新型コロナウイルスの世界的感染拡大で外出自粛が求められる中、人々のライフスタイルが大きく変わり、消費行動にも変化が起こっています。
そこで、訪日ラボは宿泊施設と空港間の手荷物当日配送サービスを展開するAirporterの協力を得て、Airporter過去のサービス利用者(訪日経験者)を対象に、新型コロナウイルスが回答者の消費行動にいかに影響を与えるか、その実態を調査しました。
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新型コロナウイルスが訪日経験者の消費行動に与える影響:調査概要
今回訪日ラボと株式会社 Airporter共同でが行った「新型コロナウイルスが訪日経験者の消費行動に与える影響」では、まず「自宅生活の中でストレスに感じること」をたずね、次に「外出自粛の中で消費増/減の項目」「外出自粛の中で消費増/減の日本製品」などを選択式でたずねました。その結果を国籍・地域別でも分析しました。
今回の調査では、
- 外出自粛の中で、宅配代・日用品代が増加し、美容費が減少した
- 日本製品でもっとも消費減は「外出着」で、もっとも消費増は「ゲーム機」である
- コロナを経て今もっとも欲しい日本製品は「お菓子」で、中国と香港は「日用品」
ということがわかりました。以下で調査結果を紹介します。
外出自粛や衛生面へのストレスを感じた回答者が多数
- 質問
-
新型コロナウイルスの影響で、自宅生活の中でストレスに感じること、困っていることは何ですか?※複数回答
- 回答(上位3項目を抜粋)
- 外出が出来ない、しづらいこと:50.9%
- 衛生的な環境かどうかを気にすること:49.1%
- 運動不足:44.6%
新型コロナウイルの影響で、世界各地で外出自粛が行われている中、自宅生活の中でストレスに感じること、困っていることをたずねたところ、最も多かった回答は「外出が出来ない、しづらいこと」で、回答者の過半数が選択しました。
続いて「衛生的な環境かどうかを気にすること」の回答者が49.1%と2番目に多くなっています。「運動不足」が45%ほどいました。
巣ごもり生活で「美容費」減、「宅配代」増
次に、外出自粛生活の中で減った消費支出について、もっとも減少幅が大きかったのは「美容費」で、20.5pt減でした。外出制限のため、化粧品などの美容用品への購入が少なくなったと考えられるでしょう。
一方、増加した消費支出において「宅配代」の増加幅がもっとも大きく、48.2pt増でした。外出自粛の影響から宅配便利用者が増えたことが理由だと言えるでしょう。
続いて「日用品代」で46.4pt増、そして「光熱費」で40.2pt増という結果となりました。
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、世界各地で買いだめ・買い占めが起こり、ティッシュやマスクなどの日用品への出費が増加したと考えられます。
また、長引く巣ごもり生活とテレワークの推進で、光熱費も増えたと言われています。
※こちらの数値は、増加した消費支出の回答率から減少した消費支出の回答率を差し引いた増減ポイントで表しています。
日本製品で最も消費減は「外出着」と「化粧品」
今回の新型コロナウイルスで消費支出が減った日本製品についてたずねると、「衣服(コートやジャケットなど、外行きの服)」が50.0pt減でもっとも消費しない項目となりました。2位は「化粧品、コスメ用品」で33.9pt減でした。
これは前問と同様に、外出機会が減少したことによる消費変化でしょう。
一方で、消費支出が増えた日本製品について、「日本のゲーム(Nintendo SwitchやPS4など)」がもっとも選択されて、49.1pt増でした。外出制限が課される中、自宅でゲームを楽しむ人が増えているともいわれており、3月下旬に発売された任天堂の「あつまれ どうぶつの森」の世界販売数が6週間で1,341万本に達したのはまさにその表れです。
2位は「インスタント食品」の25.0pt増でした。ストック食品とされているカップヌードルなどのインスタント食品は、新型コロナウイルスの影響によって買い占めの対象となっています。
※こちらの数値は、増加した消費支出の回答率から減少した消費支出の回答率を差し引いた増減ポイントで表した数値です。
同じ項目を国籍・地域別で集計すると、どの国・地域においても消費が減少した日本製品を「外出着(コートやジャケットなど、外行きの服)」と答えた回答者が多く、50.0pt減を超えています。欧米では「化粧品、コスメ用品」への消費減少が目立ちます。ただし、「化粧品、コスメ用品」について、中国での減少幅がほかの国・地域より小さかったです。中国のECサイトの調査によると、外出できなくても気分転換や物欲を満たすため、口紅などの化粧品消費がかえって伸びました。そこから、日本製の口紅などを購入するユーザー数が一定数いると考えられるでしょう。
