栃木県といえば、二荒山神社、東照宮、輪王寺及びこれらの建造物群で構成される世界遺産「日光の社寺」が有名です。
その他にも、渓谷の温泉郷「鬼怒川温泉」、一日で世界一周ができる「東武ワールドスクエア」など、見どころがたくさんあります。
今回は栃木県のインバウンド事情や課題、具体的な取り組みについてご紹介します。
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栃木県のインバウンド事情
栃木県のインバウンド訪問者数は2018年に最高人数を記録するなど増加していますが、全国的に見ると平均的な訪問者数となっています。
一方で宿泊者数は減少し、日帰りで栃木県を訪れる外国人観光客が増加したと見られます。訪日外国人観光客の割合は、アジア各国からの訪問客が半数以上を占めています。
ヨーロッパからの訪問客には世界遺産などの歴史的建造物が人気です。
栃木県のインバウンド状況
観光庁「訪日外国人消費動向調査 2018年年間値の推計」、「宿泊旅行統計調査(平成30年・年間値(確定値))」によると、2018年の栃木県のインバウンド訪問者数は405,557万人で全国第21位、外国人宿泊数は延べ323,390万人で全国第32位でした。
2018年は、4月1日から6月30日まで国内最大規模の観光キャンペーン「本物の出会い 栃木」を実施し、JRグループと地方公共団体・住民・企業などが協力して取り組んだ結果、外国人宿泊者数の増加につながりました。
「あしかがフラワーパーク駅」の開業時にはイベントも開催しています。しかし、全体での宿泊者数はやや減少し、日帰りで訪れる観光客が多いことを示しています。
国別インバウンド状況
栃木県を訪れる外国人観光客の割合は、アジア諸国で半数以上を占めています。一番多いのは台湾で23.27%、次いで中国の12.39%、そしてタイの11.08%と続きます。
アジア以外の国ではアメリカからの観光客が多く、訪日外国人観光客の8.58%を占めています。
また、栃木県におけるアメリカ人のインバウンド消費金額は全体の19.88%を占めるなど、アジア圏と比較しても高い数字を記録しています。
栃木県のインバウンド需要
栃木県の訪日外国人訪問率や訪問数、インバウンド宿泊人泊数などのインバウンド需要を示す数値、およびWi-Fi整備や外国人観光案内所などのインバウンド対応の進みぶりを示す数値ともに全国と比較して平均的な数値となっています。
インバウンド旅行客が求めるもの
栃木県は平成26年11月から平成27年3月にかけて東武日光駅前、JR日光駅前と日光エリアの宿泊施設において訪県外国人旅行者へのヒアリング調査を行いました。
調査によると、日光エリアへの訪問を決めた一番の目的は、日光東照宮をはじめとした「世界遺産観光」が64.2%で最も多いという結果になりました。
次に多かったのは「四季の風景鑑賞」、「景勝地観光(華厳の滝、戦場ヶ原など)」で、世界遺産と自然の美しさを楽しむことを目的に訪れる外国人が多いことがわかります。
そのなかでも、ヨーロッパからの観光客では「世界遺産観光」を目的とする人が74.8%と最も高い点が特徴的です。
長期休暇をとって訪れる人が多いヨーロッパからの観光客は、日本の伝統的なものや歴史的建造物を楽しみたいというコト消費の傾向が強いとも考えられます。
過去最高を更新!栃木県、2018年のインバウンド宿泊数を発表
目次インバウンド宿泊数は過去最高全体の観光客入込数は増加、宿泊数は減少インバウンド宿泊数は過去最高栃木県は、5月23日、「2018年栃木県観光客入込数・宿泊数推定調査結果」を発表しました。なお、この調査の対象期間は、2018年1月1日から12月31日までの1年間。県は、市町村からの報告に基づいて分類集計しました。▲2018年栃木県観光客入込数・宿泊数推定調査結果(イメージ)全体の観光客入込数は増加、宿泊数は減少これまでのインバウンド宿泊数は、2013年が12万6,000人、2014年は14...
