インバウンドの定番観光ルート「ゴールデンルート」に含まれる大阪は、中心部のみならず穴場感がある下町にも、近年は多くの訪日外国人が足を運んでいます。
インバウンドによる地域経済の活性化は喜ばしいことである一方で、急速な観光地化によるトラブルも発生しています。
今回は、大阪市北区中崎地区のインバウンド事例に触れ、日本における観光公害の現状について見ていきましょう。
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インバウンド人気の高い大阪梅田からすぐ「中崎地区」
訪日外国人観光客の4割が訪れる大阪では、大阪観光局主導で無料のWi-Fiの充実、多言語への対応、観光スポットの再整備、ナイトライフプランの充実といったインバウンド対策が実施されたこともあり、インバウンド客数の伸び率の高さが顕著です。
中でも梅田は大阪滞在の拠点として便利で、関西のあらゆる観光名所に気軽にアクセスできるだけでなく、ナイトライフも楽しめる人気の観光スポットになります。
こうした人気地域である梅田から徒歩10分と好アクセスに位置する中崎地区は、昔ながらの民家や長屋が立ち並び、昭和レトロな雰囲気が漂う路地裏が残っています。この風景が訪日外国人の心をつかんでいます。
2000年代に入ってからは空き家を改装しおしゃれなカフェや雑貨屋が開業しています。梅田から近いのに大手不動産会社の開発の色を感じさせない、そんな穴場感が訪日外国人の注目を集めているようです。
大阪・梅田に外国人観光客が殺到するワケ
訪日観光客が今こぞって訪れているのが大阪です。観光庁が昨年発表した2018年4月から6月にかけての「訪日外国人消費動向調査」によると、インバウンド観光客が一番多く訪問しているのは東京でもなく京都でもなく大阪でした(訪問率ベースで大阪府41.8%、東京都41.6%、千葉県34.1%の順でTOP3)。訪日観光客の実に4割が大阪を訪れると言うのですからその人気は明らかです。そこで気になるのが外国人観光客たちは一体大阪で何をしているのか?大阪のどこに魅力を感じているのか?と言うことです。中でも大阪...
インバウンド客のマナー喚起が追いつかず対応に追われる地元住民
インバウンド客の増加に伴い、中崎地区では住民の生活に支障が出るようなトラブルも発生しているのが現状です。
民家の玄関前で三脚を使用し写真撮影をしている訪日客に対し、道が狭いため注意をしても言葉が通じないことから無視をされるケースや、日本らしい住宅や店舗内の無断撮影、ランドセル姿が珍しいのか小学生を撮影しようとするケースも見受けられます。
中崎地区では写真を撮らないよう注意書きを英語・中国語・韓国語で作成し注意喚起をしていますが、ゴミが散乱したり公園で大声で騒ぐ訪日外国人がいたりといったトラブルも同時に発生しています。ゴミの回収も追いつかないのでゴミ箱の撤去に踏み切っており、マナー違反に起因するさまざまな問題への対処に追われるようになりました。
インバウンドの観光公害、行政にできることは?
マナー違反を取り締まることで生活環境を守ることも大事ですが、訪日外国人が不便を感じ客足が減っては困るのも事実です。中崎地区でも、訪日外国人の増加により地元経済の活性化が起きています。
インバウンド対策を進める大阪観光局は、これまで訪日外国人に対し、困ったことはないかといった調査を行っているものの、受け入れる側である地元住民に対する調査はしてこなかったといいます。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックをはじめ、2025年には大阪・関西万博の開催も控えおり、訪日外国人の数はますます増加すると考えられます。梅田や難波といった繁華街のみならず、中崎地区のような下町に対する注目も高まっていくでしょう。
訪日外国人の消費拡大や満足度の向上は確かに日本の観光立国を実現するために必要です。同時に、地元住民に対するフォローも行政の大切な役割となってくるでしょう。訪日外国人誘客が地域にどのような利益をもたらすのかを、観光される地域の住民に対し、理解してもらう必要があります。
ただやみくもに理解を求めるのではなく、観光公害と呼ばれる現象がなぜ引き起こされてしまうのか、それを解決する手段はあるのか、あるならばいつその手段を講じるのか、または住民側にも改めるべき考え方があるのかといった多層的なアプローチが有効となるはずです。
急増した訪日外国人に起因するストレスの緩和や解消を補助し、地域が一丸となってインバウンドの受け入れ体制強化に取り組めるような関係性作りが期待されています。
まとめ:インバウンド誘客促進は地域住民との連携がカギ
大阪の中崎地区の観光公害の例を通して、行政による地域住民に対するフォローや連携が重要であることが改めて明らかになりました。今後は主要観光地のみならず、周辺の下町のような訪日外国人の誘客が進んでいなかった地域でも、客足が急増していく可能性があります。
地域住民のストレスを緩和しながら、連携して受け入れ体制を整えていくことで、より効果的なインバウンド対策を講じることができるでしょう。
<参照>
・産経新聞:大阪の下町が悲鳴 インバウンド急増が生む観光公害
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