新型コロナウイルスの流行はいまだ収束のめどが立たず、感染者数の拡大が続いている国・地域が少なくありません。
一方で感染拡大防止策を講じながら、経済再開に向けて規制を緩和する動きも各地でみられています。
このような状況で、新型コロナウイルスは、世界の人々の旅行への関心度合いにどのように影響しているのでしょうか。
これまで訪日ラボでは、海外トレンドデータの分析を手がけるAmobee Japanの協力を得て、新規陽性者数の増減と海外旅行への関心度の増減の推移を調査したデータを提供していただき、オーストラリアとイギリスの調査結果について考察してきました。
今回はアメリカのデータをご紹介します。
ここ6年間、訪日アメリカ人観光客数は伸び続けており、2014年においては89万1,668人だった訪日アメリカ人観光客数は、2019年には約1.9倍となる172万3,861人を記録しています。
また、ここ5年間、訪日アメリカ人のインバウンド消費額も伸び続けており、2014年においては1,475億円だった訪日アメリカ人のインバウンド消費額は、2019年には約2.2倍となる3,265億円を記録しています。
日本のインバウンド業界にとって重要な市場の一つであるアメリカにおける、旅行への関心度合いについて見ていきましょう。
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アメリカにおける新型コロナ陽性者数と海外旅行への関心度の推移
こちらのグラフはアメリカにおける、新型コロナウイルスの新規陽性者数と各国への旅行に対する関心度の推移を示したものです。
- 横軸:2020年1月5日から8月22日までの分析期間。
- 左の縦軸:アメリカ人の各国への旅行に対する関心度インデックス。関心度インデックスとは、海外消費者5,000万人を対象に、彼らが旅行系Webサイト上で、海外の国名が含まれる記事やニュースにアクセスした数から計測されたもの。
- 右の縦軸:アメリカにおける新型コロナウイルスの新規陽性者数。Tableauが提供するCOVID-19 Data Hubによるもの。
- 折れ線:黒はアメリカにおける新型コロナウイルスの新規陽性者数を示し、それ以外は日本、カナダ、中国、フランス、シンガポール、タイへの旅行関心度を表す。
アメリカの旅行意欲、陽性者数の増減に敏感に反応
全体を見てみると、アメリカでは海外への旅行関心度は、新型コロナウイルス陽性者数の増減に敏感に反応していることがわかります。
アメリカは3月19日に渡航警戒レベルを最も厳しい「レベル4:渡航中止・退避勧告」に引き上げており、同時期に海外旅行への関心度は大きく落ち込みました。
その後、海外への旅行関心度は、新型コロナウイルス感染数の減少に伴って、緩やかな回復を見せます。
6月頃から感染者数が急増し、感染の第二波が到来したことで、再び関心度の下落が見られましたが、その後の感染者数の減少に伴い再び盛り返しています。
8月には、4か月以上にわたり続けられていた、アメリカ国外への渡航中止勧告が解除され、海外への旅行関心度も回復を見せています。
近隣エリアのカナダが人気
旅行関心度の推移を国別でみてみると、新型コロナウイルスの前後を通じて、近隣エリアであるカナダの人気が高いことがわかります。
2017年時点での「過去5年間での最多の外客数」のデータによれば、アメリカではメキシコに次いでカナダが2番目に人気の海外旅行先となっており、アメリカと隣接し、陸路でも入国できることが人気の理由となっているようです。
なお同データでは3位がフランスで、日本は15位となっています。
旅行関心度の推移では、1月時点では日本はカナダに次いで2位となっていましたが、新型コロナウイルスの感染が拡大した3月にかけて大きく落ち込み、フランスと中国の後塵を拝しました。
もともと2月は訪日アメリカ人が最も減少する傾向がありましたが、3月は6月と並んで最も増加するタイミングであったため、3月に日本への旅行関心度が落ち込んでいるのは、新型コロナウイルスの影響を大きく受けていることが推察されます。
第二波収束に伴って遠隔地への旅行の関心も高まる
アメリカで新型コロナウイルスの感染の第二波が収束するに伴い、遠隔地への旅行の関心が高まっていることも見て取れます。
8月に入ってからは、フランスへの関心度が大きく伸びており、伸び悩みを見せるカナダを追い抜く勢いとなっています。
アジア圏である中国、タイ、シンガポールへの関心度合いも上昇しており、中でも日本への関心度は、8月16日の週時点で中国を追い抜き、3位に浮上しています。
感染の第二波収束の動きに加えて、8月に国外への渡航中止勧告を解除されたことも、空路で移動する遠隔地への旅行への抵抗感の払拭につながった可能性があります。
アメリカの「リベンジ」消費期待か
今回のグラフから、アメリカでの旅行関心度は、新型コロナウイルスの陽性者数の推移に敏感に反応しており、感染の第二波収束に伴って、関心度が回復傾向にあることがわかります。
特に国外への渡航中止勧告が解除された8月以降は、日本など遠隔地への旅行への関心が高まっており、訪日アメリカ人の需要回復を期待できる可能性があるでしょう。
訪日アメリカ人は、滞在日数が7〜90日間が全体の約65%と、長期間滞在する傾向にあります。
また約9割の訪日アメリカ人が、団体ツアーではなく個別手配で日本を訪れており、個人旅行で柔軟な計画を立てて日本を見て回ることを好む人が多いようです。
インバウンド施策として、個人旅行に組み込みやすいコト体験やアクティビティをいかに提供できるかが重要になるでしょう。
また、宿泊と飲食にお金をかける傾向があり、2019年に訪日アメリカ人が訪日旅行中に最も支出した費目は宿泊費で約8万円、次に飲食費で約5万円となっていました。
宿泊業界や飲食業界は、英語での接客環境を整える、SNS等によるプロモーションを行うなど、アメリカ人をターゲットにしたインバウンド施策をすることで、より多くのアメリカ人に消費してもらえる可能性があるでしょう。
今後は、引き続き新型コロナウイルスの感染状況を注視しつつ、来たるべき訪日アメリカ人の需要回復に備え、適切なインバウンド施策を準備していくことが求められます。(データ提供協力:Amobee Japan)
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