世界人口の約半分が近視になる未来、日本「眼鏡業界」の活路は?学びたい「視力矯正ツールに限らない」ポジションの探り方

公開日:2020年01月15日

観光庁が2019年10月に発表した訪日外国人消費動向調査の速報によると、2019年の7~9月期の消費額は、1兆2,000億円で前年同期比9.0%増となりました。

1~9月では3兆6,189億円となり、過去最高額を更新しました。訪日外国人旅行消費額の費目別構成比では、「買い物」が3,956 億円であり、訪日外国人のショッピングに対する予算配分の大きさがうかがえます。

訪日外国人が、日本に来たら買いたいものとは何なのでしょうか。日本で買いたいものに「工芸品」を挙げる訪日外国人は少なくありません。

今回は、工芸品的な側面も持ちながら実用性も高い日本の「眼鏡」にフォーカスし、業界におけるインバウンドの取り組みを紹介し、その市場の発展の可能性について考察します。


2050年、世界人口の約半分が近視に!?

近年、世界的に近視の人口が増えています。特に、東アジアでの近視の割合が増えており、10代の近視の割合は80%以上だそうです。また欧米でも数年後にはアジア並みになると言われています。こうした状況をレポートした2012年のある調査では、2050年には世界人口の約半数が近視になる可能性があることを伝えています。

近視が進む背景には、外で過ごす時間が少ないことや、スマートフォンが普及し小さい画面を見ることが日常化していることなどが考えられます。

コンタクトレンズや手術による視力回復も普及していますが、ファッションの一部として眼鏡を好む人も一定数おり、様々なデザイン、価格帯の眼鏡が販売されています。昨今のファッションメディアでは眼鏡を「アイウェア」と呼び、その機能性だけでなく外観を含めたアイテムへとコンセプトの転換を図っていることがうかがえます。

日本「鯖江ブランド」の由来は?世界三大眼鏡産地

日本の眼鏡の名産地といえば、北陸地方、福井県鯖江市です。日本で生産される眼鏡フレームのうち、約9割が鯖江とも言われています。鯖江の名とその眼鏡の品質の高さは世界的にも知られており、イタリアのベッルーノ、中国の温州(深センや厦門とする言い方も)とならんで世界三大眼鏡産地と呼ばれています。

明治時代、雪国で作物が育たなかった福井県鯖江に、増永五左衛門が明治時代に技術を持ち帰り、内職としての眼鏡作りが発展していきました。現在、東京でも有名な眼鏡ブランドには鯖江発祥というものも少なくありません。

各ブランドで、世界の「新たなニーズ」を意識した取り組み

日本の「眼鏡」の魅力を訪日外国人向けに訴求する取り組みが進んでいます。

老舗「パリミキ」のエンターテイメント型ショップ 

チェーンストアとして有名なパリミキは、2018年に京都のインバウンド向けの店舗開発を始めています。エンターテイメント型の店舗です。50年代のアメリカを思わせる内装で、従来の「眼鏡屋」の雰囲気とは感じさせません。

この店舗では、ファッション性を重視し、観光客・団塊ジュニア世代・学生などをターゲットにマーケティングを進めることを掲げています。訪日外国人を意識したラインナップとしては、福井県鯖江市のメーカーと連携して開発したオリジナル商品を展開し「日本製」を訴求しています。

また和柄のメガネケースなど観光客が土産物として購入できる商品を揃え、視力矯正用としての眼鏡ユーザーだけでない市場開拓を目指していることがわかります。

店頭での購入だけでなく、オンラインショップとの連携、同時通訳サービスや訪日外国人にとって便利な決済方法の導入など、インバウンドを意識した取り組みが見られます。

実は同社は、2016年にも原宿に同様のコンセプトの店舗を開店しており、訪日外国人からの人気を博していました。原宿と同じく訪日外国人に人気のエリアである京都への出店を通じて、 日本でのショッピングを楽しみたいという需要にこたえる狙いが見えてきます。

アイウェアブランドとしての地位確立を目指す「金子眼鏡」

同じく2018年、福井県に本社を構える金子眼鏡は、旗艦店となる新店舗を銀座にオープンしました。訪日外国人に足を運んでもらうことを想定しており、近場にも店舗を構えていますが「異なる客層を取り込める差別化」に意気込みを見せています。

金子眼鏡は、銀座に展開した金子眼鏡店のほかカネコオプチカル、フェイシャル インデックス、ザ・ステージのブランドを展開しており、パリにも店舗を置いています。パリで開催される国際眼鏡展に参加するなど、世界を舞台にしたPR活動にも余念がありません。

多言語&免税手続きをカバーする体制づくり

眼鏡量販店のメガネスーパーは増えるインバウンド需要に対応するため、2019年10月からは通訳サービスを導入しています。

導入した通訳サービスは、多言語映像通訳サービス「みえる通訳」、タッチ式会話ツール「さわって通訳」、マルチ通訳機「arrows hello」の3つです。「みえる通訳」は手話対応もできるので、専門用語が必要となるアイケアの話も的確に伝えられます。

また日本各地の商業施設に店舗を展開する「JINS」では、接客スタッフのほかに免税書類作成のスタッフを用意するなど、訪日外国人の購入に付随する業務の円滑化に成功しています。

訪日外国人が欲しい「眼鏡」の向こうに見えるもの

いくら「日本名産」の眼鏡に魅力を感じてもらえても、視力を計ったり、フレームだけでなくレンズの種類も選んだりと、眼鏡の購入は時間と言語でのコミュニケーションが必要です。いかにスムーズにオペレーションを進めることができるかが、眼鏡業界での訪日外国人向けの売上げを左右するでしょう。

また、眼鏡は視力矯正のためのものという認識がまだ主流となっている市場も存在しますが、健康意識の高まり、ファッションへのこだわりなど、眼鏡業界が開拓できる市場の余地はまだまだ広く残されていると言えるのではないでしょうか。

ブルーライトカットやファッション差別化のための眼鏡着用は、これからも世界的には広がっていくと考えられます。これまでと変わらず存在するアイテムでも、角度を変えて切り取ることで、これまでその存在価値に気付いていなかった層へのアプローチが可能となるかもしれません。

日本国内だけでなく、世界各地の市場ニーズに目を向けてみることは、眼鏡に限らず有効なアプローチとなるでしょう。

訪日外国人市場では「メイドインジャパン」へのニーズが変わらず存在しています。同時に、訪日旅行における「コト消費」へのニーズも引き続き高まっていくことが考えられます。商品の「購入」を「体験」ととらえることで、これまで以上に日本商品の購買に価値を見出してもらえるかもしれません。


<参照>

NHK NEWS WEB:私たちの目が危ない “近視クライシス”

@Press:株式会社三城、京都新京極通に インバウンド観光客に向けた新店舗オープン ~50'sアメリカンをイメージした店舗デザイン~

PRTIMES:メガネスーパーが多言語映像通訳サービス「みえる通訳」とマルチ通訳機「arrows hello」を43店舗で導入

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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