2019年9月、アメリカ・西ハリウッドに本国初のカンナビスレストランがオープンします。カンナビスとは大麻のことで、日本を含め多くの国々では規制薬物ですが、一部の国・地域では嗜好品として合法、また医療用とされている場合もあります。
アメリカの大麻を提供する業態は、カンナビスラウンジに次ぐ新業態です。大麻のみ提供するラウンジと異なり、カンナビスレストランでは農家直送野菜とこだわりのコーヒー、ジュースなどと共にカンナビスを提供します。アメリカでは公共の場でのアルコールとカンナビスの同時提供は禁止されているため、同レストランではアルコールは提供せず、ソフトドリンクのみが提供される予定です。
新業態のオープンに伴い、近隣の住民との話し合いや行政からの指導を経て、待望の開店が決定したものです。この開店が持つ意味と、世界でのカンナビス(大麻)の位置づけについて見ていきます。
【訪日ラボは、インバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025」を8月5日に開催します】
レストランはLowell Herb Co. によるプロデュース、オーガニックなど持続可能な社会発展を志向
本レストランを企画・運営するのは、ロサンゼルスを中心に人気を博しているカンナビスブランド「Lowell Herb Co.」です。
同企業を有名にしているのは、300を超える薬局で取り扱いのある「Lowell Smokes」と呼ばれるタバコ状のカンナビス商品です。栽培に使用される肥料はオーガニックのもの、太陽光の下での栽培が約束されており、環境にも配慮された生産方法で生産されています。
サステイナブルな企業活動に力を入れている同社だけあり、本レストランのテーブルやベンチ、食器もリサイクル品からプロデュースされており、こだわりを感じられる店内となっています。
新業態のカンナビスレストランには、Netflixクッキングショーにも出場したことのあるシェフがメニューのマネジメントを行っていくことになっています。
当初の予定では10mgまでの THC(テトラヒドロカンナビノール、大麻の有効成分の一種)もしくはCBD(カンナビジオール)入りの食事も提供される予定だったものの、行政からの指導により追加の検証が必要であるとされ、これらはオープンまでには提供が間に合わないとされています。
開店時には、様々な種類のカンナビス、吸引器、THCやCBD入りのノンアルコールカクテルなどが提供される予定です。
アメリカ、世界での大麻取り締まり状況
現在アメリカではカンナビス、つまり大麻(マリファナ)の合法化の流れが活性化されています。2019年夏現在、カリフォルニア、ミシガン、ネバダ、ワシントン州をはじめ多くの州で合法での使用が認められる様になってきています。
その用途が娯楽に認められているのか、医療目的だけなのかといった規制は、州により異なります。
アメリカ以外でも、世界ではすでに26の国でカンナビスの合法化が認められています。
カナダ、アメリカ(一部)、メキシコ、ベリーズ、コスタリカ、ジャマイカ、アルゼンチン、コロンビア、エクアドル、ペルー、ウルグアイ、カンボジア、ラオス、北朝鮮、ベルギー、イタリア、オランダ、ポルトガル、スペイン、スイス、クロアチア、エストニア、ロシア、ウクライナ、オーストラリア(参考:The Best Countries Around the World to Smoke Weed)
主に医療使用に限り使用が許されている地域と、レクリエーション使用も可能な場所とがあるます。更に年齢制限や、使用量を具体的に取り締まっている国も多いです。
日本では違法
日本でカンナビスを所持・使用していたらどうなるのか?日本では他の国とは異なり、厳しく罰せられることになります。
【所持の場合】
①所持:五年以下の懲役(同法24条の2第1項)
②営利目的(つまりは大麻を売って儲けようとしているような場合、いわゆる売人ですね。)による所持の場合:七年以下の懲役及び二百万円以下の罰金(同法24条の2第2項)
【栽培の場合】
①栽培の場合:七年以下の懲役(同法24条1項)
②営利目的の栽培の場合:十年以下の懲役に処し、又は情状により十年以下の懲役及び三百万円以下の罰金(同法24条2項)
(参考:弁護士法人ALG&Associates ウェブメディアALG+)https://www.alg-plus.com/keiji/taimataihonagare/)
昨今のニュースでもミュージシャンやアイドルの使用所持が大きな問題になっており、世界の風潮はあれども、日本では厳格に処罰されるということを理解する必要があります。
なぜカンナビス使用が支持され合法化される背景とは
全米アカデミーズがおこなった調査によると、アメリカでは人々は以下の理由でカンナビス(大麻)の合法化に賛成していることがわかるります。
出典:5/15-5/30 全米1,000人以上を対象に調査(In U.S., Medical Aid Top Reason Why Legal Marijuana Favored)86% 医療で必要としている人のため
70% 法執行機関が他の犯罪に注力出来るため
60% 個人の自由
56% 州や政府の財源になる
47% 政府の規制によりマリファナ使用が安全になったため
35% マリファナは人体に害がないと思うため
多くのマリファナ合法化を推し進めている国々は、その他の危険ドラッグの使用が深刻な社会問題になっており、マリファナの様な中毒性が低く自然由来のソフトドラッグを合法化することによる治安回復を目指している背景を持ちます。
他にも、アルコールなど法規制の無い嗜好品と比べマリファナが原因となる事件や事故の少なさから、社会への悪影響が低いと信じられていることが合法化を推し進めています。
カンナビス(大麻)は観光資源にも
NYタイムズ誌によると、合法化の煽りを受け、ユニークなカンナビス観光業が今アメリカで続々と出現し、人気を博しています。
米カンナビス観光の先駆け的な存在である「Colorado Cannabis Tours」は、世界からの視察者・初学者に広く対応できる専門ツアー会社の一つです。同社が企画しているツアーで最も人気なのは、カンナビス(大麻)視察ツアーです。40,000平方フィートにも及ぶ広大な大麻栽培場を訪れ、栽培者や医療関係者などから効果効能や、栽培方法のレクチャーを直接受けられます。
更に、厳選されたマリファナのサンプルの配布、グラスパイプを使った吸引のデモンストレーションも楽しめます。
こうしたツアーは全米各地、また世界からの観光客で連日賑わっているといいます。ツアー代金は、89USD(約9,000円強)です。
他にもハーシュ(マリファナのエッセンスを抽出し、固めたもの)の作り方講座、マリファナ吸引OKなアートレッスン、マリファナ料理レッスンなど、すでに多様な形でカンナビス観光が提供され始めています。
想像の上を行く世界のインバウンド産業
米CNBCによると、これからの世界のカンナビス産業は2025年までに1,460億円までに上ると予想されているといいます。これは日本国内の電子コミック市場と同規模です。
カンナビス(大麻)は世界各地で合法化を進める動きが現在も盛んに起きており、益々その流れは広がりをみせていくことが予想されています。
今回レストランがオープンするのは、西ハリウッド。ビバリーヒルズとハリウッドに挟まれている、ロサンゼルスでも流行最先端の街です。車で5時間ほど北上していくと、世界一の起業家が集まるシリコンバレーもあります。
こうした地域には流行のアーリーアダプター(比較的早期に受け入れ、それによって他の消費者・ユーザーへ大きな影響を与えるとされる利用者層)も多く存在すると考えられ、こうした新産業の拡大を加速させる可能性もあると言えるでしょう。
世界のインバウンド市場には様々なコンテンツが存在します。日本も発想の転換を行うことで、新たな分野での経済活性化も不可能ではないでしょう。
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【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
<こんな方におすすめ>
- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
- 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
- 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
- インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
→「THE INBOUND DAY 2025」特設ページを見てみる
【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
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