2019年1月1日より、中国から日本へ渡航する際のビザ申請手続きの一部が緩和されました。
この記事では、緩和の詳細とそれにより中国から日本への旅行者にどのような変化があるのかを解説します。
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中国人観光客への日本ビザ緩和|変更点とは?
中国国籍の旅客が日本に入国する場合、ビザの発行を受けなければなりません。
最近では2015年の1月、2016年10月、2017年5月、そして今回の2019年1月1日とほぼ毎年要件の緩和が行われてきました。
観光ビザについては、基本的には
- 高所得者
- 沖縄や東北といった目的地を限定
- 学歴
- その他
といった条件に基づき、発給要件を緩和する政策をとってきています。
こういった緩和の狙いは、単に中国人観光客の数の上での増加だけにはありません。
条件緩和の変遷を見て見れば、日本のどの地域にどういった人物に来てほしいかということが見えてくるでしょう。
中国人個人旅行客の呼び込み
中国人観光客は「個人観光」「団体観光」に分かれます。いずれの場合もビザの発給を受けなければなりません。
個人観光でビザの発給を申請する場合には、一次ビザの場合も数次ビザの場合も、一度目の旅行の場合には旅行会社に依頼をしてビザの発給手続きを受けることが必要となっています。
また一回目の訪日の際の旅行日程の管理及び宿泊先の手配は旅行会社が行う必要があります。
※中国人に対する団体観光ビザの全土解禁は2005年、個人観光ビザは2010年に解禁
個人観光の場合は個人の経済力の証明が必要なため、申請のハードルが上がります。
またビザの申請において、外務省の規定にはありませんが、旅行会社に対し補償金を納める必要があるそうです。団体旅行の場合は添乗員が同行します。
ビザ発給要件には様々な条件が存在しますが、全体として個人観光客を呼び込もうという意図が見て取れます。
東北への中国人観光客の呼び込み
2012年6月から東北三県を一泊目とする旅行者に対する数次ビザの発給が行われてきました。
この際には納税や預貯金の証明書の提出や、訪日歴のある人物の家族には同行が必要とされていました。
2015年にはこの要件が緩和され、沖縄・東北三県(岩手、宮城、福島)のいずれかに一泊以上する場合には、訪日歴のある人物の家族のみで渡航できることになりました。また要求される経済力も以前より厳しくなくなったと言われています。
滞在可能な日数については、それまでは訪日渡航歴のある旅行客とその家族のどちらにも90日間有効な短期滞在のビザが発給され、3年間有効のものでした。2015年には有効期間の変更はなく、30日に減少し、現在も同様の条件となっています。
2017年には最初の一泊目の宿泊先の要件について東北全域に拡大し、訪日歴の要件自体が廃止されました。こういった点に「東北に中国人を呼び込みたい」という政府の強い意向が感じ取れます。
ビザ緩和で沖縄への中国人観光客誘致も
東北同様、数次ビザ取得が可能となるのが「沖縄」への一泊目の滞在です。沖縄で一泊目を滞在することでその後数年間有効となる数次ビザを発給する政策は、東北よりも早く2011年から採用されていました。
施策から2年後、2013年7月~2014年6月の沖縄県の都道府県別出身地別外国人延べ宿泊者数構成比において、中国は13%で、台湾(31%)、韓国(20%)、香港(19%)に次ぐ四番手でした。
2017年1月~12月の確定値での都道府県別、国籍(出身地)別外国人延べ宿泊者数構成比では、中国は22%まで増加し、香港(12%)と逆転し、韓国(28%)、台湾(24%)に次ぐ第三位となっています。
東北でも沖縄同様、宿泊者数は順調に増えています。2011年の都道府県別、国籍別外国人述べ宿泊者数構成比において、宮城県以外四番手、五番手であった中国人観光客ですが、2017年一年間の同構成比において、東北六県のいずれにおいても二位または三位となっています。
またビザの発行手数料は数百元であり、経済力の証明は個々のケースによるため、一律の基準は設けられていません。
学生の呼び込み
2016年には学歴による申請手続きの簡素化が行われました。これまでも、対象校に所属する学生、卒業生(3年以内)に対し「団体観光」の形式ではない個人観光一次ビザの発給が行われてきました。
今回の要件緩和では「一定の経済力を有する者とその家族」及び「中国国内大学であり,中国教育部が公表するリストに掲載されている普通科本科を有する全大学に在籍する学部生,研究生(博士・修士在籍者)又は同校卒業後3年以内の卒業生」に対する同様のビザ発給が可能となりました。
今回の要件緩和で、対象校は75校から1,243校と大幅に拡大され、中国語の報道でもこの点を評価するものが多く見られました。
複数回有効な数次ビザではありませんが、目的地が限定されないことが特徴です。
報道のトーンからは、この緩和により日本を旅行できる層がかなりのボリュームであること、そして彼らが日本に関心の高い層であることがうかがえます。
この条件に合致する対象者は2500万~3000万人ともいわれています。
数次ビザの発給対象者の拡大
今回の緩和では、リピーターに対して、経済力の証明を免除することとなりました。繰り返し訪れてもらうことを狙いとしていることがわかります。
旅行プランの傾向は? 花見、そして定番の「アニメ」「ラーメン」「聖地」
報道では喜びの声が見られる一方、大手旅行サイトではこの緩和を主眼において日本旅行を取り立てて特集するような動きはありません。
桜の季節を前に花見プランが多く掲載されています。
秋葉原でのアニメグッズ購入や、一蘭ラーメン・ウナギ・すき焼きの今半での食事、アニメ「スラムダンク」の聖地のある鎌倉をルートに組み込んだ自由旅行がおすすめとして掲載されるなど、これまでも伝えられてきたような「定番」の日本旅行に対する需要も、変わらずあるようです。
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訪日外国人観光客のインバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを毎日配信!
個人旅行ビザの取得が可能とはいえ、一回目の訪日の際の旅行日程の管理及び宿泊先の手配は旅行会社が行うというルールがあるため、こういったプランに対する需要は今後も非常に高いものとなるでしょう。
また「深夜食堂」の文字を入れプランに組み込まれた食事をアピールするものも見られ、中国における日本のドラマ作品の存在感を感じさせます。
まとめ:学生、卒業後3年目までの青少年の増加に対応する取り組みを
今回のビザ要件緩和により、これまで以上に中国人観光客が増加する可能性が見えてきました。
特に青少年の交流は文化の相互理解において重要な地位を占めるとも言われ、こういった年代の旅行者が増加していく可能性は高いでしょう。
彼らが満足するような旅行体験の提供ができるかどうかが、今後の中国人観光客の増加を左右するのかもしれません。
一度目の訪日にあたっては旅行会社を通じた旅行プランの設定が必須であり、旅行関連の口コミやウェブサービスが今後も一定の影響力を持ってくると考えられます。
訪日中国人向けのインバウンド関連の事業に取り組む際には、こういったサイトから現在の流行や次の流行を読み解くことも有益でしょう。
<参考>
- https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/24/6/0612_01.html
- http://www.mlit.go.jp/common/001080017.pdf
- http://www.mlit.go.jp/common/001247514.pdf
- http://www.mlit.go.jp/common/000220592.pdf
- https://baijiahao.baidu.com/s?id=1621147960343012369&wfr=spider&for=pc
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