中国は1978年から始まった改革開放以降、経済が急成長し、2011年にGDPが日本を抜いて世界2位となりました。
中国の経済成長とともに中国企業による先進国企業のM&Aの動きが加速し、日本においてもラオックス、レナウン、三洋アクア、東芝ライフスタイル、パイオニアといった誰でも名を知っている会社が次々と買収され、自動車部品やアパレル、家電製造など幅広い業界で中国資本の介入が見られます。
日本では経済構造の転換や景気の後退により、上場企業でも早期・希望退職を実施しているところもあります。コロナショックにより複数の企業での同様の取り組みが伝えられており、こうした企業を対象に中国企業の買収が仕掛けられる可能性もゼロではないでしょう。
これまで、中国企業の傘下に入ったあと、NECパーソナルプロダクツや三洋アクア、東芝ライフスタイルは親会社の強みをいかして国内外のシェアを拡大し、黒字転換に成功しました。一方で、経営の立て直しがうまくいかず最後は倒産してしまう会社存在します。
中国企業に買収された日本企業についてまとめます。
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中国資本によって買収された日本企業の一覧
以下は、編集部が独自に調査した「中国資本によって買収された日本企業」の一覧です。
買収された日本企業の名称 | 買収された日本企業の業種 | 買収時期 | 買収額 現地額(日本円) | 買収先の中国企業の名称 | 買収先の中国企業の業種 |
---|---|---|---|---|---|
レナウン | アパレル | 2010 | 4,400万ドル(約47億円) | 山東如意科技集団 | 繊維製造 |
山水電気 | AV機器製造 | 1991 | 不明 | 善美集団 | 投資集団 |
赤井電機 | オーディオ機器製造 | 1994 | 不明 | 善美集団 | 投資集団 |
ナカミチ | オーディオ機器製造 | 1997 | 不明 | 善美集団 | 投資集団 |
池貝 | 産業機械製造 | 2004 | 4億9,000万円 | 上海電気集団 | 産業機械製造 |
ラオックス | 家電量販店 | 2009 | 5,755万元(8億円) | 蘇寧電器(現蘇寧易購集団) | 家電量販店 |
オギハラ(金型工場) | 自動車製造 | 2010 | 非公表 | BYD(比亜迪汽車) | 自動車製造 |
本間ゴルフ | ゴルフ用具製造 | 2010 | 1億ドル(約107億円) | 上海奔騰企業 | 家電製造 |
三洋アクア | 家電製造 | 2011 | 100億円 | 海爾集団(ハイアール) | 家電製造 |
NECパーソナルプロダクツ(PC部門) | PC製造 | 2011 | 200億円 | Lenovo(聯想集団) | PC製造 |
東芝ライフスタイル | 家電製造 | 2016 | 537億円 | 美的集団(マイディア) | 家電製造 |
富士通クライアントコンピューティング | PC製造 | 2018 | 178億5,000万円 | Lenovo(聯想集団) | PC製造 |
タカタ(自動車用安全部品事業) | 自動車用安全部品製造 | 2018 | 15億8,800万ドル(約1,700億円) | Key Safety Systems(現Joyson Safety Systems) | 自動車用安全部品製造 |
パイオニア | オーディオ機器製造 | 2019 | 1,020億円 | Baring Private Equity Asia | 投資集団 |
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オーディオ御三家・山水電気、親会社の連続倒産で消滅
かつて国産オーディオの「御三家」として知られた山水電気は高度経済成長期のオーディオブームで高い人気を博しました。
しかし、デジタル化の波にうまく乗れず、主力製品以外の商品の売れ行きが伸びなかったことで、1980年代後半以降から経営が悪化し、一時期英国企業の資本を受けたものの、1990年には経営が破綻しました。その後、1991年から香港の投資ファンドである善美集団の傘下企業となります。
ところが、1999年に善美集団が倒産し、次に引き継がれた香港の投資ファンドである嘉域集団も2011年に倒産しました。
中国資本に資金援助を頼った山水電気は、ビジネスモデルの転換がうまくいかず、次から次へと親会社の倒産により破綻に追い込まれ、2012年に民事再生法の適用を申請し、実質破綻状態にありました。
その後もスポンサー企業が見つからず資金繰りのめどが立たなくなったため、2014年破産手続きを開始し、2018年には法人格が消滅しています。
現在、SANSUIの商標権はドウシシャという会社が取得しホームオーディオ製品を販売していますが、山水電気とは無関係です。
また、音響・映像機器メーカーである赤井電機は山水電気と同じく香港の善美集団に買収されましたが、再建がうまくいかず、同社の倒産に伴い2000年に民事再生法を申請して倒産しました。
