホンネ:外国人に助けてもらいたいぐらいの労働力不足が慢性化。外国人労働者なしでは工場が動かない・産業が立ち行かないところまで来ている
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建前:技能実習という形で外国人を入れる。労働者ではなく、あくまで技能実習する人達であり、日本での様々な経験をもとに本国に帰って技術移転など、帰国後に本国で頑張ってもらう
【留学生の週28時間の資格外活動】
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ホンネ:コンビニや飲食店も人材不足で困っているし、外国人留学生としても生活費・学費を稼ぎ、仕送りもしたい
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建前:あくまで留学生なのだから、週28時間という枠内なら資格外活動ということでアルバイトして良い
しかし「ホンネと建前」に大きな風穴があくような発表が7月24日の閣議決定で出てきました。今日はこれを官邸から出ている資料を見ながらご説明をします。
日本の外国人政策に「地殻変動を起こす」資料3つ
官邸から出ている資料として以下3つです。
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資料1 外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議の開催について(平成30年7月24日閣議口頭了解)
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資料2 外国人の受入れ環境の整備に関する業務の基本方針について(平成30年7月24日閣議決定)
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資料3 外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(検討の方向性)(案)(平成30年7月24日)
明治大学の山脇啓造教授(多文化共生について長く有識者会議など政府の内外で発言・影響を与えてきた)も「地殻変動が起きていますね」とおっしゃっていました。
日本が外国人政策について言っていた建前の部分が消えていって、ホンネの部分で外国人材の受入れとか環境整備とか議論できるようになった。
ようやく噛み合う議論、合理的で生産性の高い議論が出来る環境になってきたということです。
インバウンド対策で外国人雇用するときの5つの注意点・留意点 外国人雇用関連法令・制度のほか国民性などに注意
先日10月12日、北海道は札幌で訪日外国人観光客に関する変わったニュースがありました。北海道新聞によれば、札幌のホステルが、訪日外国人観光客を無料で泊まらせることを条件に、宿泊施設内で清掃などをしてもらったとのこと。しかしながら、この訪日外国人観光客は「短期滞在」の在留資格で、就労資格は無い外国人であり、また宿泊料無料の条件である宿泊施設の清掃は就労にあたるとして、このホステルの社長など3名が社長ら3名も不法就労助長罪の疑いで現行犯逮捕されることになりました。ニュースとしては事実のみの記述...
「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」
官邸からの資料タイトルには「外国人材の受入れ・共生」とあります。
「外国人との共生」といった表現が、よく政府から出てきたなぁと思います。今まで内閣府・総務省からはあっても、官邸からこういった表現が出てきたことはないので、びっくりした人もいるかも知れません。私もこのタイトルは驚きをもって捉えています。
資料3のカラー版資料をご覧いただきますと、一番上枠内、「就労を目的とする新たな在留資格を創設」とありますが、これによって今まで建前上は就労目的でないとして日本に入ってきて就労しているケースが減っていく可能性を示しています。
また「外国人材の円滑な受入れの促進に向けた取組」とともに書かれた「外国人との共生社会の実現に向けた環境整備」という表現も、今までの政府発表の文言からは大きく異なり、不思議な感覚すら覚える新しい響きです。これらの個別の取組については今後勉強会で各分野の専門家を招き取り上げます。
インバウンド対策での外国人雇用で注意したい5つのデメリット 実はメリットの裏返しが多い?課題は受け入れ体制整備にあり!
昨日10月25日、介護現場で働く外国人を大幅に増やす2法案が衆院で可決され、今国会で成立する見通しとなりました。政府は介護現場での外国人労働者の受け入れを段階的に拡大していく意向で、外国人技能実習制度を介護分野に拡大し、一定の条件を満たせば在留資格を認める方向で検討が進んでいます。このように、人材不足を補い、労働力の確保のためにも外国人雇用は国が牽引しているところですが、インバウンド業界において外国人スタッフを雇用するデメリットとはどのようなものがあるのでしょうか。 目次インバウンド対策と...
日本の外国人政策は12年前の平成18年にスタートした
外国人の受入れというのは確実に景気動向の影響を受ける分野です。日本の外国人政策は12年前の平成18年「生活者としての外国人に関する総合的対応策」としてスタートしました。
当時は南米系の外国人が多数来日し、地域の製造業を支えました。ピーク時には32万人の日系ブラジル人が日本にいました。(現在は19万人といわれる)
平成18年、つまり2006年から翌07年は日本経済も好調だったため、外国人の受入れへの注目が高まり、ある行政関係者は「多文化共生バブル」と表現したほどだったのです。
しかし2008年のリーマンショックにより、突然エンジンが止まったに近い状態となりました。また政権交代で中韓との関係が冷え込み、外国人受入れは長い冬の時代となりました。以来日本の外国人政策は、日本に定住者として残ることを選んだ日系人政策としての側面が強くなったのです。
[まとめ編①]インバウンド対策で外国人雇用する際に知っておくべきこと
インバウンド誘致するにあたって、実際に外国人スタッフを雇用することは、有効な手立ての一つです。訪日ラボでは、「中国人」「台湾人」「香港人」「韓国人」「カナダ人」「オーストラリア人」「タイ人」「イギリス人」「アメリカ人」に関して出身国別の平均年収や仕事観、国民性などに関して解説してきました。今回と次回の2回に分けて「まとめ編」と題し、これらの外国人を雇用する際に注意するべきポイントを重要な部分のみピックアップしてご紹介します。 目次中国人を外国人雇用する際に知っておくべきこと中国人の国民性中...
