ミスタードーナツは、アメリカ発祥のドーナツチェーンでありながら日本で成功し、今や日本がメイン市場となっている珍しい例です。
アメリカ市場では兄弟企業ともいえるダンキンドーナツと熾烈な市場競争を繰り広げたのち吸収されたため、アメリカでミスタードーナツを見かけることは少なくなりました。
この記事ではミスタードーナツとダンキンドーナツそれぞれの紹介と関係性、そして両社が目指す新しいドーナツチェーン店の在り方について紹介します。
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ミスタードーナツの概要
ミスタードーナツはアメリカ発祥のドーナツチェーン店で、日本では清掃業大手のダスキンが運営しています。
日本ではドーナツといえばミスタードーナツといえるほど市場でのイメージが強く、日本市場で成功したアメリカ発のブランドです。
アメリカ発のドーナツチェーン店
ミスタードーナツは、日本で1,000店舗を展開するドーナツチェーン店です。
アメリカで有名なドーナツチェーンであるダンキンドーナツの共同経営者が1956年に独立開業したのが始まりで、現在はアメリカに存在したミスタードーナツはダンキンドーナツに吸収合併されてしまいました。
日本市場では1971年に大阪府の箕面市に1号店が開店し、清掃業で著名なダスキンが運営をしています。進出当時としては珍しかった24時間営業をしたことで話題となりました。
日本人の口に合うドーナツの開発や日本市場向けのプロモーションに力を入れ、アメリカ市場とは対照的に日本市場ではミスタードーナツ「一強」状態になっています。
ドーナツ以外のメニューも始まる
ミスタードーナツはドーナツ専門店でありますが、近年はドーナツ以外のメニューの販売にも取り組んでいます。「ミスドゴハン」と称して、朝食や軽食などよりしっかりとした食事を店舗で提供しています。
ドーナツは市場からおやつとして捉えらえているため、売り上げがどうしても午後3時ごろに集中する傾向にありました。
本格的な食事を提供することで、ドーナツのピークタイム以外での売り上げの向上を図る狙いがあります。ドリンクの開発にも力を入れ、昨年には社会的ブームとなったタピオカドリンクの販売も開始しました。
さまざまなコラボレーション商品や環境への取り組みも
2017年には「いいことあるぞ Mister Donut(ミスタードーナツ)」というスローガンを打ち出し、コラボレーション商品の開発と販売の強化に取り組んでいます。
最高水準の素材と技術を持った企業やブランドとコラボレーション商品を生み出し、顧客に「最高のおいしさ・価値」と「ワクワクする気持ち」を提供することを目指しています。
フランスの有名パティシエであるピエール・エルメとのコラボレーションや世界でも人気のポケモンとのコラボレーション商品が実現しました。
また、近年注目されている環境保護の観点から、店舗でのプラスチックストローとレジ袋の配布を終了しました。必要な顧客に対しては有料で提供し、必要以上に環境への負荷がかからない地球に優しい店舗運営を目指しています。
アメリカの有名ドーナツチェーン「ダンキン」
ミスタードーナツと兄弟会社ともいえるダンキンドーナツはアメリカでドーナツチェーンとして圧倒的なシェアを誇ります。
しかし、近年の社会変化を受けてドーナツに頼らないビジネススタイルへの転換を始めています。
「ダンキン」と「ミスタードーナツ」の関係
ミスタードーナツとダンキンドーナツはともにアメリカで創業した企業であり、創業者は親族関係にありました。
ミスタードーナツの創業者はダンキンドーナツで親族とともに経営に携わっていましたが、経営方針の違いからダンキンドーナツから独立し、ミスタードーナツを設立したという経緯があります。
アメリカにおけるミスタードーナツは、1999年にダンキンドーナツを運営するアメリカの食品メーカーであるアライド・リヨンズに買収され、ほぼ全ての店舗がダンキンドーナツへと転換されています。
アメリカではライバルであるミスタードーナツを傘下に収めるほどの成功を収めたダンキンドーナツですが、日本市場では苦戦しました。
1970年には日本のセゾングループと提携し、初の海外店舗を日本に展開しましたが業績は芳しくなく、1998年には日本市場から撤退しています。
「ダンキンドーナツ」から「ダンキン」へ
現在、ダンキンドーナツは大きなブランド戦略の転換期にあります。
2019年には「ダンキンドーナツ」から「ドーナツ」の文字を消し、「ダンキン」のみとする計画を公表しました。
これまでのドーナツ主体の店舗形態から、アメリカ市場で需要の高いコーヒーなどの飲料を主体として、ドーナツに限らずファストフード全般を扱っていく店舗に変えていく方針を打ち出しました。
売り上げをドーナツに頼らないビジネスモデルを目指していく姿勢は、ミスドゴハンを始めた日本のミスタードーナツと同じ方向性であるといえるでしょう。
日本と違った新メニュー
日本ではおやつとしてのイメージが強いドーナツですが、アメリカではコーヒーと共に食される朝食という立ち位置であり、根強い人気を誇ります。しかし、近年の健康志向の高まりで高カロリーのドーナツは敬遠される傾向にあります。
このような社会の潮流の変化を受け、ダンキンドーナツではドーナツではない朝食メニューを強化しています。
例として、野菜を中心に卵白オムレツを作りチーズと共にバンズに挟んだ「ベジ・エッグ・ホワイト」などがメニューに登場しており、健康志向の顧客のニーズに応えています。
高まるアメリカ人の健康意識
アメリカでは健康意識と環境保護への関心が高まり、ベジタリアンやヴィーガンと呼ばれる菜食中心の人が増えています。
このような顧客層の取り込みは食品業界にとって無視できない要素になりつつあります。
ベジタリアンやヴィーガンの人口が増えている
「ヴィーガン(Vegan)」といった菜食を徹底している人や、「ベジタリアン(Vegitalian)」と呼ばれる菜食中心で乳製品や卵だけは摂取する人がアメリカでは増加しています。
2009年の時点でヴィーガンの人口はアメリカの1%とされていましたが、2017年には6%までに増加しました。
このような菜食中心で生活する人はアメリカにおよそ2,000万人いるとされ、今後も食品や外食産業から見ると無視できない存在になっていくでしょう。
ダンキンはビヨンド・ミートを使用したメニューを考案
ダンキンは、植物由来のタンパク質で代替肉を開発製造するビヨンド・ミート(Beyond Meat)社のソーセージを使用した朝食メニューを販売しています。
ビヨンド・ミートは主にエンドウ豆の植物由来のたんぱく質を原料として、プロテインの純度を高めるなどして品質をより実際の肉に近づけています。
ビヨンド・ミートのホームページによれば、同社のバーガーは従来の米国産牛肉バーガーよりも99%の水の使用の削減と、90%の温室効果ガス排出削減ができるとしています。こうした代替肉を使用していることから、ダンキンは環境負荷の高い畜産製品からの転換を意識しているといえます。
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アメリカ人の高まる健康意識をインバウンド対策に
ミスタードーナツはアメリカ発祥のドーナツチェーンとして日本市場で成功しました。しかし、本場のアメリカ市場ではライバルのダンキンドーナツに敗れ、買収されるという憂き目に遭っています。
アメリカで市場競争に勝利したダンキンドーナツですが、近年の健康志向や環境保護意識の高まりを受けて、ドーナツのみでのビジネスは難しくなっています。
日本のミスタードーナツでも同様の傾向がみられ、ドーナツ以外の食事メニューの強化に務めています。
アメリカ人の健康意識の高まりを考慮したメニュー開発は、今後のインバウンド対策の参考にもなるでしょう。
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