アフターコロナの観光市場、中国のケースから予測/インバウンド需要はいつ戻る?

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新型コロナウイルスの流行により、世界中で消費や旅行、人の流れなどに大きな変化が生まれています。

その中でも世界で初めて感染拡大が始まった中国では、世界に先がけて新型コロナウイルスの感染拡大を食い止め、徐々に人の動きや経済活動が回復しつつある様子がうかがえます。

しかし、武漢市では5月上旬に感染「第二波」と思われる兆候が出始め、感染拡大を食い止めるべく10日間で武漢市民全員をPCR検査するという空前の規模の対策が行われました。

今回の記事では、このような中国の現状を人の流れ、消費動向、旅行、政治などの角度から紹介し、訪日中国人観光客がいつ戻ってくるのか、訪日中国人観光客のニーズがコロナ以前とどのように変化していくかを考察します。


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新型コロナ収束期を迎えつつある中国のトレンド

中国では、3月下旬から4月上旬にかけて新型コロナウイルスの感染源地であるといわれる湖北省における都市封鎖が解除され、5月下旬現在では経済活動が回復しつつあります。

しかし、武漢市では「第二波」を予感させるような兆候も見られたことから、依然として予断を許さない状況ともいえるでしょう。

新型コロナウイルスの収束期を迎えつつある中国の現状について、様々な側面から見た中国の現在をお伝えします。

SNS:外出制限解除後、「ピクニック」が人気に

外出制限が解除された中国では、人々は徐々に外出をするようになりました。

しかし、「コロナが完全に収束した」とは言い切れない中で旅行など生活範囲外の場所にに出かけることをためらう人も多いようです。

こうした事情から、現在中国では公園などの公共の場所でのピクニックが流行しています。

今年4月ごろから中国のSNS「小红书(レッド)」に、ピクニックの様子を投稿する若い中国人女性の姿が目立つようになりました。

現在同SNSでは、4.4万人以上の「#都市ピクニック計画」というハッシュタグのついた投稿が寄せられ、2,196万以上の閲覧数があります。

また、中国最大級のECサイト「淘宝(タオバオ)」では、このようなニーズに応えて、レジャーシートや竹かごなどのピクニック用品が多く出品され、その売り上げは過去最高のものとなっています。

消費動向:自家用車、生活家電の売り上げに伸び

現在の中国の消費動向は、新型コロナウイルスの感染拡大と深く結びついています。アフターコロナの中国では、自家用車や生活家電が売り上げを伸ばしています。

現在、中国の新車販売台数は売上が前年比8割減と大きく落ち込んだ2月と比べて急速なV字回復をみせており、中国にある4つのトヨタの自動車工場もフル稼働で活動を再開しています。

その理由としては、人々が新型コロナウイルスの影響で公共交通機関の利用を避けるようになったことが挙げられます。感染への警戒感から、外出時の人との接触を極力抑えるために「マイカー」という移動手段を選ぶ人が増加しました。

また、5月5日に阿里巴巴アリババ)が発表した「アリババ2020年メーデー連休消費外出トレンド報告」では、自宅での生活を充実させるための消費が活発であったことがわかりました。

例えば、淘宝天猫における生活家電の売上高は、前年と比べ196%増加したと報告されています。他にも調理器具や内装の材料などにも大幅な売り上げ増加がみられています。

このようなことから、アフターコロナの中国においても人々の感染への警戒感は依然として高く、人との接触を避けるためのアイテムや自宅での時間を充実させるアイテムが人気であることがわかります。

旅行:「少人数・短期・近距離」がトレンド

旅行市場においても、中国では新たなトレンドや動きがみられています。

中国に本社をもつ世界最大級のオンライン旅行会社である「Trip.com」は、4月23日に発表したトレンドレポートで、5月1日から5日にかけてのメーデー連休において中国の国内旅行の予約数が4月上旬に比べて大幅に増加したことを発表しました。

このことから、中国での国内旅行の需要が徐々に回復傾向であることがわかります。

また、Trip.comのグループ旅行の予約プラットフォームでは、少人数(3〜6人)、短期間(3~4日間)、レンタカーとツアーガイドを使った地域密着型のグループツアーの予約数が急増しており、「少人数・短期・近距離」の旅行スタイルが新たなトレンドとなっています。

中国では、外出制限が緩和され旅行需要が回復しつつある一方で、新型コロナウイルスの感染防止を意識した旅行形態が人気となっています。

新型コロナで「少人数・短期・近距離」が人気に?5月1日からの中国連休は国内旅行の予約が増加:Trip.comが予約状況を発表

毎年多くの人が行楽や旅行に出かけるゴールデンウィークですが、今年はウイルスの感染拡大を防ぐための「ステイホーム週間」として、旅行や帰省の自粛が呼びかけられています。一方で日本のゴールデンウィークと同時期に長期連休がある中国は、感染拡大防止のための移動規制が緩和されてきたとあり、旅行の機運も高まっているようです。中国に本社を構える世界最大級のオンライン旅行会社・Trip.comグループが発表するレポートでは、旅行商品の販売数の増加が伝えられています。目次メーデー連休の商品販売、4月の清明節と...