「爆買い」で一世を風靡したラオックス、中国観光客依存で社員半数削減へ
家電量販店のラオックスは、経営難から2009年に中国の大手家電量販店を運営する蘇寧電器(現蘇寧易購集団)に買収され、中国観光客向け免税店を中心に展開しました。
2014年に中国人団体客による爆買いブームが起こり、業績は浮上し始め、2015年の売上高は前年と比べ8割増で最終利益80億円に達しました。
しかし、訪日中国人消費嗜好の変化による客単価の下落と中国政府の「爆買い規制」で、翌年の売上高が627億円に急落しました。2017年から2019年まで売上高が回復し大きく伸ばしたものの、2018年と2019年2年連続赤字が続いています。
ラオックスは中国人観光客頼みの経営から脱却し、赤字を止めるべく、免税店で日本のグルメや日本文化を楽しめる体験型消費サービスを提供したり、中国のECサイトに出店したり、国内向けの婦人靴や飲食店事業を展開したりするなどの多角化経営を推進しています。
ただし、越境ECなどのグローバル事業と生活・ファッション事業はまだ黒字化しておらず、現状は免税店の一本柱しかなく、免税店顧客のうち8〜9割を中国人観光客が占めている状態にあります。
さらに、新型コロナウイルス感染拡大で中国人観光客が激減し、店舗の閉鎖や休業が相次ぎ、2020年4月に店舗の300人に対しパート・アルバイト全員を雇い止めにし、6月に正社員と契約対象を対象に、全従業員の約50%で250人程度の希望退職を募ると発表しました。
新型コロナでインバウンド市場はどうなる?苦境と課題、この先の打ち手
新型コロナウイルスによる経済への影響は「コロナショック」とも呼ばれ、自粛ムードの広がりとともにその影響は大きく広がっています。そんなコロナショックでも大きく影響を受けているのが
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レナウン、親会社から救済得られず解体の可能性も
東証1部上場のかつてアパレルの名門、レナウンはバブル崩壊後30年近業績が低迷し、2010年に中国の繊維会社大手、山東如意に買収されました。
しかし、買収後業績が改善できず、さらに親会社山東如意のグループ会社・恒成国際に対する売掛金53億円の回収延滞が発生し、巨額赤字に陥りました。
親会社でこの取引で恒成国際の連帯保証社になった山東如意に支払いを請求しましたが、山東如意自身も大型のM&Aを繰り返した結果資金難で、債務保証を行うことができないままでした。
新型コロナウイルスの影響で業績が一層悪化し、親会社から救済を得られないレナウンは2020年5月に民事再生手続きに入りました。
現在、再建に向けたスポンサー企業を選定していることが一部の報道によって明らかにされています。しかし事業の先行きは未だ不透明であり、難航した場合には解体を迫られる可能性もあります。
中国資本の光と影
前掲した通りNECパーソナルプロダクツや三洋アクア、東芝ライフスタイルなど、悪化した業績を改善し、順調に売上を伸ばしたケースがもちろんあります。
中国資本傘下に入ることで、巨額の資金や中国市場への販路を確保できるケース、企業文化が変容しパフォーマンスが高まった場合など様々でしょう。
その一方で、親会社である中国企業の方針や、政府の影響下にある中国市場の急な方針転換に振り回されることも少なくありません。
グローバル化した現在と日本社会の展望を見れば、今後も海外資本との提携や合併などが続くと考えられます。
企業の存続を賭けた選択肢として、海外資本を受け入れることが必要となる一方で、企業全体で変化をどのように受け止めていくのかのかじ取り能力も問われていくといえるのかもしれません。
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【7/3開催】宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」
インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。
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【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
<こんな方におすすめ>
- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
- 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
- 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
- インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
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