台湾は、新型コロナウイルスの感染拡大をいち早く抑えたモデルケースの1つとして世界中から称賛されました。
一方で、台湾が人道支援でマスクを寄付した際に、海外メディアが「中国寄付のマスク到着」などと誤って報じたことから、多くの台湾市民が落胆したといいます。こうした出来事を経て、約20年ぶりに「台湾正名運動」という国名変更を求める動きが活発化しています。
本記事では、今回の「台湾正名運動」や台湾へ移住希望の香港人に対する支援策をふまえ、日本のインバウンドに欠かせない中国・台湾・香港市場の関係について解説します。
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台湾の航空会社「China」から「Taiwan」へ
台湾では、新型コロナウイルスの感染拡大を早期に抑えることに成功したため、友好国に対しマスクを1,000万枚以上寄付する人道支援を行いました。その様子は海外メディアでも報道されましたが、「中華人民共和国(中国)の輸送機」「中国寄付のマスク到着」と行った誤った報道も少なくありませんでした。
原因には、マスクを空輸した台湾のフラッグキャリア「中華航空」の機体に「CHINA AIRLINES」の文字があることが考えられます。
実際に中国のナショナルフラッグキャリアは「中国国際航空(Air China)」であることから、外国人には区別しづらいのも事実です。
このような誤認を受け、台湾立法院(国会)では、「中華」航空を「台湾」航空に、「China Airlines」を「Taiwan Airlines」に変更すべきという案が提起されました。台湾の林佳龍(リン・ジァロン)交通部長も改名に理解を示していることから、今後台湾政府や中華航空は改名の是非について検討していくとしています。
パスポートからも「CHINA」なくしたい台湾人
2020年4月にも、台湾ではパスポートの表紙にある「CHINA」の文字を削除すべきだとの意見が出ていました。台湾は憲法でその公称を「中華民国」と定めており、パスポートにはこの漢字と英語の「REPUBLIC OF CHINA」、下半分に「TAIWAN」の文字がデザインされています。
欧米などアジアの文化や歴史になじみのない地域では、台湾パスポートのCHINAという単語から、現地在住者に中国人であると誤解されることも珍しくありません。さらには新型コロナウイルスの発生地から来たとして差別的な扱いをされることもあったそうです。
台湾人が考える、自分の帰属する「国」とは
実際のところ台湾人は、自分のことを何人だと考えるのでしょうか。2019年の終わりに台湾のメディアが行った調査では、自分を何人かと思うかとの質問に対し「台湾人だと思う」と回答した割合は全体で6割ですが、20-29歳では8割を超えました。
回答者の中には、自分を「中国人だと思う」人も各年代で数%~10%います。また「台湾人であり中国人であると思う」と回答する人は30代以上では各年代で3割近くになります。この回答での「中国人」は「中華人民共和国」ではなく、台湾パスポートに書かれている「中華民国」の人を意味しています。
最近では、台湾生まれの人が増加し、2000年からは長年政府に禁止されていた台湾語を小学校の授業に取り入れるなど社会的な変化が起こっています。特に1990年代以降に教育を受けた「天然独」といわれる20代から30代の台湾人は、台湾が独立しているように感じる環境で育ってきたため、自然と「台湾は台湾」と考えるようになったとしています。
台湾人としてのアイデンティティが高まるにつれ、国名も含め中国と台湾を区別しようとする傾向は強まっているといえるでしょう。
![▲[台湾の雑誌社、天下雑誌による調査]:天下雑誌 自分を台湾人と思うか、中国人と思うかの年代別回答割合](https://static.honichi.com/uploads/editor_upload_image/image/6930/main_taiwan.png?auto=format)
チャイニーズタイペイとは
チャイニーズタイペイ(Chinese Taipei、中華台北)とは、オリンピックをはじめとした国際スポーツ大会や、国際機関の会合など、国際的な場で用いられる台湾(中華民国)を指す呼称です。同様に中国と文化的、政治的に深い関係を持つ香港も、オリンピックには中国とは別の団体として参加しています。このような慣習は、中国と台湾、香港の歴史と深く結びついています。台湾や香港、そしてマカオの表記については、国際社会で定められた方式に従わないと、中国政府だけでなく中国市場からの批判の対象となります。近年...
台湾、香港からの移民受け入れを決意:人材確保、経済発展を視野に
台湾は6月18日、台湾に移住希望の香港人を受け入れる窓口を7月に開設すると発表しました。現在香港では、中国が制定を決めた「香港国家安全法」により香港への統制を強める姿勢を示していることから、台湾移住を希望する人が増加しています。
このような情勢を受け、台湾の蔡英文総統は5月、香港人の移住支援を行う姿勢を表明しました。台北市内に「台港服務交流弁公室」という事務所を設置し、香港人の台湾における滞在許可取得の手続きから住居と職探し・就学や生活に対する支援を行います。
香港からの移民受け入れは人道的支援に加え、香港の高度な専門人材や投資を呼び込み、台湾の経済発展につなげる狙いもあるようです。実際に上記の事務所では、香港からの移民による企業や投資も支援するほか、香港から移転を検討する海外企業の相談にも対応するとしています。
先月には、香港の著名俳優が、台湾へ移住することが報じられました。台湾の移住の専門窓口は、7月1日付で開設されるとのことです。
【香港デモ】またもや東アジアに激震:台湾が「香港の友人たち」の亡命受け入れを検討、中国は批判
香港デモの長期化を受け、台湾政府が香港のデモ参加者の亡命を受け入れたい考えを示していることが明らかになりました。中国の共産党当局は台湾政府の方針に反発し、依然として一触即発の状況が続いています。今回は、香港デモの経緯、台湾や日本の新たな動きをふまえ、インバウンドのリピーターが多い香港と台湾市場への今後の対応について見ていきます。目次香港デモのこれまでの展開を整理SNS上では応援の声あがる、中国工作員の動き報道も台湾は香港支援に新たな動き、中国が反発日本では香港の渡航先危険度を引き上げ「レベ...
中国・台湾・香港の関係性に注視し、各方面に配慮したインバウンドPRを
台湾と香港はインバウンドのリピーターが多いほか、中国は人口が多く日本ファンや潜在的ファンも多いと考えられます。どの市場も、インバウンドでは今後も無視できない存在です。
中国・台湾・香港の関係性の理解は、市場別にインバウンドPRを行う際に欠かせません。歴史的背景が複雑で政治情勢も変わりやすいため、常に最新動向を注視しインバウンド対策に反映していくことが必要になってきます。
特に台湾市場に向けてPRをする場合は、台湾と中国を混同するような表現は避け、台湾人のアイデンティティを尊重した表現が必要でしょう。
<参照>
COURRIER JAPON:台湾から「中国・China」を取り除け! コロナ誤解で“国名変更”の気運再燃
天下雑誌:天下2020獨家國情調查:台灣vs.中華民國 世代衝突,更勝南北
Newsweek:台湾、移住希望の香港人受け入れ窓口を7月に開設 就業や就学など支援
NHK:そもそもの話…台湾の人たちは自分を“何人”と思っているの?
日本経済新聞:台湾、香港からの移民促進へ専門窓口 人材引き寄せも
【7/3開催】宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」
インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。
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→宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」【7/3開催】
【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
<こんな方におすすめ>
- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
- 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
- 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
- インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。
この記事では、主に6月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
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→「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年6月後編】
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