2008年のエコツーリズム法施行により、全国で新たな観光資源の創出に向けた取り組みの一環として、エコツーリズムを実施しています。エコツーリズムとは自然環境と、文化・歴史等を観光の対象としながら、環境の保全性と持続可能性を考慮する観光のことです。
近年ではインバウンド誘客の1つの手段として、エコツーリズムを取り入れるケースも増加しました。
今回は、中でもエコツーリズムの成功例と言われている、北海道釧路市・青森県奥入瀬・兵庫県豊岡市の3つの地域における取り組みを見ていきましょう。
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1. 北海道釧路市:ハブ型観光の導入で欧米豪の富裕層を誘致
北海道東部に位置する釧路は、ラフティングやキャニオニングの聖地として、国内外で人気の観光地となっています。
平成28年1月には「観光立国ショーケース」として、石川県金沢市や長崎県長崎市とともに観光庁から認定を受け、訪日外国人観光客の地方誘客のモデルケースを形成すべく、さまざまな計画が実施されました。
釧路湿原と阿寒の2つの国立公園や、特別天然記念物のタンチョウ、阿寒湖のマリモの保護などから、世界トップクラスの自然を感じられる観光地の実現に向け取り組んでいます。
現在は、釧路湿原の写真を撮って終わりではなく、カヤックで釧路川を下るアクティビティなども、あわせて楽しめるようなコース設定が特徴です。釧路は平均温度が21度の避暑地として、夏は「釧路10日間」といった商品も発売されています。
釧路を拠点に、日帰りで納沙布岬や野付半島を訪れるなど、長期滞在も飽きさせないハブ型観光の導入に成功しました。
訪日旅行の滞在日数が長い傾向にある欧米豪をターゲットにしており、とりわけ富裕層への誘致拡大が今後の目標です。ゆったりとした滞在型観光を好み、リピーターになりやすい傾向や消費行動が活発な点から、欧米豪の富裕層誘致でさらなる地方活性化を目指します。
2. 青森県奥入瀬:新たな魅力「コケ」の聖地として全国のモデルケースに
青森県の奥入瀬は、これまで夏はハイキング、秋は紅葉の名所などが人気を博していましたが、徐々に注目度が落ちていることに課題を感じていました。
もう一度多くの観光客を誘致するべく2012年に開始されたのが、コケ(苔)を地域の魅力として打ち出す「モスプロジェクト」です。
奥入瀬の有志を中心に、コケなどの専門家を招いた勉強会を繰り返し開催したほか、コケで有名な場所へ何度も足を運び、コケガールミーティングも開催しました。
2013年には「日本の貴重なコケの森」に認定され、2014年には日本自然保護大賞で入選を果たしています。2018年7月には、外国人を含むアウトドアガイドを招いた現地視察も実施し、コケをキーワードにした奥入瀬観光の魅力を発信しました。
コケをテーマにした観光は、プロのガイドのもとコケをじっくり観察しながら散策し、苔玉作りや瓢箪ランプの展示を見学すると、観光は長時間に渡ることから宿泊が発生するため、宿泊型観光の増加が期待できるでしょう。
コケは全国各地に存在することから、奥入瀬の成功例を参考にできるのもメリットの1つです。
アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズ氏が苔寺に愛着を持っていたこともあり、訪日欧米人観光客から今後さらなる注目を集めることが期待されます。地域ならではの資源に着目し、観光資源としての磨きをかけるために徹底的に追求した末に、観光地としての再生を果たした例として、他地域での応用も効果的でしょう。
3. 兵庫県豊岡市:経済効果は10億円!コウノトリの街としてインバウンド向けにPR
兵庫県豊岡市は観光地としての認知度が低いといった課題がありましたが、近年ではコウノトリの街として知られるようになりました。
4年で30倍もの訪日外国人観光客が訪れるようになった城崎温泉との組み合わせで、欧米人観光客の誘致に力を入れています。
実は、ドイツの国鳥がコウノトリの一種・シュバシコウであり、フランスのストラスブールもコウノトリの街として有名です。ドイツ人やフランス人にとって馴染み深いコウノトリをキーワードとし、観光地としての認知拡大に励んでいます。
江戸時代には多かったコウノトリも、農薬散布の影響で餌が不足し一時絶滅しました。最後にコウノトリが生息していた豊岡市で、コウノトリの復活のため農薬散布をやめた結果、徐々にコウノトリの数も増えてきただけでなく、コウノトリ米というブランド米を生み出すこととなりました。
新たなブランド米で観光客の誘致に成功したことと、日経新聞への掲載による経済効果は年間10億円とも言われており、徳島県鳴門市・千葉県野田市などでも、豊岡市の例が参考にされています。
近隣の人気観光地との周遊ルートをPRすると同時に、ターゲットの欧米人が親しみ深いコウノトリをキーワードにした取り組みとして、今後はさらなるインバウンド誘客が期待できるでしょう。
エコツーリズムで地域ならではの魅力をインバウンド向けにPR
エコツーリズムの成功例として、北海道釧路市、青森県奥入瀬、兵庫県豊岡市の3つの例を紹介しました。全てに共通するのが、その土地ならではの資源を「観光資源」として磨きをかけ発信することで、国内外からの観光客の注目を集めているという点です。
新たな観光資源の創出によるインバウンド客の誘致は、どの地域でも応用できる手法と言えるでしょう。今後も「観光立国ショーケース」の取り組みも含め、エコツーリズムによる訪日外国人観光客の地方誘客ならびに地方経済の活発化が期待されます。
<参考>
・JTB INBOUND SOLUTION:エコツーリズムによる新たな観光資源の創出
・観光庁:観光立国ショーケース実施計画(釧路市)
・Web東奥:外国人ガイドら奥入瀬渓流などを現地視察
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訪日外国人観光客の数が急増する中、飲食店の現場では「インバウンド対応をしたいけれど、具体的に何をすればいいのかわからない」という声が数多く聞かれます。
そんな方にお届けしたいのが、中国人観光客にとって日本での飲食店探しに欠かせない存在となっている、中国最大級の生活情報プラットフォーム「大衆点評(たいしゅうてんぴょう)」の対策です。ユーザーの口コミや写真、メニュー情報の整備次第で、来店数に大きな差が生まれることも珍しくありません。
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訪日ラボ主催「THE INBOUND DAY 2025」アーカイブ配信中!
訪日ラボを運営する株式会社movが8月5日に開催した、日本最大級のインバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」のアーカイブ動画が公開中です。
アーカイブ配信では、元大阪府知事の橋下 徹氏と大阪観光局理事長の溝畑 宏氏による基調講演のほか、脳科学者の茂木 健一郎氏、日本文学研究者のロバート・キャンベル氏、アパグループ 社長兼CEOの元谷 一志氏などの貴重な講演の様子を一挙公開(一部を除く)。
参加できなかった方はもちろん、もう一度議論を見直したい方も、ぜひご覧ください。
【インバウンド情報まとめ 2025年9月前編】PayPayが中国「WeChat Pay」と連携 / 観光庁予算要求814億円、人手不足対策などの予算増 ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。
この記事では、主に9月前半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
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→PayPayが中国「WeChat Pay」と連携 / 観光庁予算要求814億円、人手不足対策などの予算増 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年9月前編】
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