日本の伝統文化「お座敷遊び」で欧米豪×富裕層インバウンドを誘致せよ!京都「花街」と仁和寺「高級宿坊」の取組事例からみるインバウンド次の一手

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インバウンド市場において、買い物などのモノ消費より体験を重視するコト消費の需要が拡大しています。訪日客の興味関心は常に変化しており、現在はアジア人の爆買いだけに頼るのではなく、欧米圏の富裕層を狙ったインバウンド対策の活発化も見受けられるようになりました。

欧米豪インバウンドの富裕層に向けたインバウンド対策の例として、京都の花街と仁和寺の高級宿坊を紹介し、訪日客数4,000万人突破へ向けて今後注目されるであろうインバウンド誘客のあり方を見ていきましょう。

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インバウンド誘客で欧米豪圏も狙うべき理由

▲DBJ・JTBFアジア・欧米豪訪日外国旅行者の意向調査(2018年度版)より
▲DBJ・JTBFアジア・欧米豪訪日外国旅行者の意向調査(2018年度版)より

DBJ・JTBFアジア・欧米豪訪日外国旅行者の意向調査(2018年度版)を参照すると、インバウンド誘客においてもはやアジア圏ばかりをターゲットにしているだけでは危険ということが伺えました。今後のインバウンド対策では、欧米豪の誘致にも力を入れていくべき理由を、調査結果をもとに見ていきましょう。

アジアからの訪日旅行希望者の割合が、2012年の調査開始以来初めてわずかに低下しているからです。訪日客の内訳でアジア圏は85%を占めている一方で、訪日旅行意欲が成熟化してきているとの見方ができます。自然災害による訪日旅行への意欲低下も見受けられます。「当面海外旅行先の候補から外している国・地域」ランキングでは「自然災害への懸念」といった理由で、アジア全体の中で日本がトップとなりました。

特に2018年は、西日本豪雨や台風21号、北海道胆振東部自身など夏に相次いだ自然災害が影響していると言えます。2012年の調査開始以来初めて、訪日旅行の不安材料として「地震」が「言葉」を上回りました。風評被害の長期化が懸念される中で、インバウンド誘客のターゲットはアジアだけでなく欧米豪にも視野を広げるべきだと言えるでしょう。

訪日欧米人観光客の誘致に取り組む上で、富裕層をターゲットとした取り組みに注目が集まっています。次項では、京都の花街と仁和寺の高級宿坊のインバウンド誘客の事例を見ていきましょう。

京都の花街のインバウンド誘客の現状

▲夜の京都の祇園の街並み
▲夜の京都の祇園の街並み

京都の花街には「一見さんお断り」の伝統が残っており、訪れるには「ごひいき」と呼ばれる常連と一緒に行き、信用されて初めて通えるようになる仕組みです。しかし高齢化が進む国内のごひいきだけでは、今後京都の芸妓や舞妓を支えるのは困難になりつつあるのも事実です。

将来的に存続の危機になりうるといった現状を受け、訪日外国人観光客が新たに迎え入れられるようになり、とりわけ富裕層の訪日欧米人観光客の間で人気を集めています。

「エクスクルーシブ京都」では、訪日客向けにお茶屋さんでお座敷遊びを楽しむサービスを提供しており、個人旅行者はもちろん取引先の海外企業の接待での利用もあるとのことです。通訳付きで最大3時間、至れり尽くせりのおもてなしを堪能できます。

場所や料金は外部には非公開ですが、芸妓や舞妓の派遣代やガイド代、食事代などは、日本人客と同等以上とのことです。代表の澤田氏は自身の花街での人脈を生かし「多くの人により深い京都を体験してもらいたい」といった想いで運営しています。

訪日欧米人観光客へのマーケティング事業を行う「エスフレイジ」は、「Enchanted Time with Maiko」というお座敷遊びサービスを2017年春より手がけています。京都の風情ある料亭でコース料理を堪能しながら、舞妓さんとお座敷体験が楽しめるアクティビティです。演舞鑑賞やお座敷遊び、舞妓さんとの歓談や写真撮影など充実した内容となっています。

約1時間で料金は1人1万9000円とのことで、これまでに2,500人が体験しました。当初は週1回の実施でしたが、口コミサイトで話題になって以降、週4回に増やしたとのことで、訪日客の花街への注目の高まりが伺えます。

エスフレイジの訪日ラボ連載コラムはこちらから

株式会社S

2016年に京都で設立。2017年より、訪日観光客向け舞妓お座敷体験Tour「Enchanted Time with Maiko」を新規事業として立ち上げました。Tourへの集客から、現場の運営まで全て自社で実施しております。それを基にEnchanted Time with Maiko運営から得た事例・ノウハウ等を惜しみなく発信していきます。 ページ1

仁和寺の高級宿坊のインバウンド誘客の現状

▲訪日客も多く訪れる仁和寺の五重塔
▲訪日客も多く訪れる仁和寺の五重塔

京都市に位置する世界遺産の仁和寺が、境内の旧家屋「松林庵」を改築し、高級宿坊としての運営を開始しました。料金は1白100万円とのことで、訪日客の富裕層をターゲットにしています。創建から1100年を経た今、仁和寺の新たなビジネスへの挑戦に注目が集まっています。

2012年の拝観者数は約34万人でしたが、2017年には約25万人と3割減少しました。観光客に人気の「観音堂」の解体工事の影響もあったとのことですが、長年守り続けてきた仁和寺の建築物などを含む文化を100〜200年先に伝えるためとして、宿泊事業への着手に至りました。

木造2階建ての松林庵は、国宝の金堂や重要文化財の五重塔からは少し離れたところにあります。ここ数年は空き家だった松林庵を活用すべく、住友林業グループと組み、総工費約1億5700万円をかけて、家屋の耐震補強や内部の改修、庭園の整備を実施しました。2018年5月より宿泊客の受け入れを開始しています。

宿泊できるのは1日1組のみで、歴代の住職が執務室として使用する「御殿」も1晩貸し切ることができます。食事は含まれていませんが、宿泊者が希望すれば、雅楽鑑賞や生花といった日本文化体験も楽しめるとのことです。

健全経営には年間約30万人の拝観者が必要なため、高級宿坊の運営という新たな取り組みで知名度を高め富裕層の訪日客誘致を目指し、財政の健全化を図るとしています。

まとめ:富裕層の訪日欧米人観光客の誘致が活発化する見込み

アジアにおける訪日意欲の成熟化や自然災害による風評被害の長期化の懸念から、欧米豪へのインバウンド誘客が重要になってくると言えるでしょう。中でも1回の訪日旅行での消費額が大きい富裕層をターゲットとしたインバウンド誘客の例として、京都の花街と仁和寺の高級宿坊を取り上げました。インバウンドの消費額拡大が期待される中で、今後も富裕層向けのインバウンド誘客の活発化に注目が集まります。


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<参考>

朝日新聞デジタル:花街のごひいきはインバウンド 1泊100万円の宿坊も

NIKKEI STYLE:1泊100万円の高級宿坊 仁和寺が外国人富裕層向け

DBJ日本政策投資銀行・日本交通公社:DBJ・JTBFアジア・欧米豪訪日外国人旅行者の意向調査( 2018年度版)

EXCLUSIVE KYOTO:公式ウェブサイト

S-fleage:公式ウェブサイト

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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