東大特任准教授の差別発言「中国人採用しない」がダメな理由:なぜ大炎上事件になったのか

公開日:2019年12月03日

「東大最年少准教授」を肩書にすえた東京大学大学院の特任准教授(特定短時間勤務有期雇用教職員)の大澤昇平氏による、Twitterでの過激な発言がネット上の注目を集めました。

大澤氏は自らの発言で講座の存続をあやうくし、結果として謝罪と自らの発言を撤回しています。

大澤氏の発言のいきさつや、ネット上で見られた意見、また大学、関連企業の反応を整理します。訪日外国人が増えている今、「人権意識」がいかに重要なトピックであるかについても考察します。


大澤氏による差別的なツイートとは

大澤昇平氏(以下、大澤氏)は、最年少で東京大学大学院の講座を担当する情報工学者で、2019年9月には『AI救国論』を出版しています。Twitterのフォロワーは2019年12月時点で約8,600フォロワーで、アカウント名には新刊タイトルが付記されています。

▲[大澤氏のTwitterアカウント]:編集部キャプチャ
▲[大澤氏のTwitterアカウント]:編集部キャプチャ

大澤氏は11月20日、以下の内容でツイートを更新しました。

弊社 Daisy では中国人は採用しません

この発言に違和感を抱いたTwitterユーザー達が様々に反応する中「もしある人が面接に来て、その人が中国国籍だったらどうします?」と、抗議の意を込めてか質問するツイートも発信されました。これに対し大澤氏は、

そもそも中国人って時点で面接に呼びません。書類で落とします。

これらのツイートは既に削除されていますが、それに関連したツイートは多く残っており、大澤氏の発言がいかに世間の感情を大きく揺さぶったかが読み取れます。

海外から日本を訪れる観光客だけでなく、留学生、就労者、移住者が増える昨今、異なる背景を持つ人々がいかに円滑に共同体を作り上げていくかは日本社会の大きな課題であり、これに前向きに取り組む人々にとって、正面から喧嘩を売るような行為と言えるでしょう。

また、大澤氏は特任教授の職務とは別に、自身が経営するAI関連企業のDaisyを設立、CEOに就任してます。ダイバーシティの必要性が認知されつつある今、最高学府の特任准教授、なおかつ国ではなく実力が重視されるイメージのある研究開発分野のトップの発言は、世の流れに逆行するものとして多大なるインパクトをもって世間に受け止められました。

大澤氏は、「東大とは関係ない」「自社の採用方針」「合理的な理由がある」といった発言を重ねますが、国籍や出自といった本人の選べない属性を根拠に特別に不利益な扱いを公言することは、人種差別発言以外のなにものでもなく、世間も大澤氏の見方を支持はしませんでした。

大澤氏のTwitterには「人種差別は許されない」「ヘイトスピーチです」「東大は人種主義者を容認する大学か!」などと批判が殺到しました。

東京大学の反応

一方、大澤氏の一連の発言に対し、東京大学は11月24日、次のような発表をしました。

SNS等におきまして、東京大学大学院情報学環・学際情報学府(以下、学環・学府)の特定短時間勤務有期雇用教職員(特任准教授)による、特定個人及び特定の国やその国の人々に関する不適切な書き込みが複数なされました。 これらの書き込みは、当該教員個人または兼務先組織に関するものであり、学環・学府の活動とは一切関係がありません。 東京大学憲章では、「東京大学は、構成員の多様性が本質的に重要な意味をもつことを認識し、すべての構成員が国籍、性別、年齢、言語、宗教、政治上その他の意見、出身、財産、門地その他の地位、婚姻上の地位、家庭における地位、障害、疾患、経歴等の事由によって差別されることのないことを保障し、広く大学の活動に参画する機会をもつことができるように努める」と言明しております。

東大としては、大澤氏の発言には一切関わりはなく、また氏を支持する考えはないとはっきりと表明したというわけです。

「企業の代表としての意見」との釈明はしたものの、そうではあっても東大の所属職員としての立場は消えるわけではありません。大澤氏個人が当時どのように受け止めたかはわかりませんが、その帰属団体による非難には社会的に一定の意味を持っていると言えるでしょう。

関連企業の対応は?寄付講座停止の可能性、出資企業も見放す

また東大に続き、大澤氏が担当する講座へ寄付をしていたマネックス証券も以下のようにコメントを発表しました。

マネックスグループは、元来ダイバーシティを尊重する企業であり、また、持続可能な経営を進めて行くため、人権の尊重を事業活動における重要課題として認識し、人権の尊重の更なる実践に向けて「マネックスグループ人権方針」を制定しております。(中略)本特任准教授の価値観は到底受け入れられるものではなく、書き込みの内容及び現在の状況に関して、極めて遺憾であります

