年々上昇している訪日スペイン人の数は、観光庁訪日外国人消費動向によると、初訪日の割合は72.6%にも及び、1人あたりのインバウンド消費額は224,072円と平均の153,000円を大幅に上回っています。
日本を訪れるスペイン人の主な情報源は「ブログ」です。これは訪日スペイン人市場の集客にはインターネットを使った施策が有効であることを示唆したデータですが、ブログ以外にはどのようなインターネットサービスが利用されているのでしょうか。
今回は、スペインのインターネット普及率やアクティブな利用者の多いSNS、今後のインバウンド対策にどのように役立てる方法があるかについてまとめます。
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スペインのインターネット事情・利用状況
まずはじめにスペインのインターネット事情や利用状況がどのようになっているのか、見ていきます。
スペイン人の93%がインターネットを利用
上記の「Digital 2019」によると、スペインのインターネット利用率は93%、約4,296万人が利用しています。
アクティブにソーシャルメディアを利用している人数は2,800万人で、60%の利用率です。
先進17か国におけるSNSユーザーは60%程度であり、スペインは平均的な数字だと言えます。世界的にはインターネットの利用率は上昇傾向にあるのに対して、ソーシャルメディアの利用率はやや減少の傾向があります。
こうした中、スペインの SNSユーザーは 2018年〜2019年の1年間で4.3%上昇しており、今後インバウンド集客のツールとして大いに期待ができそうです。
日本との比較
ここでスペインと日本のインターネット利用状況を比較してみます。
日本のインターネット普及率は94%で、アクティブなソーシャルメディアのユーザーも60%であり、スペインとはほぼ同じ数字です。
訪日スペイン人を対象にしたプロモーションについて企画したり、プランを検討する際は、ユーザーの周囲の人々のインターネット利用状況について、日本と同じ環境を仮定しても良いかもしれません。
スペインで人気のSNS
日本では今やFacebookやInstagramといったSNSの使用が一般化していますが、スペインでメジャーなSNSやメッセンジャーツールというと、日本とは少し様子が異なります。
スペインのインターネットユーザーにおけるアクティブな利用者の多いSNSサービスやメッセンジャーツールについて見ていきましょう。
1. YouTube
スペインのインターネットユーザーにおいて、最もアクティブに利用されているのは動画共有サイトのYouTubeです
2. Facebook
スペインのインターネットユーザーにおけるFacebook利用者は82%です。Digital 2019の資料によれば2,400万人のアクティブユーザーがいます。
スペインでは企業も積極的にFacebookを活用しています。Facebookに求人の機能が追加され、失業率の高いスペインにおいて普及を後押ししたとみられています。
ちなみにメッセージングアプリではWhatsAppのアクティブな利用が87%、Facebookのアカウントで利用できるFB Messengerはたったの43%です。Facebookは連絡手段ではなく、情報収集が主要な利用目的であるようです。
3. Instagram
スペインのインターネットユーザーのうち54%がアクティブに利用されているのがInstagramです。
昨年から今年にかけては、ECの機能や動画配信など機能の追加も行われています。Instagramを利用してスペイン人向けのマーケティングを行う際は、一般投稿のハッシュタグの利用に加えて、こうした新しい機能に関するスペイン人ユーザーに利用動向なども把握すると良いでしょう。
スペインで最も情報収集に用いられているSNS:Facebookを利用したマーケティング事例
スペインのインターネットユーザーにおいて最も利用率の高いSNSの一つ
1. 澤の屋旅館
東京上野にある澤の屋旅館は、部屋の数はわずか12室、家族で経営を行っている小さな旅館です。
訪日外国人の受け入れに観光庁が本腰を入れ始めた「Visit Japan Year」が実施される2010年以前から、客室稼働率は90%以上、そして宿泊客の90%が外国人という驚異的な実績を上げています。
公式Facebookページは毎日英語で更新されています。気温や天気といった基本情報だけのコンテンツ、宿泊客からプレゼントされた品のアップ、獅子舞が踊る動画まで、投稿はバラエティーに富んでいます。
澤の屋旅館はトリップアドバイザーでも、台東区のホテル182件中2位の評価を受け、利用客のレビューからは旅館の物理的な使いやすさだけでなく、接客サービスの良さを評価する声を数多く見ることができます。
ホームページは非常にシンプルな作りですが、Facebook、Instagram、TwitterなどのSNSリンクが貼られています。また同様にトリップアドバイザーのレビューにもアクセスすることができます。シンプルだからこそ逆に外国人ユーザーも迷わないのかもしれません。宿泊者による高い評価の口コミが、新しい宿泊客を呼ぶ好循環を生んでいます。
2. お宿 山久
岐阜県高山市はインバウンド市場で人気の観光地であり、スペイン人も多く訪れています。宿泊施設のうち、高い評価を受けているのが「お宿 山久」です。
岐阜県高山市は1986年に国際観光都市宣言を行い、いち早く多言語化やインバウンド対策に取り組んできました。
訪日人数の17.52%に当たる16,084人ものスペイン人が高山市を目当てに訪れています。人気の秘密は、山岳地帯に残る江戸時代から続く街並みや、飛騨文化を存分に堪能できることと言われています。
白川郷に訪れるための通過点であることも人気の理由と考えられます。スペイン含む海外でも上映され人気を博した映画「君の名は。」の聖地巡礼の地としても有名です。
スペイン人が閲覧する観光メディア「ジャポニズム」でも特集を組まれたことがあります。
山久はFacebookページの運用を通じ、この人気観光地で集客に差別化をはかっています。
滞在中の雰囲気を、今まさに山久で見られる光景をアップすることで伝えています。宿泊客の写真や浴衣姿も含まれ、見る人に滞在中の自分自身をイメージさせるような内容です。
投稿の写真からは、インバウンド客は英語圏だけではなく、アジア、ヨーロッパ各国から訪れていることがわかります。こうした多言語な環境でのコミュニケーションを円滑にすすめるため、ポケトーク(通訳機)を使用していることも、Facebookの投稿からうかがえます。
近隣のお祭り情報や、日本アルプスの雄大な景色も度々SNSでアップされています。宿泊施設の快適さだけでなく、周辺で可能な観光体験が把握できます。
また、SNSの投稿についたインバウンド客のコメントに対しても間をあけず返事を書き込んでおり、こうしたやりとりもインバウンド客の来店動機を強めていると考えられます。
Facebookを利用してスペインに向けた効果的なマーケティングを
スペイン人のソーシャルメディアの利用ではFacebookが圧倒的に多くなっていることがわかりました。アクティブに利用されてるSNSは日本とあまり変わりませんが、メッセンジャーツールでははFB MessengerよりもWhatsAppの方が好まれているとの結果が出ています。Facebookではメッセージを交わす個人的なつながりより、もっと薄く広い交友関係とリンクしたツールである可能性もあります。
インターネットユーザーのうち80%以上にアクティブに利用されているFacebookは、スペイン人にとって重要な情報収集の一つと考えられます。マーケティングに活用する際は、成功事例に見られたような、高い更新頻度や、相手の求めている情報の提供に努めることが大切です。
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