中国の恩売り「コロナ外交」と企業買収に高まる欧州の警戒:日本への「経済侵攻」のリスクとは

公開日:2020年05月20日

新型コロナウイルスの感染が世界中で拡大しており、感染者は全世界で481万人となっています。(2020年5月19日現在)

世界で最初に感染拡大が起こった中国では、局地的な第二波の発生可能性について報じられているものの、世界に先駆けて収束に向かっていることが伝えられています。

4月初頭には、感染拡大にあえぐヨーロッパ各国の企業の株価が割安となっている事態と、中国企業による積極的な買収の動きが伝えられています。

本記事では、中国企業が現在欧州企業に目を付けるねらいや、それに対するヨーロッパ諸国の反応、日本への影響などを解説します。

コロナ騒動を切り抜けた中国資本が、世界の株式市場で大暴れ

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の中、事態が徐々に収束する中国は、大きな打撃を受けているヨーロッパ企業の買収に乗り出しました。

新型コロナウイルスで経済活動の自粛を余儀なくされた各国社会の動きを受け、ヨーロッパの上場企業の時価総額も下落しました。中国企業は、こうした企業に対するM&A提案を積極的に行っています。

世界第二位の経済大国、中国のこれまでの成長

ここ数年、中国のIT企業はアメリカのGAFAに引けを取らない勢いで急成長してきました。

2017年11月には、BAT(中国三大IT企業)のひとつであるテンセント(騰訊)が時価総額で5,230億ドル(約56兆1,098億円)となり、世界5大企業の仲間入りを果たし、アメリカでは大きな話題となりました。

このほかにも、アリババ(阿里巴巴)、バイドゥ(百度)、ネットイース(網易)、美団点評、JD.com(京東/ジンドン)などが2019年の「世界のインターネット業界上場企業トップ30」にランクインしており、中国はアメリカに次ぐ世界第二位の経済大国として存在感を示しています。

中国企業の資本の大きさを示すひとつの例としてM&A(企業の合併や買収)があります。

代表的な例では、2016年にテンセントがソフトバンクグループの傘下にあったフィンランドのゲーム会社であるスーパーセルを約9,000億円で買収しました。

このように、中国は特にIT分野での成長がめざましく、世界市場のなかでも非常に重要な立ち位置を占めています。

コロナで弱化する欧州企業、自衛の動きも

このような状況下で中国企業が目を付けたのは、新型コロナウイルスの感染拡大により大きな影響を受けているヨーロッパ各国の企業です。

また、中国企業以外にも、サウジアラビアの政府系ファンドであるパブリック・インベストメント・ファンドはこの事態の中でヨーロッパの石油会社4社の株式を取得する動きを見せています。 

この動きに対抗し、ヨーロッパ各国も国をあげて様々な措置をとっています。

イタリアでは、4月6日に、自国企業の買収を阻止するために政府の権力(ゴールデンパワー)を強化する方針を示しました。銀行や保険、ヘルスケアなど様々な業種が適用の対象となり、これらの企業の10%を超える株式を取得しようとする外国企業があった場合、イタリア政府が買収を拒否できるようになっています。

また、ドイツではEU外の海外企業からの国内企業の買収を阻止する新たな規制案が計画されました。これにより、ドイツ政府が「国益が阻害される恐れがある」と判断した場合、海外企業からの買収を拒否することができます。

「コロナ支援外交」で国際的地位向上?「一帯一路」を推し進める狙いも?

このような買収以外にも、中国は自国の国際的な地位向上を狙い様々な動きを見せています。

習近平指導部は、ヨーロッパ各国に対し医療チームの派遣や、物資の寄付や販売を行う「コロナ支援外交」に力を入れています。感染拡大を封じ込めたノウハウの共有や、自国の強みである莫大な生産能力を活かし、「救世主」としての立ち位置を確立したいのではという見方もあります。

また、このような「コロナ外交」は、2013年にスタートした「一帯一路」計画をさらに推し進めていくきっかけとなる可能性もあります。

中国は、この「一帯一路」計画で中国からヨーロッパ間のつながりを強化してきました。ヨーロッパでもっとも感染拡大が深刻となったイタリアは、この「一帯一路」計画へ積極的に参加しており、これが感染拡大の一因であるという見方も広まっています。

中国は、このようなイメージを払しょくするためにも、コロナ撲滅に協力する姿勢を積極的に示し、「一帯一路の絆がさらに深まった」という新たなイメージ形成に取り組んでいくと考えられます。

思い出される「北海道人口1,000万人計画」 

中国企業はヨーロッパ市場において積極的な買収を行ってきましたが、各国の厳しい規制により、その動きが日本へと向けられる可能性もあります。

過去には中国人経営者により、北海道への移民受け入れが提唱されたことがありました。この計画は「北海道人口1,000万人計画」と呼ばれ、「海外からの移民の受け入れを促進し、北海道の人口を1,000万人規模に増加させ、計画的な経済成長を促す」ことを構想していました。

