インバウンドのアジア市場を中心に、コンテンツツーリズムが盛り上がっています。
四国の愛媛県内を走るアンパンマン列車は、国内の親子旅行において以前から親しまれてきましたが、近年は訪日外国人観光客の間でも関心が高まっています。
アンパンマン列車以外にも、インバウンドにも人気のマンガやアニメ・映画といったコンテンツをきっかけに、地方誘客を促進している例も見受けられます。
今回は、コンテンツツーリズムの成功例として、アンパンマン列車の取り組みや、他のキャラクターによる町おこし事例にも触れ、今後のコンテンツツーリズムによる地方創生の可能性について紹介します。
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インバウンドにも人気のアンパンマン列車
アンパンマン列車は、2000年10月に香川県と高知県の間を走る土讃線で、2001年には同じく香川県と愛媛県をつなぐ予讃線で運行を開始しました。2002年にはゆうゆうアンパンマンカーが、2006年にはアンパンマントロッコが加わり、リニューアルを繰り返しながら現在に至るまで四国地方を走っています。
2019年9月28日、このうちの一つである「宇和海アンパンマン列車」のデザインを7年ぶりにリニューアルしました。10月、11月には瀬戸大橋アンパンマントロッコをはじめ、各路線で運転本数を増加させる意向です。
JR四国管内では、西日本豪雨による被害から2019年3月期の鉄道運輸収入は、前期と比べ6%減の225億円と大きく落ち込んでいます。アンパンマン列車は、近年では国内だけでなく、海外から家族旅行で訪れるインバウンド層にも人気となっています。減収となる中、秋の観光シーズンと今回のリニューアルで客足の増大への期待は高まっているでしょう。
やなせたかし氏は高知育ち
アンパンマンの作者である、やなせたかし氏は東京で生まれ、高知県で育ちました。高知県のやなせたかし記念館はアンパンマンミュージアムと詩とメルヘン絵本館、その他の施設で構成されています。
アンパンマンミュージアムではジオラマやミニシアター、ミュージアムショップがあり、また記念館には公園や遊具も整備されています。訪日外国人観光客のファミリーでも十分楽しめる空間となっているのが特徴です。多言語対応したパンフレットは、オンラインでも提供されています。
2019年はやなせ氏の生誕100周年ということで、2月から7月にかけて特別展も開催しました。
アンパンマン列車は「コンテンツツーリズム」の成功例!
アンパンマン列車は、近年インバウンドで話題となっている、コンテンツツーリズムの成功例として注目されています。コンテンツツーリズムとは、マンガ・アニメ・映画といったコンテンツに関連した消費を目的とした観光旅行です。
特にマンガやアニメの舞台を訪ねる「聖地巡礼」をはじめとする観光をアニメツーリズムと呼びます。インバウンド誘客において、今最も注目されているニューツーリズムの1つと言えるでしょう。
JR四国では、営業部誘客戦略室内にインバウンド担当を設けており、インバウンドの四国への誘客や、鉄道の利用促進に取り組んでいると言います。2016年以降、香港の大手旅行会社では四国のアンパンマン列車をテーマにしたツアーを組んでおり、2019年9月までの延べ乗車人数は二万人を突破したことが伝えられています。
キャラクターを活用した町おこしの事例3選
インバウンドにも人気のマンガやアニメのキャラクターを活用し、町おこしを行っている事例を3つ見ていきましょう。
1. 鳥取県:名探偵コナン
鳥取県では、2014年に鳥取空港の愛称を「鳥取砂丘コナン空港」に決定しました。
全国の空港において、空港をより親しみのあるものにし、知名度アップを図る上で、空港に愛称を付ける動きが出てきています。鳥取県では、「鳥取砂丘」が県を代表する観光名所であることと、国内外で人気のマンガ「名探偵コナン」の作者である漫画家・青山剛昌氏の出身地が鳥取県の北栄町であることから、「鳥取砂丘コナン空港」に決定しました。
名探偵コナンは海外でも人気とあってインバウンドにも注目度の高い存在です。2019年9月8日には、劇場版『名探偵コナン 紺青の拳(フィスト)』の劇場公開イベントが中国の北京で開催されています。
名探偵コナンをはじめ、青山剛昌氏の作品の世界に触れられる「青山剛昌ふるさと館」もインバウンド向けのPRを実施し、鳥取県内の周遊観光促進に力を入れています。
2. 静岡県:ラブライブ!サンシャイン!!