政治:「新型インフラ」に注目集まる

新型コロナウイルスは、民間の消費動向だけでなく、政府の方針にも大きな影響を及ぼしています。

感染拡大防止の観点から、現在中国各地では「健康コード」とよばれるサービスが導入されています。健康コードとはスマートフォン上の専用アプリに個人情報や新型コロナウイルスに関して特筆すべき滞在歴や接触歴を事前に登録することで得られるコードです。

健康コードは「赤・黄・緑」の3種類があり、健康状態に問題が無いと判断された場合、緑色の健康コードが付与されます。

そして、このコードが、公共交通機関の利用や公共施設やショッピングモールなどへ出入りの際の「通行許可証」となります。

また、5月22日に約3か月遅れで開幕した全国人民代表大会(全人代)では、5GやAIなどを活用した「新型インフラ」の設備を強化することが表明されました。新型コロナウイルスで急激に悪化した経済への景気対策のひとつとして中国各地での「新型インフラ」への投資が進んでいます。

武漢市で「第二波」?大規模検査を実施

武漢市内の集合住宅地では、ロックダウン解除後の5月上旬に再びクラスターが観測されたことから、「10日間で武漢市民全員をPCR検査する」という対策を立案し、実行に移しています。

武漢市民の人口は約1,100万人であり、検査済みの人を差し引いても1日に100万人近い人数を検査しなければなりません。

この大規模な検査に対して、一部の感染症専門家からは疑問の声が上がっています。実際に武漢市では検査のために並ぶ長蛇の列ができ、こうした現象が感染拡大を助長してしまうのではないかという意見もあるなか、当局では徹底的な検査を断行しています。

訪日中国人はいつ戻る?「安全」キーワードに

これまで、中国国内でのアフターコロナの動きを紹介しました。では、中国からのインバウンドはいつ戻ってくるのでしょうか。

国外から中国国内への移動については、中国政府は現在、韓国に対してビジネス目的での入国を認めています。

日本に対しても、新型コロナウイルスへの感染を調べる検査での陰性を条件として、段階的に入国制限を緩和するように打診しており、徐々に国際的な移動を正常化しようとする動きがみられています。

また、アジア向けの日本紹介メディア『FUN! JAPAN』を運営する株式会社Fun Japan Communicationsが4月に日本好きの外国人を対象に行った「新型コロナウイルスによる訪日旅行への影響に関する調査」からは、中国の日本への旅行に対する姿勢が分かります。

「訪日旅行が安全であると判断出来たら日本に行きたいですか?」という質問に対し、「はい」と回答した中国人は66%という結果になりました。これはタイや台湾など他のアジア諸国においては90%以上の人が「はい」と答えていることを考えると、やや低い比率となっています。

しかし、「安全であると判断してからいつ頃日本に行きたいですか?」という質問に対して、中国の回答は「1~3か月以内」27%、「3~6か月以内」30%という結果でした。

以上の結果から、新型コロナウイルスが収束してから「日本に行きたい」と考える人の割合は他のアジア諸国に比べて低いものの、「日本に行きたい」と考えている人に限れば、比較的早い時期に訪日旅行に踏み切る人が多いと考えられます。

コロナ禍で消費行動や意識の変化が明らかに

中国の現状は徐々に経済活動は回復しているものの、人々の感染に対する警戒感は依然として高く、人々の移動手段や休暇の過ごし方、旅行形態などは、なるべく「人との接触を避ける」ことに重点がおかれていることが分かりました。

緊急事態宣言が段階的に解除されている日本においても、これからこのような生活スタイルや旅行形態が主流となっていく可能性があります。

また訪日旅行については、中国ほど厳しいコロナ対策が行われていない日本への旅行を警戒する人が多い一方で、訪日旅行に積極的な姿勢を示す人たちはコロナ収束後、約半年以内と早い段階で日本を訪れる可能性があります。

直近では、毎年多くの中国人が旅行にでかける大型連休である国慶節が10月にあります。この連休で日本を訪れる可能性がある中国人観光客にあわせ今できるインバウンド対策の準備を進めていくことが大切といえます。


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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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