栃木県のインバウンド課題
訪県外国人旅行者へのヒアリング調査等から、栃木県の主なインバウンド課題は「宿泊客数を伸ばすこと」「消費単価を伸ばすこと」「交通機関の見直し」の3つであることがわかります。
宿泊客数の伸び悩み
日光で行った調査では、日光に宿泊する観光客の割合は47.2%、日帰り客の割合は52.8%とほぼ同数でした。
地域別では東アジアのみ宿泊客が日帰り客を上回り、東南アジア、アメリカ・オセアニア、ヨーロッパでは、日帰り客が宿泊客の割合を上回りました。
日光以外に宿泊する地域としては、94.9%の人が東京と回答しています。栃木は東京からのアクセスが良く、東京から電車に約2時間乗れば世界遺産の日光東照宮にアクセスできる点は訪問者数が伸びる要素としては大きなメリットです。
しかし、アクセスが良く日帰り旅行も可能であることから、宿泊客の獲得にはデメリットにもなっています。
栃木県では「東京を訪れる多くの外国人観光客を栃木県に誘致し、宿泊に繋げていくための戦略的な情報発信」を海外誘客の強化に向けて目指すとしています。
消費単価の伸び悩み
東京からのアクセスが良いことは、観光客の消費単価にも影響します。
外国人旅行者は栃木県へ日光東照宮や周辺の施設を目当てに訪れますが、宿泊せずに日帰りを選ぶ観光客が多くなっています。
宿泊費は観光客が現地で消費する額として大きな割合を占めるため、日帰り客の割合が多い栃木県では消費単価が伸び悩むことに繋がります。
日光東照宮を目当てに訪れた観光客を、どのように周辺の観光施設へ誘致できるかが消費単価を伸ばすポイントといえます。
交通機関の見直し
外国人観光客が急増すると、地域の公共交通機関を利用するため住民の通学・通勤などの日常生活に支障が出るオーバーツーリズムの問題が出てきます。
これを解消する仕組みとして参考にしたいのが、主にイギリスなどの観光立国にある「Hop on Hop off Bus」です。
このバスは観光客向けの交通手段で、主要な観光スポットを巡回するケースが主流です。また、チケットを購入すると観光客は自分の観光したい場所で自由に乗り降りができます。
観光客にとってはポイントを押さえた観光ができ、地域住民は日常で使用する交通手段に不便が出ることがないため、両者にとってメリットのある仕組みです。
乗り降り自由「ホップオンバス」欧米豪&フィリピン市場に可能性:東京、大阪、京都で運行中
目次ホップオンバスは乗り降り自由が魅力の観光バス初めて訪問する街ではホップオンバスが有効ホップオンバスは乗り降り自由が魅力の観光バスJTBは、1月15日、JTB訪日旅行重点15カ国調査2019の一環として、世界150都市で観光客に楽しまれている周遊バス「ホップオンバス」に焦点を当てた調査レポートを発表しました。日本国内では、インバウンドに特化した主力ホップオンバスのひとつ「スカイホップバス」が東京、大阪、京都で運行中。外国語対応も充実しているため、インバウンドに人気のアクティビティのひとつ...
栃木県のインバウンド事例
つづいて、栃木県が行っているインバウンド対策をご紹介します。
看板やウェブサイトの多言語対応はもちろんのこと、日本ではまだそれほど普及していないキャッシュレス化や、インフライトメディアの活用といった施策を通して消費の促進を図っています。
お賽銭の電子化
日光では、キャッシュレス化が進んでいます。日光東照宮の隣に位置する日光二荒山神社では、2018年10月からお賽銭をQRコード決済で支払うことができるサービスを開始しました。
中国で普及しているAlipayとWeChatPay、そしてPayPayの利用が可能で、外国人観光客の多くを占める中国人を中心に好評を博しています。
拝観料の自動券売機を導入したのは「輪王寺」です。クレジットカードやSuicaなどの交通系ICカードが利用でき、英語、中国語、フランス語など9ヶ国語に対応しています。
外国人をはじめとしたキャッシュレス決済のニーズから、今後もますます電子化が進むことが予想されます。
日光市の神社で"硬貨不要のお賽銭"がスタート!キャッシュレス対応がインバウンド誘客にも好影響
インバウンド対応の取り組みの1つとして活発化している、キャッシュレスサービスの拡充において、今後は大都市圏のみならず地方での需要拡大が予想されます。自国でキャッシュレス化が進む中国をはじめ、個人旅行客が増加していることを受け、さらなる消費拡大に向けた取り組みが重要となります。今回は、日本におけるキャッシュレスサービスの現状をふまえ、今後のインバウンドの受け入れ態勢強化に向けた、地方で実施されているキャッシュレスサービス強化への取り組みについて見ていきましょう。目次キャッシュレス決済の関心が...
インフライトメディアの活用
飛行機の機内誌のような機内の広告宣伝がインフライトメディアです。
近年ではLLCが広く普及していますが、LCCは短距離線が多いため、フルサービスのキャリアと比べると往々にしてエンターテイメントが充実していません。
そのため、オーディオやビデオで時間をつぶすことができない観光客は、機内誌に目を通す可能性が高くなっています。
このような特性を活かして、栃木へ就航するLCCの機内誌に観光スポットや特産物のPRを連載したところ、訪日外国人観光客が前年比の4倍になりました。
栃木県近郊へ訪れる外国人観光客にピンポイントで宣伝できるため、高い宣伝効果を発揮したと考えられます。
館内消費の促進:国籍別のツボをおさえた接客
栃木県といえば、鬼怒川温泉郷も有名です。
日光市にある喜怒川温泉ホテルでは、外国人観光客がどの国から来ているか国別で対応を変えることで、館内消費の増加に成功しています。
たとえば、台湾人は食事中にアルコール類を摂取しない傾向にあります。また、お土産もお饅頭などは好まず、キャラクターなどのグッズを購入する確率が高いので仕入れ数を変えるなどして対応します。
一方、アルコールを好むタイ人やマレーシア人が多く宿泊する場合はお酒の準備をしておきます。
外国人観光客とひとことで言っても、出身国で好みや求められるサービスが違います。
そのニーズを把握して事前に準備をすることで、難しいと言われる館内消費も促進することができるのです。
社会と連携したインバウンド対策
栃木県のインバウンド対策事例から、世界のトレンドや外国人観光客のニーズに合わせた対策が重要であることがわかります。
日本ではまだ遅れているキャッシュレス化は、中国では広く普及しています。それに対応して現金払いのみであった施設に電子マネーを取り入れたり、外国人観光客の国籍や文化に応じたインバウンド対策を行うことで、消費を促進することができます。
今後も、世界や社会の動向に目を向けて、それを柔軟にインバウンド対策に活かしていく姿勢が重要となるでしょう。
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