コロナウイルス感染第2波への懸念は拭えないものの、日本を含め各国で新型コロナウイルス感染者もピーク時を境に減少傾向にあり、各国で段階的に経済活動を再開する動きが見られています。
日本では6月19日より県をまたぐ移動が全面的に解除となった他、入国制限措置の緩和策第1弾としてビジネス関係者に限り、6月下旬よりベトナムとの間で往来を再開させる方針で最終調整に入っています。
また、中国やアジア各国では秋以降の訪日旅行に意欲的な姿勢を見せており、インバウンド需要回復に向けアフターコロナの新習慣として、3密を避けた衛生面の取り組み強化や、サービス提供・運営に従事することが求められています。
本記事では、各国の新型コロナウイルスの現状や訪日旅行に対する見解について解説します。
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各国の新型コロナウイルスに関する状況
いまもなお、各国に猛威をふるう新型コロナウイルスですが、日本を含めた各国で自粛要請や制限が緩和する流れになっています。さらに経済活動が段階的に再開されるなど、少しずつ日常生活を取り戻し始めました。
しかし、第2波への懸念もあり、経済活動や教育活動以外の観光・旅行などの娯楽が戻るのはまだ先であると予測されます。
日本とアジア、そして欧米の現状について解説します。
日本:6月19日から都道府県またぐ移動も自粛解除へ
新規ウイルス感染者がピーク時に比べ減少傾向にあり、医療体制のひっ迫も落ちついてきたことから、政府は緊急事態宣言を地方や関西圏をにおいて段階的に解除、残る首都圏や北海道などの5都道府県でも5月25日に宣言が解除され、31日を待たずして全面解除に至っています。しかし過去の感染症などの例をみても、第2波が来る可能性も捨てきれません。
政府は第2波に備え、おおむね3週間ごとに状況をみながら外出自粛を段階的に緩和していく方針を取り、6月12日以降は飲食店に深夜0時までの営業、及びカラオケ店の営業が可能となるステップ3に移行しています。
5月中は都道府県をまたぐ不要不急の移動はさけるように勧告していましたが、6月19日には全面的に解除となりました。
東アジア:日本より早くピークアウトするも、第二波の予兆
感染が最初に発覚した中国では、5月頭頃は新規の新型コロナウイルス感染者は一桁台に収まり、経済活動を再開していたものの、6月15日WHOの発表によると北京市内では新たに100人以上の集団感染が再び発生しています。市はロックダウン措置の対象範囲拡大、ウイルス検査強化などにより、感染拡大の封じ込めにあたっています。
韓国については、迅速な封じ込め対策により4月には3日連続で感染者ゼロを記録、日本よりも早い5月6日に自粛要請が解除されました。しかしながら、解除直後の5月8日にソウル市内のクラブで集団感染が発生、6月23日には過去24時間で新たに17人の感染が報告されるなど、流行の第2波が押し寄せています。
欧米:「第1波」猛威ふるうなか、制限緩和はじまる
アメリカでは、6月20日までの24時間で新規感染者は3万2,000人に上るなど、未だに感染の第1波が猛威を振るっていますが、業種を限定し徐々に経済活動再開に動き出しています。
しかしながら、外出先でマスクをしない、ソーシャルディスタンスを意識していないなどの光景がみられ、活動再開が時期尚早だったのではとの批判の声も上がっています。
欧州はというと、EU諸国の多くの国が観光業に頼っているため、夏の観光シーズンを前に移動制限の緩和に動き出しています。その対応は国によって異なるものの、EU加盟国の中でも制限緩和に積極的なギリシャは7月1日から観光客受け入れ再開を目指しています。
また、同じく財政基盤を観光業に大きく依存しているイタリアでも、6月3日に欧州で初めて国境封鎖を完全解除に踏み切り、渡航者に対する入国制限を一部緩和し、EU加盟国からの観光客受け入れを開始しています。
アフターコロナのインバウンド市場はどうなる?