当時、中国人や中国企業による北海道の土地買収が進んでいたことから、この計画は「中国から北海道へ大規模な移住を行い、北海道を中国の新しい経済の拠点にする」という目的もはらんでいたのはないかといわれています。

中国人の土地買収に関しては、「中国人が北海道に持っている土地面積は、静岡を超える」と航空幕僚長を務めた田母神氏が発言したこともあり、その規模感は衝撃をもって受け止められています。

北海道は引き続き中国人観光客の人気観光地であり、この地でのビジネスには商機があると判断する中国人は少なくないと考えられます。新型コロナウイルスの収束をいち早く実現した中国は、経済の動きも一足先に回復に向かうと考えられます。

世界各国がコロナの後遺症に苦しむ今、日本に対する「土地の買収」が再度活発化する可能性も十分考えられます。

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中国人が日本の土地を欲しがる理由 

中国人が日本の土地を購入する理由のひとつとして、資産保全があげられます。中国では、土地はあくまでも国家のものであり、個人が売買できるのはあくまでも使用権だけです。このようなことから日本の土地を購入し、資産を確保したいと考える中国人や中国企業も少なくありません。

北海道の人気リゾート地・トマムの「星野リゾートトマム」は中国の商業施設運営会社「上海豫園旅游商城」に買収されており、十勝にあるサホロリゾートも実質上中国資本の傘下で経営されています。

「常設型住民投票条例」が日本の安全を脅かす?

このような中国人や中国企業による日本の資本が大量に買収されている背景には、海外資本による土地買収や移住を容易にする日本の法整備の甘さがあげられます。

そのひとつに、「常設型住民投票条例」があります。これは、投票の資格や投票方法などを市町村が独自に制定することができ、場合によっては外国人にも投票権が保証されることになります。

この条例が制定されている地域への中国人の移住者が増加して、地方行政に中国人にとっての利益が大きく反映される可能性もあります。

「土地基本法」の見直し、土地の所有者を明確にする動きも

また、中国資本による北海道の土地の購入においては、外国資本によって土地が買われても実質的な所有者が把握されておらず、安全保障上の問題や地元住民から規制を求める声や不安の声が高まっていたといいます。

これを受けて、日本政府は外国資本による土地買収の実態把握に乗り出す方針を示しました。2019年5月に成立した適正化法に基づき、体制整備や予算措置を検討するとし、2020年には土地基本法などの見直しを行う予定です。 

このように、海外資本により土地や観光施設を過剰に買収されたり、買収されても開発が進まず放置されたりすることは、思わぬ自然の乱開発や、住民の住環境の変化につながる可能性があります。中国資本による「再開発」が行われる約束で買収された土地や観光施設において、一向に開発が進まないという事案も発生しており、地元住民からは不安の声が上がっています。

土地や不動産の売買を食い止めるためにも、このような法改正を一刻も早く進めていく必要があります。 

経済回復中の中国、日本への「経済侵攻」加速の可能性も

新型コロナウイルスを封じ込め、経済回復の兆しを見せる中国の動きは日本にも影響を与える可能性があります。

かつて北海道では、中国の不動産開発会社から、農業や景観に大きな影響を与えかねない大規模開発の提案を受けたといいます。現地住民の生活を支える産業や歴史を持つ景観が失われるリスクが、中国の経済力の増大には伴っているといえるのかもしれません。

年初以降、新型コロナウイルスの感染拡大で世界的な物や人の流れが分断されました。 日本を含む多くの国が、製品の生産や輸入、あるいは企業の経営、観光を含む各産業で、他国の経済力に支えられていたことを痛感させられています。

今回は感染症でやむにやまれずという事態ではありますが、こうした経済的影響力を盾に不利な条件を突きつけられるリスクが国際社会に存在することについて思い至った企業や組織もあったはずです。

こうした国外の経済的影響力を低減させるためには国内で産業を完結させることが有効ですが、少子高齢化の進む日本ではあまり現実的とはいえません。日本に居住し納税の義務を果たす個人や組織にとって、不利が生じないような形で、今後も国外の消費需要を取り込んでいくことが欠かせないでしょう。

グローバル化する社会では国外の消費需要の取り込みだけに注力するのではなく、健全な社会運営、経済発展が実現できているのかにも注意を払う必要があります。

<参照>

産経ニュース:中国が観光施設“爆買い” 進むチャイナタウン化 住民に危機感「中国人の街ができてしまう」

中国に買われる北海道…小樽の由緒ある建物も続々と 外資の土地買収“絶望的”実態

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

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