『ブラックボランティア』と言うのは”勘違い”であることを3つの論点から解説/実は過去のオリンピック・パラリンピックと同様の条件なのに、なぜ東京五輪は炎上するのか

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※新型コロナウイルスの感染拡大を受け、東京オリンピック(五輪)・パラリンピックは1年延期され、開会式は2021年7月23日(金)、閉会式は2021年8月8日(日)となりました。

2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックのボランティアに関しては、「やりがい搾取」といった論調で様々な批判が巻き起こっており、募集要項が発表される度に問題点が指摘されています。実際にどのような点が問題として語られているのか?大きく3つの論点について解説します。

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「大会ボランティア」「都市ボランティア」の違い

今回の東京五輪ボランティアスタッフに関しては、競技会場、選手村等の大会関係施設などで、観客サービス、競技運営サポート、メディアサポートなどをサポートする「大会ボランティア」が8万人。空港・主要駅・観光地、競技会場の最寄駅周辺およびライブサイトなどで観光・交通案内、競技会場までの観客の案内およびライブサイト運営のサポートなどをする「都市ボランティア」が3万人の、合計11万人が動員されます。

「大会ボランティア」の募集要項としては、休憩待機時間を含んで1日8時間程度働ける人で10日以上を基本とし、12月上旬まで受付、「都市ボランティア」の場合は1日5時間程度働ける人で5日以上働けることが基本で12月5日までの受付となります。

では、東京五輪ボランティア募集に関する3つの論点について見ていきましょう。

論点その①:東京オリンピックはほとんどの場合で無償、やりがいの搾取?

東京オリンピックのボランティアスタッフへの支給内容などを見ると、大会期間中のボランティアスタッフの宿泊先の手配、宿泊費のサポートなどはなく、交通費も自腹となります。

代わりに1日あたり1000円のプリペイドカードが交通費相当の金額として一律に支給されることになっており、期間中は全てのボランティアスタッフは東京2020組織委員会が手配する保険に加入することになります(保険料の個人負担はありません。)。

都内在住の場合は宿泊費の問題は発生しませんが、遠方からボランティアとして訪れる場合は、交通費に加えて大会期間中の宿泊費も持ち出しとなります。こうして見るとかなり厳しい条件のように思えます。

では、過去の大会はどうだったのかと振り返ると、2016年のリオ・オリンピックでは大会ボランティアが5万人/シティスタッフが1,700人、ボランティアとしての活動は10日以上、労働時間は8時間程度、交通費や宿泊費は自費。2012年のロンドン大会では大会ボランティアが7万人/都市ボランティアが8,000人、ボランティアとしての活動期間は14日程度、宿泊費は自費、交通費はフリーパスが支給されたという内容で、実は東京オリンピックと条件として大差はありません

責任者以外の医師、看護師などの医療スタッフに関しても基本的に組織委員会は報酬を支払わず、大学病院など医療機関などに協力を呼びかけていることも批判されていますが、これは専門性が求められる通訳に関しても報酬が発生しなかった過去大会などを振り返っても「専門性が求められるから有償であるべき」という考え方と「参加することが経験となり財産となる」という組織委員会側の考え方に隔たりがあります。

論点その②:ボランティアのターゲットがほぼ完全に学生狙いになっているのではないか?

女優の広瀬すずが出演している東京オリンピック・パラリンピックのボランティア募集の動画では、赤いドレスを着た広瀬すずの周りを真っ黒な学生服の学生が大勢駆けていく動画が話題となりました。

この動画でも明らかなように、大会組織委員会がボランティアの有力な人材として考えているのが、高校生、大学生などの学生です。ボランティアに応募できる方とされているのは、2002年4月1日以前生まれ、2020年には18歳以上である人であり、大学の中には一部、大会期間中に授業を実施せず、ボランティア参加を単位として認定するとしている大学も出ています。

単位が取得出来ない形での通常のボランティアであれば批判は少なかったかもしれませんが、学生向けに「単位」という餌をぶら下げてボランティア参加を要請するという一部の大学の姿勢に関しては、「大学の本来の目的とかけ離れている」「オリンピックボランティアで単位が出るなら、なぜ災害ボランティアには単位が出ないのか」といった指摘がされています。

なお、NHKが東京都内の国公立、私立大学119校を対象に聞いたところ、79校が大会期間中は授業や試験は実施せず、ボランティア参加を単位として認めるのは4校、検討しているという大学も55校となっています。

これに関しては

  • 1日8時間以上、10日以上を基本という働き方自体が社会人ならば有給を取得しない限り不可能であること
  • 今年の夏も酷暑が大きな話題となった東京に、シルバー層のボランティアの動員は、ボランティアスタッフの熱中症リスクが増加すること

からも大会組織委員会として避けたいという思惑が透けて見えます。

論点その③:最大の問題は合計で11万人ものボランティアスタッフを集められるのかどうか

今まで見てきたように、過去大会と比較して東京オリンピックが特別に過酷な労働条件であるとは一概には言えませんが、「大会ボランティア」8万人、「都市ボランティア」3万人の合計11万人ものボランティアスタッフを問題なく集められるのかどうかには疑問が残ります。

リオオリンピックもかなりの暑さが話題となった大会でしたが、今から2年後の東京オリンピックの暑さは、今年の酷暑を考えると想像以上に過酷なコンディションとなるでしょう。こうした暑さの中で競技時間を前にずらす、遮熱舗装に張り替えるなど以外の目立った対策がなく、暑さという意味では選手にも観客にも、そしてボランティアスタッフにとっても過酷な大会となることが予想されます。

また日本の場合、「過労死」、「残業代未払い」、「ブラック企業」などの働き方に関するマイナスの言葉やイメージが社会的に強く、東京オリンピック自体もロゴの盗用疑惑、新国立競技場の建設に関して予算を大幅に上回るなどマイナスのイメージが続いています。

そのため、こうしたブラック企業のマイナスイメージと、ボランティアスタッフの募集要項がニアイコールに見えてしまったことなどから、大きな話題とされマイナスのイメージが先行しているのです。

もちろんそれでもボランティアスタッフとして無償で経験を積みたいと考えている人は大勢いるでしょう。しかし、11万人ものボランティアスタッフを集めるとなると、こうしたマイナスイメージの払拭は喫緊の課題と言えます。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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