レベニューマネジメントとは、需要予測に合わせて価格設定を変更する宿泊業における経営マネジメント手法のことです。オンライン旅行代理店を通じた宿泊予約の普及をきっかけに、ホテルや旅館といった宿泊業者にも広がっています。
日々需要が大きく変動する宿泊業では、レベニューマネジメントによって適切な価格を設定することが重要です。
この記事では、レベニューマネジメントの手法、導入する上で必要なポイント、さらにはビッグデータ・AIを活用したレベニューマネジメントの実践事例を紹介します。
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レベニューマネジメントとは
レベニュー(Revenue)とは、会計英語で「収益」を意味する言葉です。
レベニューマネジメントは直訳すれば「収益の管理」ですが、「需要予測に合わせて価格設定を変更し、収益拡大を図る手法」を指します。宿泊業における代表的な経営マネジメント手法のひとつで、自社の利益を最大化させるために必要不可欠な概念です。
レベニューマネジメントの始まりは、1970年代のアメリカの航空業界の規制緩和です。
当時のアメリカ航空業界は、アメリカン航空など大手航空会社のみで構成されていましたが、この規制緩和をきっかけに、格安航空会社の参入が始まりました。
航空事業は、空席が発生してもサービスを翌日に繰り越すことはできないため、収益を最大化するためには、運航日までに空席を極力減らす必要があります。
規制緩和による競争の激化により空席の増加を危惧したアメリカの各航空会社は、需要が少ない日を予測し、一定期間以上前に予約をすれば、正規料金と比較し格安のチケットが購入できる価格制度を導入しました。
レベニューマネジメントがホテル業界に広まった背景
需要による価格変動制度は、航空業界同様、サービスを翌日に繰り越すことができないホテル業界にも広まりました。
特にオンライン旅行代理店=OTA(Online Travel Agent)の存在が、ホテル業界のレベニューマネジメントの普及に大きく影響しました。
OTAを通じた宿泊予約の普及により、ホテル会社側は予約状況をリアルタイムで確認し、他社の価格とも比較しながら自社サービスの価格を設定できるようになったためです。
しかし消費者側も宿泊価格をリアルタイムで比較できるため、予約完了後も周辺ホテルの価格動向を確認しつづけ、値下げされたホテルを見つけると既存の予約をキャンセルし、乗り換えてしまう消費者も現れました。
各宿泊業者はこういったキャンセルリスクも考慮した上で、適切な戦略を立てることが必要となってきています。
OTA(Online Travel Agent)とは
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レベニューマネジメントの考え方
宿泊業界には、季節やイベントなどに伴う繁忙期が存在します。
繁忙期に合わせてホテル規模(客室数など)を設定すると、そのときの売上は増えますが、閑散期にも固定費がかかるため、年間での収益は減少してしまうことになりかねません。そのため、宿泊施設の規模はある「標準的な需要」をもとに決定されています。
レベニューマネジメントでは、この標準的な需要をもとに設定された部屋数を、適切な価格で満室に近づけることで、収益の最大化を図ります。
売上を決めるのは「1室当たりの価格(単価)」と「予約部屋数(稼働率)」です。
繁忙期に供給できる部屋数は限られているため「1室当たりの価格(単価)」を上げることで売上を最大化します。
一方で閑散期は、値下げによる「予約部屋数(稼働率)」を増やすことで収益拡大を目指します。
もちろん、顧客は「価格」だけでなく、「サービス」も加味した上で予約を行います。どのような客層をターゲットにして「価格」と「サービス」を設定していくか、また需要に応じた価格の上げ幅、下げ幅をどれほど大きくするかは、企業側の長期的なレベニューマネジメント戦略といえるでしょう。
レベニューマネジメントのポイント
レベニューマネジメントにおいて、何よりも重要なものは予測の正確性です。一般的なレベニューマネジメントでは、前月末に立てた計画との実績差が3%以内となることを基準としています。すべての価格戦略はこの需要予測から始まるため、それぐらいの正確性が求められます。
経営者は、計画と実績差をこの3%以内に収めるべく、過去のデータや、周辺イベント等あらゆる情報を確認し、より正確な需要予測を立てる必要があります。
Ctirp(携程、シエチェン)とは
Trip.comグループ(2019年10月にCtripから社名変更)のCtrip(携程、シエチェン)とは、中国最大のオンライントラベルエージェンシー(OTA)です。中国国内だけでも約3億人が利用するサービスで、海外向けのサービスTrip.com(国際版Ctrip)も展開しています。中国では年々海外旅行に出かける人が増えており、その旅行形態も、大人数で行く団体旅行から少人数の個人旅行へと変化しています。個人で旅行を計画するときに、多くの中国人がこのCtirp(携程、シエチェン)を利用していま...
レベニューマネジメントを用いているホテルの事例
レベニューマネジメントを、どの程度、どのようにして実施していくかは、会社の経営方針が大きく反映されます。ここでは、アパホテルとソラシドエアの例を紹介します。
1. アパホテル:徹底した価格戦略
アパホテルでは、その徹底的なレベニューマネジメントを用いた価格戦略により、ホテル業界の中でもかなりの高収益を出している会社です。経営側は価格の決定権を各店舗に委ねており、店舗の支配人が、各々の手腕で需要動向を見極めながら価格を決定します。
中には、繁忙期には閑散期の3倍の価格に設定される場合もあり、その極端な価格設定に、一部の消費者は納得ができず不満を抱いているのも実情です。
2. ソラシドエア:ビッグデータ・AIを活用
ソラシドエアでは、従来は社員の経験に基づき需要を予測し、航空券価格を決定していました。
しかし同社が運航路線を拡大していく中、従来の社員による計画策定では作業が追いつかなくなったため、需要予測にビッグデータやAI技術を導入しました。
この技術導入は、属人的な業務を削減しただけでなく、結果として予測の正確性を上げ、より最適な価格設定を可能としました。
レベニューマネジメントを学び、実践を
レベニューマネジメントの概念や考え方を、実例とともに紹介しました。宿泊業で利益を最大化するためには、この概念をいかに詳しく学び、実践に落とし込むかがカギとなります。
最後に紹介したソラシドエアでの実例のように、レベニューマネジメントにおけるビッグデータやAI技術の発展は、より一層加速していくとみられます。
こういった最新技術や手法を積極的に学び取り入れる姿勢が、今後の経営に求められていくでしょう。
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