日本では緊急事態宣言も解除され、徐々に活動自粛が緩和し始めているものの入国制限緩和に関しては慎重な姿勢であり、日本人・訪日外国人の渡航再開は未だ時間がかかるとの見方が強くあります。
一方、2020年4月に熊本県観光協会連絡会が日本全国の一般消費者を対象に行った意識調査によると、7割が旅行に意欲的であり、海外旅行については消極的であるものの近隣エリアへの旅行は前向きに検討していることが伺えます。
また、中国やアジアなどの近隣諸国でも、訪日旅行を希望する意見が多数を占めています。
新型コロナウイルス収束後の訪日旅行に対する海外の見方について、中国・中国以外のアジア・欧米という3つの側面から解説します。
中国市場:警戒心あるも、訪日に高い関心
訪日外国人むけプロモーション支援を行うペイサーが、2020年4月にWeChatを通じて実施したアンケート調査によると、新型コロナウイルスが収まれば訪日したいと考える中国人の割合が95.46%に上っています。
また、訪日時期としては2020年9〜12月が合計で40.73%、2021年は38.00%を占めており、秋以降の訪日需要増加に向け、施策を講じておく必要があることを裏付ける結果となっています。
他にも、日本インバウンド・メディア・コンソーシアム(JIMC)が中国のインターネットユーザー145名を対象に行なった「中国人最新訪日意識調査」によると、新型コロナウイルス終息後に行きたい国として日本は1位(40%)であり、2位のタイ(12%)を大きく引き離しています。
同調査では、訪日旅行は「中国政府・日本政府が安全宣言を出したら行ってもよい」との回答が合計で58.6%に上り、また日本のイメージとしては「新型肺炎は抑えられているが、まだ危険を感じる」が36%、「新型肺炎が流行していて危険な状態」が28%を占めています。
アフターコロナにおける訪日旅行に関して慎重な姿勢を崩さないものの、高い関心を抱いていることが調査から伺えます。
中国以外の東アジア・インド市場:「訪日したい」が90%以上、需要回復は最短で秋以降か
日本好き外国人によるコミュニティサイトを運営するFun Japan Communicationsは、中国、韓国、香港、台湾、タイ、マレーシア、インドネシア、ベトナム、インドのアジア9カ国の合計2,425名を対象に、訪日旅行に対する意識調査を2020年4月に実施しました。
調査によると「訪日旅行が安全であると判断出来れば、訪日したいか」という問いに対し、台湾や香港、タイ、マレーシア、インドネシアの90%以上の人が「はい」と答え、インドに関しては100%の人が行きたいと回答しています。
時期としては、春と秋などの季節を楽しめるシーズンの訪日希望が多く、新型コロナウイルス収束後における訪日需要回復は、早くても秋以降であると予想されます。
欧米豪市場:訪日需要回復は多くの時間を要する見通し
欧米諸国の中でも大きな訪日インバウンド市場であるのがアメリカ合衆国であり、インバウンド調査報告書2020によると、2019年欧米豪市場の観光客全体の42.6%を占めます。
しかしながら、アメリカでは新型コロナウイルスが落ち着いても最優先は国内の景気回復であり、アメリカ国内の旅行を進めている状況です。
また、欧州では夏の休暇に向けて入国制限の緩和が進められているますが、対象はEU諸国に限られており、欧米からの訪日需要回復にはまだ時間を要するとの見方が強くあります。
アジアと比較すると地理的に遠い欧米ですが、その分訪日時に高額なコト消費・モノ消費をする傾向が強いことも特徴です。2019年上半期の欧米豪からの観光客による消費金額は、訪日外国人全体の約15.9%を占める総額約4,020億円に達しており、東南アジア系訪日外国人の約1.4倍にあたります。
年々訪日需要が増している欧米豪市場は、インバウンド誘致の施策を講じるうえで見逃せない存在となっています。
遠いからこそ日本を堪能したい!欧米豪インバウンドの実際をデータから解読:消費額トップの豪・4人に1人が「動画サイト」を参考にする米など
2019年の訪日外国人を国籍別に見てみると、最も多かったのは中国人観光客でした。その次に韓国、台湾、香港と、東アジアからの観光客が多くを占めています。一方、ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリア諸国こと欧米豪からの観光客も年々増加しており、インバウンド対策を実施する際には無視できない存在となっています。そこで今回は、インバウンド調査報告書2020に掲載されている最新のデータをもとに欧米豪からの訪日外国人について解説するとともに、中でも最も大きな市場である訪日アメリカ人に向けたインバウンド対策...
