日本の伝統的なライフスタイルや文化に根ざした存在として、単なる睡眠のための施設にとどまらない「旅館」に対するインバウンドからの注目が高まっています。
2018年の訪日外国人の消費動向に関する年次報告書では、訪日外国人観光客が「訪日前に期待していたこと」において、「旅館に宿泊」がトップ10に入っているほか、「日本食を食べること」「温泉入浴」も上位にランクインしています。改めて需要の高さがうかがえる結果となりました。
一方で、2018年に旅館業法が改正されたことなどを受け、既存の枠にとらわれない旅館のあり方に注目が集まっています。
今回は、新しい形の旅館が注目されるようになった背景をふまえ、今後求められるであろう旅館のあり方について見ていきましょう。
訪日ラボのメールマガジン登録はこちら>(無料)
ライフスタイルの変化がもたらした、旅館のあり方の変化
日本の旅館は、ダイニングルームやベッドルームといった用途ごとに部屋を分けるホテルとは異なり、畳の客室を食事処や寝室など、時間帯に応じて異なる空間に変化させ、あらゆる用途に用いる点が特徴です。
伝統的な日本の住環境を再現しているのが、旅館の魅力の1つと言えるでしょう。しかし近年では、従来の旅館の定義を超えた、新しい形の旅館が見受けられるようになってきました。
背景には、日本人のライフスタイルそのものの変化があります。
都市部を中心に、ダイニングルームで椅子とテーブルで食事をし、ベッドで眠るライフスタイルが浸透したことなどを受け、旅館でも畳の部屋にベッドを置き、部屋食ではなく食事処でサービスをする旅館が増えています。
従来はホテルと旅館は法律的にも区別されていましたが、2018年に旅館業法が改正されたことから、旅館の定義は多様化しています。
ホテルと旅館を区別するものの1つに、プライバシーに関する考え方が挙げられるでしょう。
ホテルではゲストのリクエストに対し、実現に向けて最大限サービスをするのに対し、旅館はゲストの要望がなくとも、最適と思われるおもてなしを自ら考え提供します。現在のホテルと旅館の違いについては、ハード面ではなくサービスのあり方が影響していると言えます。
現代のニーズに応える、旅館ならではの新たな「非日常体験」
日本全国で旅館の数は減り続けていると言われますが、一方で現代のニーズに応えるような革新的な非日常体験を提供する旅館は、日本人だけでなくインバウンドからも高い評価を受けています。
旅館の再生などで急成長した星野リゾートでは、温泉旅館のブランド「界」と和のリゾート「星のや」を展開し、ラグジュアリーさを併せ持つ非日常体験が魅力です。代表の星野佳路氏は、旅館を「日本文化のテーマパーク」と位置付け、ライフスタイルの変化に合わせて旅館を進化・再生させたいとしています。
旅館ならではの落ち着いた空間や地域ならではの食の提供などにこだわる一方で、原則部屋食は提供しないほか、星のやでは泊食分離を実現しました。星野リゾート青森屋では夕食にバイキングを提供しており、さまざまな世代やニーズに応えていることから、ゲストの満足度も高くなっているようです。
あらゆるニーズを察知し従来の形から脱却、ニーズに応えようとする姿勢は、星野リゾートの得意分野と言えるでしょう。
"リョカン"スタイルを取り入れた米国超高級ホテル
「日本文化のテーマパーク」である旅館への関心は、インバウンドの間でもますます高まっています。実際に海外で「リョカン」スタイルを取り入れたホテルが話題になっています。
アメリカ・ロサンゼルス郊外の「ノブ・リョカン・マリブ」は、俳優のロバート・デニーロと和食レストラン「ノブ」を展開し成功した松久信幸氏による、リョカンと銘打つ新たな超高級ホテルです。
カリフォルニアと日本のテイストを融合させたスタイリッシュなホテルとして、客室にはキングサイズのベッドが置かれ、食事は隣接のノブレストランもしくは部屋で食べるかを選択できます。食事はもちろん和食ですが、従来の旅館のような一泊二食付きは採用していないのが特徴です。
1泊2,000ドル以上と超高級ホテルにも関わらず、ハリウッドセレブをはじめ、カリフォルニアの富裕層に人気となっています。日本で展開されている新しい旅館のコンセプトが海外の富裕層のニーズに応えることに成功した例と言えるでしょう。旅館が、今後ますますインバウンドを惹きつける可能性も見えてくるようです。
まとめ:既存の枠にとらわれない新しい「旅館」でインバウンドを魅了
旅館業法の改正により旅館のあり方が多様化しています。今後はライフスタイルの変化や現代のニーズを素早くキャッチし取り入れる旅館こそが、インバウンドを含めあらゆる層を惹きつける時代になったと言えるでしょう。
「ノブ・リョカン・マリブ」が海外の富裕層の間で人気となるなど、既存の枠にとらわれない新しい形の「旅館」は、海外でも注目され始めています。インバウンドの地方誘客のきっかけとなるのではという期待が高まります。
<参照>
・観光庁:日本旅館の生産性向上・インバウンド対応の強化等を加速するための新たなビジネスモデルのあり方等に関する検討会
・nippon.com:日本旅館の新潮流:衰退の中で見えてきた可能性
【12/10開催】【売上4倍事例】地方企業の成長を支える「インバウンド×口コミ」戦略を紹介

沖縄県で複数店舗の焼肉店を展開する「焼肉 もとぶ牧場」。同社は急増するインバウンド需要を的確に捉え、短期間で売上を400%に伸長させました。
その成果を支えたのは、徹底的なマーケティング強化と、口コミを核とした仕組み化・現場改革です。
本セミナーでは「もとぶ牧場」のマーケティング責任者をゲストにお迎えし、沖縄の最新インバウンド動向から、売上4倍を実現させた戦略の全体像まで、余すことなく公開します。
<セミナーのポイント>
- ローカルブランドが短期間で売上4倍にした実例を担当者から聞ける!
- 人手不足でも無理のない「口コミ活用の仕組み化」が学べる!
- 口コミを現場でどう収集し、改善・集客に活かしているのか、その具体的な方法がわかる!
詳しくはこちらをご覧ください。
→【売上4倍事例】地方企業の成長を支える「インバウンド×口コミ」戦略を紹介[無料セミナー]
【インバウンド情報まとめ 2025年11月後編】中国の訪日自粛要請、観光庁長官の受け止めは? ほか

訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。
この記事では、主に11月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
※訪日ラボ会員にご登録いただくと、レポートの全容を無料にてご覧いただけます。
詳しくはこちらをご覧ください。
→中国の訪日自粛要請、観光庁長官の受け止めは?/ 10月の訪日外客数389.6万人、国別1位は韓国 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年11月後編】
今こそインバウンドを基礎から学び直す!ここでしか読めない「インバウンドの教科書」
訪日ラボの会員限定コンテンツ「インバウンドの教科書」では、国別・都道府県別のデータや、インバウンドの基礎を学びなおせる充実のカリキュラムを用意しています!
その他、訪日ラボの会員になるとインバウンド対策で欠かせない中国最大の口コミサイト「大衆点評」の徹底解説や、近年注目をあつめる「Google Map」を活用した集客方法など専門家の監修つきの信頼性の高い教科書コンテンツやインバウンドを分析したレポート、訪日ラボのコンサルチーム登壇のセミナーなど役立つコンテンツが盛りだくさん!