「ラブライブ!サンシャイン!!」は、静岡県沼津市の内浦地区が舞台となっているアニメ作品です。2015年に雑誌に登場し、2016年からはアニメが放映されています。2018年の大晦日には作品内のアイドルグループ「Aqours」がNHK紅白歌合戦に出場しており、日本でも大衆に認知される存在となっています。
作品内に登場するアイドルグループの「Aqours」は、2017年より第25・26期と連続して燦々ぬまづ大使に就任し、沼津の魅力をPRしています。
沼津市では、作品の舞台となったスポットを巡ってもらおうと「沼津まちあるきスタンプ」を企画しています。またテーマ別に沼津の魅力を紹介する2本の観光PR動画を作成し、動画には作品の登場人物を起用しました。
同作品にはインバウンドのファンも多く、2019年3月から4月にかけて、上海・台北・ソウルでアジアツアーが開催されたほどの人気ぶりで、こうした作品とコラボレーションした観光コンテンツはさらなる誘客につながると考えられます。
3. 熊本県:PRマスコットのくまモンを活用
日本各地で展開されているご当地マスコットキャラクターですが、熊本県では「くまモン」を通じた観光PRをインバウンド向けにも強化しています。
2018年1月8日より「くまモン」のイラストを小売価格の5〜7%支払うことで、海外企業でも利用できる新制度の導入を開始しました。「くまモン」を通じて、海外での熊本県の知名度アップ狙います。
訪日外国人観光客の旅行消費額は日本人の4倍以上とも言われていることから、地域の稼ぐ力を醸成する上でインバウンドへのPRは必要不可欠と言えるでしょう。
熊本県では、特に中華圏からの観光客をターゲットとしており、2017年10月から熊本と香港を結ぶ新規路線を就航するなど、インバウンド対策に力を入れています。
現在では、中国のショッピングモールにも「くまモン」の関連グッズが置かれ、上海には「くまモン」がテーマの「KUMA Cafe」があるなど、中華圏における「くまモン」の知名度と人気の高さは高く、その他のご当地マスコットキャラクターの追随を許さないほどと言えるでしょう。
2016年には熊本地震の影響もありながら、訪日外国人観光客数が全国20位と健闘しており、こうした結果も「くまモン」人気が支えたものと言えるでしょう。
「くまモン解禁」を皮切りに、今後もインバウンド向けPRのさらなる促進が見込まれます。
まとめ:コンテンツツーリズムで地方創生へ
コンテンツツーリズムは、海外のファンを取り込み、日本各地で聖地巡礼ブームを巻き起こすといった地方創生を促進する力を秘めていると言えるでしょう。紹介した事例の他にも、全国各地でインバウンド向けのPRにコンテンツツーリズムが取り入れられています。
作品のファンには長年関連コンテンツを追いかける人も少なくなく、コンテンツツーリズムは一過性のブームではなく今後も有効なインバウンド対策となっていくでしょう。
<参照>
・日本経済新聞:走って誘うアンパンマン JR四国、列車デザイン刷新
・やなせたかし記念館:企画展
・インバウンド実務主任者認定試験:コンテンツツーリズム
・JR四国:香港の旅行会社によるアンパンマン列車を利用したツアーの乗車人数が20,000人を迎えます!
・青山剛昌ふるさと館:開館の経緯
・鳥取県:鳥取空港の愛称が『鳥取砂丘コナン空港』に決定しました。
・訪日ラボ:【週刊】中国ニュース5選:中国でも大人気映画『名探偵コナン』最新作が公開&ヒット化粧品『TWANY』人気の理由
・沼津観光ポータル:沼津市×ラブライブ!サンシャイン!!
・ラブライブ!サンシャイン!!:LOVE LIVE! SUNSHINE!! Aqours World LoveLive! ASIA TOUR 2019
・訪日ラボ:海外で「くまモン解禁」で何が起こるのか?5〜7%の使用料で誰でもくまモン起用可能に 背景には中華圏で巻き起こる熊本ブーム・インバウンド誘致のチャンスなるか
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