アフターコロナのインバウンドで重視すべきこと
新型コロナウイルスと共存しながらの経済活動再開にあたっては新たな生活様式が求められており、台湾では感染対策のポイントを紹介する旅行事業者向けのツアーが開催されるなど、ニーズに応じた対応策を打ち出しています。
日本の観光業においても、旅行に対するニーズが新型コロナウイルスによって変化していることを周知しておく必要があり、ここでは活動再開に不可欠な要素について紹介します。
衛生管理の徹底
まず、新型コロナウイルスの感染予防のための衛生管理を徹底する必要があります。
世界保健機関(WHO)はホテルや宿泊施設などの運営に対し、消毒剤のこまめな使用、ロビーや客室の表面部分の消毒作業、フロントでの仕切りの導入などを推奨しています。
このような対策の徹底は顧客の安心を得るために必須であり、事業者は安心安全な旅を提供することが求められています。
3密の回避
今後の旅行には「密閉・密集・密接」の3つの密を防ぐ取り組みが必要になることから、国のガイドラインには「店内での密集を避けること」という取り決めがあります。
それに伴い、旅行代理店や販売事業者側は、顧客が必要なチケット類をインターネットを通じてダウンロードできるようにしたり、来店者を少なくするためにオンラインで予約できる旅行商品の種類を充実させたりといった取り組みを強化していく必要があるといえるでしょう。
また、宿泊事業者側は例えば露天風呂付き客室や部屋食での提供など、「3密」に配慮した取り組みが、今後の集客において重要になります。
インターネットを駆使したPR
アフターコロナに向けて、国内外の観光地や観光事業者らがインターネットを通じたPRに取り組んでいます。その中でも注目したいのが、有馬温泉が自宅で入浴体験ができるよう公開した「有馬温泉湯めぐりVR」や、「バーチャル世界で伊勢丹体験」などのネットを使った手法です。
有馬温泉では、家庭の湯船に浸かりながらVRゴーグルを装着して動画を再生すれば、180度VRによって有馬温泉の入浴を疑似体験できる動画を作成しました。
自粛中にインターネット上でバーチャルな体験をすることで、活動再開時にその場所を訪れてみたいという意欲を掻き立てる効果が生まれます。
このようにウィズコロナでもユニークな手法で訪日疑似体験を提供することにより、入国制限解除以降、現地を再訪するきっかけにつながるとして、期待が高まっています。
アフターコロナのインバウンドへ備えを
第2波も懸念される中で、いつ新型コロナウイルスが収束し、かつての訪日旅客数が戻ってくるかの予測は困難といえるでしょう。
しかし各国で流行のピークが過ぎ、経済活動が再開するなど、アフターコロナへは確実に近づいているといえます。
日本政府観光局が発表した2020年4月の訪日外国人数(推計値)は前年同月比99.9%減の僅か2,900人であり、観光業はもちろん、インバウンド業界は厳しい現状に置かれています。
今後は新型コロナウイルスのもたらす衛生面での予防策に柔軟に対応しながら、アフターコロナでのインバウンド需要回復を目指し、できることから始めていく必要があります。
その際には、他国や他の企業の取り組み事例や、3密回避への取り組み事例を参考にしながら、旅行者にとって「安全・安心」を感じてもらうための対応をとっていくことが求められています。
【インバウンド情報まとめ 2024年11月後編】中国、タイの2025年祝日発表 ほか
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