新型コロナウイルスの世界的感染拡大による各国の入国制限の強化と伴い、現在は一部の国を除き、観光目的の渡航がまだ難しい状況にあります。
このような状況で、新型コロナウイルスは世界の人々の旅行への関心度合いにどのような変化を与えているのでしょうか。
前回オーストラリアの旅行関心度合いに対する考察に続き、今回はイギリスに焦点を当て、海外トレンドデータの分析を手がけるAmobee Japanから提供していただいた、イギリスにおける新規陽性者数の増減と海外旅行への関心度の増減の推移データをもとに、分析しました。
2019年の訪日イギリス人は史上最多となる42万人を達成し、ヨーロッパ市場の牽引役とも言われています。データから、今のイギリス人の旅行への関心度合いを読み取っていきましょう。
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イギリスにおける新型コロナ陽性者数と海外旅行への関心度の推移
![▲[イギリスにおける新型コロナ陽性者数と旅行への関心度の推移]:Amobee Japan 提供 ▲[イギリスにおける新型コロナ陽性者数と旅行への関心度の推移]:Amobee Japan 提供](https://static.honichi.com/uploads/editor_upload_image/image/7471/main_Interests_and_cases_by_countries_UK.png?auto=format)
こちらのグラフはイギリスにおける、新型コロナウイルスの新規陽性者数と各国への旅行に対する関心度の推移を示したものです。
- 横軸:2020年1月5日から8月22日までの分析期間。
- 左の縦軸:イギリス人の各国への旅行に対する関心度インデックス。関心度インデックスとは、海外消費者5,000万人を対象に、彼らが旅行系Webサイト上で、海外の国名が含まれる記事やニュースにアクセスした数から計測されたもの。
- 右の縦軸:イギリスにおける新型コロナウイルスの新規陽性者数。Tableauが提供するCOVID-19 Data Hubによるもの。
- 折れ線:黒はイギリスにおける新型コロナウイルスの新規陽性者数を示し、それ以外は日本、カナダ、中国、フランス、シンガポールへの旅行関心度を表す。
旅行関心度と陽性者数は概ね連動
全体の傾向を概括してみると、イギリスにおいて、海外への旅行関心度は新型コロナウイルスの新規陽性者数と概ね連動しているように見えます。
新型コロナウイルスがイギリス国内で本格的に感染拡大する前の1月と2月は、イギリス人の各国への旅行関心度は高い数値を示しており、近隣のフランス以外、中国と日本の東アジアに対する旅行関心度も上位を占めていました。
ただし、3月に入るとイギリス本土での感染が広がり、新規陽性者数の急増とともに旅行関心度が激減し、特にロックダウン措置が発表された3月下旬に、どの国に対しても旅行関心度が谷底に落ちました。
その後海外への旅行関心度は徐々に回復し、5月半ば以降新規陽性者数の減少と安定化に呼応するかのように、さらなる上昇傾向がみられます。
しかしながら、旅行関心度が回復している国はフランスに限っており、それ以外の国は微増といった調子で、低水準が続く状態になっています。
フランスがトップを独走し続ける
旅行関心度の推移を国別でみてみると、新型コロナウイルスの感染拡大前でも後でも、フランスがトップを独走し続けていることがわかりました。
そもそも、フランスはイギリスと同じヨーロッパ圏に一致しており、アクセスもしやすいため、長年からイギリス人の人気海外旅行先の上位を誇っています。
一方、2月末から3月にかけて、イギリスもフランスも感染者数が急増し、3月中に両国とも厳しいロックダウンと入国制限を課しはじめました。
それを受け、イギリス人のフランスへの旅行関心度が大幅に下がった現象が観察されました。
ただし4月中旬から5月初旬までに、イギリス国内で感染拡大が続くにもかかわらず、一度谷底に落ちったフランスに対する旅行関心度が急上昇していました。
正確な理由を述べることは難しいものの、4月28日フランスの首相が段階的な外出制限の解除を発表し、イギリス人がそれを見据えてフランス旅行への期待感が高まった結果、旅行関心度に反映されていたのではないかと推察されます。
その後フランスへの旅行関心度が一度減少しましたが、6月半ば以降上昇し続け、7月と8月に増減がありながらも全体的に高い水準を保っていました。
これは、イギリス国内では6月に入り自粛措置の緩和が段階的に打ち出されており、また深刻な打撃を受けた観光業を立て直しするために、EUはシェンゲン圏の域内移動制限を6月15日に解除しました。
フランスも同日をもって、EU加盟国やイギリス、スイスなど一部ヨーロッパ諸国からの渡航を再開しました。
さらに、イギリスは7月6日以降不要不急の海外旅行への規制を緩和し、フランスやスペインなど一部の国への旅行に関して、帰国後14日間の自主隔離も免除することになりました。
両国の渡航制限の緩和または7月と8月のタイミングが夏休みのシーズンでもあるため、イギリスにおけるフランスへの旅行関心度が再び上昇し、直近では3月中旬の水準までに回復しました。
長距離旅行の関心度が低迷しているものの、少しずつ回復
他方、フランス以外の国に対する旅行関心度は下落したまま低迷を続けている状況になっています。
8月以降、日本とシンガポールに対する旅行関心度の回復傾向が観察でき、その理由は新型コロナウイルスの感染状況が比較的収まっているとして考えられます。
ただし全体的にみると、近隣のフランスと比べると旅行関心度の差が開いており、イギリス人は長距離旅行に対し慎重な姿勢を示しているように見えます。
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長距離旅行に慎重なイギリス人
今回のグラフから、イギリスにおいては陽性者数と旅行関心度との相関関係は若干見られるものの、長距離旅行への関心度は依然として低い水準が続いていることがわかります。
直近ではフランスといった近隣国への旅行関心度が高い一方で、日本やシンガポールなど地理的に遠い国への旅行に対してはまだ慎重であるようです。そのため、訪日イギリス人の需要回復は前回紹介した訪日オーストラリア人と比べると、多くの時間を要すると考えられます。
一方、訪日イギリス人は人数が年々伸びており、一人あたりの消費金額も高いため、インバウンドにおいて欠かせない存在になりつつあるということも事実です。
加えて、8月以降日本への旅行関心度が上がる兆候にあり、少しずつ訪日旅行を視野に入れ始めたことが見られました。
訪日イギリス人の客足の戻りに向けて、今のうちから日本の「安心・安全」情報を発信しつづけることと同時に、旅行商品の磨き上げや多言語対応など受け入れ環境の整備をしておく必要があるでしょう。(データ提供協力:Amobee Japan)
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