今回の外国人受入れと平成18年の外国人政策の違い
平成18年の最初の外国人受入れ政策への取組から、12年を経て発表された今回の政府の「外国人材の受入れ・共生のための総合的対策」ですが、今回は「景気に左右されない」領域にも外国人受入れがされます。
例えば介護領域です。不景気になったからといって高齢者の数が減ることはありません。
日本では今後、景気がどうあろうと確実に外国人がどこかの領域で社会を支えていくことになります。彼らがいないと社会がもはや成り立たないという現実と向き合い、共生していく必要があるのです。
[まとめ編②]インバウンド対策で外国人雇用する際に知っておくべきこと
最近では訪日外国人観光客をより快適におもてなしするために、外国人雇用に乗り出す店舗や観光施設が増えています。外国人雇用する際にはそれぞれの国民性や価値観などに関して理解を深めることは重要です。そこで訪日ラボでは、「中国人」「台湾人」「香港人」「韓国人」「カナダ人」「オーストラリア人」「タイ人」「イギリス人」「アメリカ人」を雇用する際に注意すべきことなどに関して解説してきました。前回の記事([まとめ編①]インバウンド対策で外国人雇用する際に知っておくべきこと)の続編として、今回は、「カナダ人...
政府の外国人政策に関する意見聴取・啓発活動が始まった!
資料3のカラー版資料に戻りますと上部大枠に「年内の取りまとめに向けて、関係者からの意見を聞きながら、取組の拡充・具体化を検討」と記されています。今まさに日本政府は「関係者=つまり我々国民」の意見を聞きながら取り組みの拡充をしていくということです。
今の日本では外国人政策について「意見を持っている人」よりも「意見を持っていない人」「どっちでもいい人」が多いように思います。
まだまだ意識がそんなに高いわけでななく、外国人を受け入れましょう・一緒に住みましょう・生活者として一緒にやっていきましょうということにエネルギーを使っている人はまだ日本に多くありません。
しかし全ての国民が「自分が当事者である」ということに気づいてもらわなくてはなりません。
まとめ:外国人政策による「人材受入と共生」はインバウンド訪日客と異なり、長期間にわたりあなたの隣人・同僚を選ぶこと。すべての国民が「自分が当事者である」ことに気づいて考えるタイミングが来ている。
外国人政策について様々なことが進み始める前に国民から広くたくさんの意見を聞き、啓発活動により考える時期、そのタイミングがまさに今です。
外国人政策のために企業が・地方自治体が・政府機関が予算をとって優秀な人材を配置して外国人政策を10年・20年・100年単位で考えていかなければならないのです。
「外国人を受け入れるかどうか」という議論はもう周回遅れで、私たちの周りにはすでに外国人がたくさんいて、私たちの生活が成り立っています。どうやったらこれから外国人と私たち日本人が仲良く暮らせるか、その議論になってくるのだと思います。
外国人政策勉強会EDAS(イーダス)ではこの秋以降、各論に分けて幅広い事例を共有して現実を知り、対応を考え行動していきたいと思っています。
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<取材協力>
EDAS理事評議員 高橋恵介氏
日本の公共分野における外国人向け多言語コールセンター・リモート通訳サービスに10年以上携わる。当初はまったく予算が無かった在留外国人に対する行政サービスの多言語化だったが、ほとんどすべての分野で電話通訳サービスを立ち上げてきた立役者。多言語リモートサービスの向上に奔走する傍ら、EDAS設立にも関わって多方面にチャネルの構築をしている。現在はランゲージワン所属。
<取材協力>
EDAS(イーダス)は、日本に居住する外国人と、それを受け入れる日本人、日本のコミュニティが相互理解の絆を深めるとともに、外国人のみなさんが、日本語でコミュニケーションできる社会の実現を目指して、さまざまな取組を行ってまいります。
<参考>
- 資料1 外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議の開催について(平成30年7月24日閣議口頭了解)
- 資料2 外国人の受入れ環境の整備に関する業務の基本方針について(平成30年7月24日閣議決定)
- 資料3 外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(検討の方向性)(案)(平成30年7月24日)
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