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一方、消費が増加した日本製品は国籍・地域によって回答が分かれていますが、中国と香港では1位が「日用品(洗剤やティッシュ、掃除道具など)」で、60.0pt以上の増加ポイントでした。東南アジアと欧米では、「日本のゲーム(Nintendo SwitchやPS4など)」の回答者がもっとも多いです。
※こちらの数値は、増加した消費支出の回答率から減少した消費支出の回答率を差し引いた増減ポイントで表しています。
※ここでの東南アジアは、回答者のうち出身地がフィリピン、シンガポール、インドネシア、マレーシア、タイとしています。欧米は、回答者のうち出身地がカナダ、アメリカ、オーストラリア、イギリスとしています。
日本製品で「お菓子」や「ドリンク」への欲求大
- 質問
-
日本製品で、今回のコロナを経て、今買いたいもの、欲しいものを教えてください。※複数回答
- 回答(上位3項目を抜粋)
- お菓子:43.8%
- 飲み物、お酒など:42.9%
- 日用品(洗剤やティッシュ、掃除道具など):37.5%
今回のコロナを経て今買いたい・欲しい日本製品についてもたずねました。「お菓子」と「飲み物、お酒など」がもっとも選択され、それぞれ43.8%と42.9%の回答率でした。
2019年訪日外国人消費動向調査によると、「菓子類」「酒類」と「その他食料品・飲料・たばこ」の購入率が69.5%、19.0%と38.0%でした。そこから、訪日客において日本の「食品(お菓子)」と「食品(飲み物、お酒など)」の高い人気が伺えます。
中国と香港は「日用品」への欲求大、台湾は分散傾向
同項目を中国・台湾・香港で集計すると、同じ中華圏でも違う傾向が見受けられました。
中国と香港は全体的に日本製品への購買意欲が高く、特に「日用品(洗剤やティッシュ、掃除道具など)」を選んだ回答者が6割を超えています。
日本の医療用マスクを買いたいとアンケート中に答えた人もいます。
一方、台湾は突出した答えがなく、お菓子、飲み物、お酒などの食品への関心が高いようです。
アフターコロナのインバウンドビジネス 日用品が狙い目か
本編では新型コロナウイルスが訪日経験者にどのような変化をもたらしたかを分析しました。世界各国で外出制限が敷かれるため、外出着や化粧品に対する需要が減り、日本製品の購入にも同じ傾向が見られました。
その一方、新型コロナウイルスによる不安で起こった食品の買い占めや、自宅でできる娯楽への求めで、日本のインスタント食品やゲーム機の消費支出が増える傾向にあります。
ただし、国によって消費傾向が異なり、中国と香港では日本製のティッシュやマスクなどの日用品への消費増が大きく、今後も買いたいという意欲がデータからわかりました。
現在各国で段階的に観光活動を再開し、渡航制限や入国規制緩和の動きも進んでいます。今回の調査から、早ければ秋ごろ以降台湾や香港など東アジア諸国を中心に外国人観光客が戻ってくるのではないかと予想できます。
今後は入国制限の情報を追いつつ、各国の日本製品への消費特徴を掴み、アフターコロナのインバウンド回復を見据えた商品ラインアップの戦略を練り直すことが求められるでしょう。
<調査概要>
調査対象:Airporterの過去の利用者
調査方法:Webアンケート調査
調査時期:2020年5月29日〜2020年5月31日
回答者数:112名
設問数:19問(回答内容によって異なります)
<調査協力>
本調査への質問、レポートの依頼、その他インバウンド向け調査のご相談はAirporter( https://about.airporter.co.jp/contact )まで
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今年も残りわずかとなりましたが、インバウンド需要はまだまだ好調をキープしている状況です。来年の春節や桜シーズンなど、訪日客が集まる時期に向けて対策を練っていきたいという方も多いでしょう。
今回もインバウンド業界最大級メディア「訪日ラボ」副編集長が、10〜11月のインバウンドトレンド情報についてお話ししていきますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
詳しくはこちらをご覧ください。
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訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月発行しています。
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