大澤氏の講座はマネックス証券ほか二社による寄付講座ですが、全ての組織が寄付を停止する方針を発表しており、最終的には寄付講座そのものがなくなり、大澤氏が特任准教授のポストを追われる可能性もあるようです。

この騒動の渦中にいる大澤氏は11月23日、こんなツイートをしました。(該当ツイートは既に削除)

大学の各部署に迷惑が掛からないよう、怒り心頭な方のために有力な問い合わせ先貼っておきますね。弊社の株主なので、唯一私の方針に影響力を行使できます。束になって連絡したら何か動いてくれるかもしれません。

この「有力な問い合わせ先」として貼られたリンクは大澤氏の経営する企業に出資している企業の公式サイトでしたが、この出資元からも大澤氏は突き放されます。

当社の出資先企業の代表者が、SNS等において、特定の個人、特定の国やその国の人々に関する不適切な内容の投稿を複数回行いました。
当該投稿は、かかる代表者個人によるものであり、当社グループの活動とは一切関係ございません。また、当社グループでは、グローバルに展開している事業を有し、かつ、国籍の異なる多様な人財が従業員・パートナーとして活躍しており、当該投稿は当社グループのビジョン・見解とは反するものと考えております。
(中略)当社グループは、いかなる差別にも断固反対する立場をとっております。今回の当社の出資先企業代表者による投稿の内容は誠に遺憾であり、また、一連の投稿で不快に感じられた方々に深くお詫び申し上げます。

「企業の代表としての発言」との釈明も、その経営に欠かせない出資元の賛同を得られず不発に終わります。

大澤氏はなおも反論、そして釈明

こうした東京大学や関連企業の反応にもかかわらず、大澤氏は11月25日、Twitterを通じて更なる自説の主張を試みます。(該当ツイートは既に削除)

今回の炎上問題について、あくまで株式会社Daisyの立場として弁明いたします。①私が兼業する株式会社Daisyと東京大学は利益相反マネジメントを行っており、取引先も完全に分けています。今回の私の「特定国籍の人間は書類で落とす」という投稿は、あくまで私企業が採用方針を表明したものです。

この発言のリプライでは、次のように持論を展開します。

  1. 当発言を受け、二次的に多くの人物による嫌がらせが発生しました。中でも悪質な投稿を貼っておきます。
  2. 一部の人物が主張している、「これは差別煽動・ヘイトスピーチであり、レイシズムやホロコーストを助長するものである」と主張は、「風が吹けば桶屋が儲かる」くらい、論理的な飛躍が大きいものです。
  3. 今回の採用方針が統計的差別にあたると認定されたところで、「では、私企業が業績を向上する目的で、統計的差別をすることは許されないのか」という点には大いに議論の余地があります。
  4. 人物属性を考慮に入れることが不当なのであれば、企業の書類選考はすべて不当ということになります。
  5. 今回の問題を受け、当社としてどのような対応を取るのかについては慎重に検討し、関係者と協議の上発表します。大学は組織として然るべきルートで公表しますので、あまり個人の発言を鵜呑みにしないようお願いします。
  6. 不当な「数のテロリズム」に屈するつもりはありません。続報をお待ちください。

火に油を注ぐとはまさにこのことを言うのでしょう。

Twitterユーザーからは「もっと最適な釈明をAIに導出してもらったらどうですか?」「御社は採用選考に当たって人種・民族差別をする企業という事ですね」「難しい言葉を使えるということと、理解力があるということがイコールてはない。ということがよくわかりました。」などと厳しいリプライが見受けられます。

謝罪コメントを出したものの…

大澤氏は12月1日、ついに謝罪コメントを発表しました。

ただし、謝罪の形をとっているものの、「不快感を与えた」ことに対するお詫びにとどまっており、本質的に何がアウトであったのかという認識はまだ自身の中にないようです。この謝罪を受けて今後、東京大学や各企業がどのような対応をするかは不明ですが、こうした差別的態度はこれから先、ますます日本社会に受け入れられなくなっていくことでしょう。

特に大澤氏はインターネット上で発言を繰り返しており、当該の投稿は各所で保存されており、その記録は消えません。

まとめ

特定の出自や属性を理由として、不利益な扱いをすることは差別です。特に国籍や人種を理由にした差別は、これまで外国籍の人との接触が相対的に少なかった日本人の場合、残念ながら間違えやすい領域と言えるかもしれません。

今回の大澤氏のように、合理的な理由で判断を下しているように自分では考えていても、その本質としては差別以外の何物でもないというケースは、こうした日本特有の環境が影響した結果と考えられるかもしれません。

人種差別問題に対していたずらに過敏になる必要はありませんが、海外からの目線で見たときには、これ以上ないほどに信頼を失墜する行動であることは覚えておくべきでしょう。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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