チャイニーズタイペイ | オリンピック方式・台湾の国際的立ち位置・「国」表記トラブル・香港マカオの共通点・一国二制度

チャイニーズタイペイ(Chinese Taipei、中華台北)とは、オリンピックをはじめとした国際スポーツ大会や、国際機関の会合など、国際的な場で用いられる台湾(中華民国)を指す呼称です。

同様に中国と文化的、政治的に深い関係を持つ香港も、オリンピックには中国とは別の団体として参加しています。

このような慣習は、中国と台湾、香港の歴史と深く結びついています。

台湾や香港、そしてマカオの表記については、国際社会で定められた方式に従わないと、中国政府だけでなく中国市場からの批判の対象となります。近年では有名ブランドが謝罪をするなど、中国市場に進出する外資企業を悩ませているといえるでしょう。

中国と台湾、香港そしてマカオの関係性について正しく理解することは、増えるアジア圏のインバウンドへの正しい配慮につながります。

今回の記事では、台湾を「チャイニーズタイペイ」と表記する理由や、中国の台湾や香港そしてマカオに対する考え方、3つの地域の歴史について紹介します。


チャイニーズタイペイとは

2021年夏に開催される東京オリンピック・パラリンピックには、全206の国と地域が参加予定です。アジアからは44の国と地域が参加しますが、「中国」と「香港」は別で登録されているほか、台湾は「チャイニーズタイペイ」という聞き慣れない名前で登録されています。

チャイニーズタイペイとは、国際的なスポーツの大会や国際会議などの場で用いられる中華民国(台湾)の呼称です。台湾は現在、国際社会において正式な国家と認められておらず、中国は「台湾は中国の一部である」と主張しています。

オリンピック方式:国名、国旗を掲出しない

「中華民国」という名称は、こうした中国の主張と対立することになってしまいますが、チャイニーズタイペイは日本語では「中華台北」と書き表すことができるように、国としての名称ではないため問題はありません。

台湾は実際にこれまで、FIFAアジアカップ・FIBAアジアカップ2019・2019女子バレーボール国際親善試合・2016年国際会議「アジア太平洋の持続的成長に向けて」等にチャイニーズタイペイという名称で参加しました。

こうした際には、台湾は国旗である青天白日満地紅旗を使用しません。こうしたやり方は「オリンピック方式」と呼ばれ、国際競技大会や国際的民間組織での活動にも用いられています。

台湾を「国」として承認する国は少ない

「国」を正確な定義に基づいて解釈すると、一般的に住民・領土・主権(政府)があることに加え、他国からの承認が必要とされています。

日本は1972年の国交正常化で中国を承認した一方で、台湾とは外交関係を断絶しました。現在日本と台湾間における民間交流は非常に活発ですが、国交断絶時から台湾は、日本にとって「国」ではなくなったとされており、未承認国家と位置付けられています。世界には台湾を国として承認する国もありますが、多くはありません。

中国と香港は別のチームとして出場する

オリンピックに出場する香港選手団は、中国選手団としてではなく、イギリス領香港および中華人民共和国香港特別行政区の選手団として参加します。

1950年に「香港オリンピック委員会」が設立され、1951年に国際オリンピック委員会(IOC)に認められて以降、1952年より香港選手団としてオリンピックに参加しています。ただし、1999年には名称を「ホンコン・チャイナオリンピック委員会」へと変更しました。

台湾・香港・マカオは国ではない

中国と、台湾や香港の関係は、日本に生活し外交関係に特段関心を払っていない場合には、理解しづらいところがあります。

これまでに起きた、台湾や香港マカオの表記に関する問題について紹介します。

台湾・香港・マカオの表記に関する問題についてのTwitter投稿
▲Twitter投稿:編集部スクリーンショット

Twitter:台湾・香港・マカオの表記に関する問題についてのTwitter投稿(https://twitter.com/FumiharuKato/status/899662334389501952?ref_src=twsrc%5Etfw)

台湾は国ではなく「中国台湾」

中国国内では、台湾・香港マカオを中国であると同一視する主張が強いですが、空港では少し事情が異なります。中国と台湾・香港マカオ間は国際線と同じ扱いとなり、中国と台湾・香港マカオ間の移動には、出入国審査が必要です。

ただし、2018年4月には中国が世界の航空会社に「台湾」を「中国台湾」への表記変更を要求し、大きな話題となりました。

中国の航空行政を管轄する中国民用航空局(民航局)は航空会社44社に対し、「台湾を中国の一部」とする原則に反する表記を正すよう通達しました。表記変更を行わなければ、中国市場へのアクセスを規制するなどと揺さぶりをかけたこともあり、40の航空会社がこれに応じています。

日本の航空会社であるJALやANAは試行錯誤の末、中国・韓国・台湾を「東アジア」という括りにし、都市名のみの表記に変更しました。

アメリカン、デルタ、ユナイテッド、ハワイアンの米航空4社も、台湾の行き先を「高雄」「台北」といった都市表記のみに変更しています。

日系二社の対応に対し、複数の台湾研究者からは「日本の外交方針を十分に理解した最善の方法だった」といった声が寄せられたほか、他の航空会社からも「今後の対応の参考になるかもしれない」と評価されています。

香港・マカオ「国」表記で有名ブランドを中国が批判

2019年8月、イタリアの高級ブランド「ヴェルサーチ」が中国に進出した際に、香港や台湾の表記を巡り、相次ぎ謝罪する事態となりました。

同社が販売するTシャツのデザインとして「首都・国名」があり、例として「ニューヨーク・米国」「北京・中国」があったのですが、これらに並んで「香港・香港」「マカオ・マカオ」の表記がありました。

これに対し中国では「香港やマカオを独立した国のように表記している」などと批判が殺到したことから、同社は謝罪をし回収に踏み切っています。

アメリカのブランド「コーチ」もTシャツのデザインに問題があったとして、商品の回収を表明、日本の「アシックス」、フランスの「ジバンシィ」もサイト上の表記などを巡り、香港や台湾が独立した国のようにも見える表現があったとし、SNS上で謝罪しています。

中国で台湾は「台湾省」と認識されており、地図上の表記も同様です。こうした中国の認識を真っ向から否定するようなデザインであったことが、今回の謝罪につながった要因の1つとして考えられます。

台湾・香港・マカオと中国の歴史

正式には「中華民国」と呼ばれる台湾の歴史は、1912年に清朝が倒れ、中国大陸で「中華民国」が成立したときに遡ります。第二次世界大戦後は、蒋介石率いる中国国民党と毛沢東率いる中国共産党が対立したことから内戦が勃発し、1949年10月に中国共産党は「中華人民共和国」(現:中国)の建国を宣言しました。

蒋介石は最終的に台湾に逃れ台北を臨時首都としましたが、国連が中華人民共和国(中国)を承認したことで、 中華民国(台湾)は中国の代表ではなくなりました。

現在多くの国が中華人民共和国(中国)と国交を結んでいる一方で、中華民国(台湾)とは国交がないのが現状です。その結果、中華民国(台湾)はスポーツ大会や国際機関等では「チャイニーズタイペイ(中華台北)」を名乗るようになりました。

中国と台湾の関係は「二つの中国」

中国と台湾の関係を表す際に「二つの中国」と「一つの中国」という表現があります。

「二つの中国」とは、中国と台湾の政治的対立関係を表しており、「一つの中国」は「台湾はあくまで領土の一部である」という中国の認識を表す言葉です。

一方で台湾は民主主義政治であり、中国共産党とは一線を画す主権国家であると主張しています。

香港・マカオはイギリスから中国へ返還された地

香港はアヘン戦争の結果、1842年に締結された南京条約によりイギリスの植民地となっています。1984年9月、約2年間続いた中英交渉の結果、中英共同声明が発表されました。

英国のサッチャー首相は香港を返還することを望んでいませんでしたが、中国の鄧小平が中国からの水の供給停止や中国人民解放軍の武力行使を主張し、1997年に中国に香港を返還することとなりました。

マカオは16世紀初頭にポルトガル人が来航し、貿易やカトリック布教の拠点とされました。

1849年に植民地化されましたが、1966年のマカオ暴動を経て1976年にはマカオを特別領に変更するなど支配が弱まり、1999年に中国へ返還されました。

香港・マカオの「一国二制度」

現在、マカオと香港は中国の特別行政区とされており、「一国二制度」が採用されています。

「一国二制度」とは、中国の一部である香港に、中国本土とは異なる制度を適用する制度です。香港は特別行政区として独自の行政、立法、司法権を有し、中国本土では認められない言論・集会の自由や、通貨やパスポートの発行権を持っています。一方で中国は、憲法にあたる香港基本法の解釈・改正権や政府高官の任命権を握るなど、香港をコントロールする仕組みも持っているのも現状です。

台湾・香港・マカオの表記には工夫が必要

日本人からすると、台湾や香港は一つの「国」のように感じるかもしれません。実際に司法、立法、行政の面で独立した機構を持つ台湾と香港は、ある文脈では「国」と同等に捉えられる場合もあります。

現実には、中国政府の確固たる方針とそれらに従う国際社会の多数派により、こうした地域は国として認められていないのが現状です。JALやANAの中国向けサイトでは「中国台湾」その他では「台湾」としており、こうした「使い分け」は両者に評価されているといえるでしょう。

アジア圏からの旅行者が非常に多い日本では、こうした背景を踏まえ、台湾を表記する際に「国」であるとわざわざ主張することのないよう注意し、同時に「中国の一部」であることを必要以上に強調しない態度が必要です。

<参照>

・東京都教育委員会:大会参加予定国・地域情報

・東洋経済ONLINE:JALとANA、「台湾表記」問題で見せた強い意地

・日本経済新聞:中国進出の有名ブランド、相次ぎ謝罪 香港表記巡り

・NHK:台湾ってどうして国じゃないの?

・ROCKET NEWS 24:【素朴な疑問】スポーツの試合ではどうして「台湾」のことを「チャイニーズタイペイ」と呼ぶの?台湾人はどう思っているの?

・ANANニュース:緊張高まる「二つの中国」日本はどう向き合うべき?

・日本経済新聞:一国二制度とは 中国、2047年まで香港高度自治を維持

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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