2020年11月16日から、在留・訪日外国人向けモバイルサービス「GTN MOBILEサービス」において、プリペイド型eSIM対応の国内データ通信サービスが開始されることが発表されました。
従来の物理的なSIMカードと異なり、SIMカードの入れ替えが不要なeSIMは、訪日外国人にとって高い利便性があり、今後広く普及する可能性があります。
本記事では、そもそもeSIMとは何か、そしてeSIM対応データ通信サービスがインバウンド市場にどのような影響をもたらすのか、解説していきます。
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在留・訪日外国人向けに「eSIM対応データ通信」サービスを提供開始
グローバルトラストネットワークスが、在留・訪日外国人向けモバイルサービス「GTN MOBILEサービス」において、プリペイド型eSIM対応の国内データ通信サービス「GTN PREPAID eSIM(ジーティーエヌ・プリペイド・イーシム)」を2020年11月16日から提供開始することを発表しました。
デュアルSIM対応のiPhoneおよびiPadモデルの最新シリーズ向けの、eSIMのデータ通信専用プランで、日本全国で利用が可能です。
SIMロックフリー端末で利用可能なプリペイド型eSIMにおいて、店頭で即時発行可能な国内データ通信サービス(ドコモ網)は、国内初となっています。
商品体系は、データ通信料別に3GB/6GB/10GBの3商品で、日本語、英語、中国語、韓国語、ベトナム語、ネパール語による電話・チャットサポートに対応しています。
東京駅や関西国際空港の外国人観光案内所、中部国際空港駅構内の「名鉄トラベルプラザ」のほか、東京・新大久保や大阪・難波のGTNモバイル店舗でも販売が取り扱われます。
利用者は手交された専用QRコードを読み込むだけで、国内データ通信プランをiPhoneおよびiPadに追加設定することができ、商品(SIM)の手渡しが不要なため、衛生面でのリスクを回避できます。
第一弾は、空港での店頭販売をベースとして対面販売を行い、第二弾としてアプリやウェブサイトから購入できるよう開発を予定しているということです。
そもそもeSIMとは
そもそも、日本ではまだ聞き慣れない「eSIM」とは何なのか、解説します。
SIM(シム)とは「Subscriber Identity Module」の略称で、契約者情報など様々なデータが書き込まれた小さなチップのことです。
SIMをスマートフォンなどのデバイスに入れることで、通話をしたりインターネットを使うことができるようになります。
SIMカード自体は30年ほど前から実用化されており、取り外したり入れ替えたりできる物理的なSIMカードが一般的でした。
これに対し、「埋め込み型SIM」である「eSIM(embedded SIM )」は、あらかじめ端末の内部にチップが埋め込まれており、情報を追加することができます。
そのサイズは物理SIMの中で最も小さいnano SIMの約半分で、デバイスをよりコンパクトに軽量化でき、SIMスロットをなくすことで防水・防塵機能の強化にも貢献します。
物理的なSIMカードのやり取りを省くことができるため、事業者側ではSIMカードの製造コストや、輸送コスト、店舗での管理コストなど、様々なコスト削減につながります。
利用者側でも、SIMカードを店舗に取りに行ったり、自宅に届くのを待つ必要がなくなり、時間と手間を節約することができます。
特に海外旅行では、インターネット経由で時間や場所を選ばずに現地のSIMを購入し、すぐに利用を開始できるため、観光客にとっては非常に便利といえます。
また、物理的なSIMカードを入れ替える必要が無いので、SIMの紛失リスクからも解放されます。
さらにeSIMには複数の契約者情報を保持できるため、利用中の通信会社のネットワークに不具合があれば、別のネットワークにすぐ切り替えるといった対応も可能になります。
海外ではeSIM普及率は急激に上昇中
実は日本以外では、eSIMの普及率は急激に上昇しています。
カウンターポイント・テクノロジー・マーケット・リサーチの調査によれば、2018年におけるeSIM内蔵デバイスの出荷台数は全世界で3億6,400万台でしたが、2025年には約20億台まで増えると予測されています。
今後のIoT化やコネクテッドカーの普及に伴い、スマートフォン以外にも様々な用途で利用されるeSIMの普及率は今後も上昇すると考えられます。
一方で日本の大手キャリアでは、まだ正式なeSIM対応は発表されておらず、eSIM対応に対しては慎重な姿勢を取っているようです。
eSIMに対応すると、従来キャリアの乗り換え時に必要だった物理的なSIMカード交換の手続きや受取りが不要になり、キャリアの乗り換えが容易となるため、キャリアは難しい経営判断を迫られるかもしれません。
しかし総務省はeSIM開放を日本の3大キャリアに対して要請しており、日本でも今後eSIMの普及率は上昇していくと考えられます。
いずれは、eSIMに代表されるリモートSIMプロビジョニングが、セルラー通信のデファクトスタンダードになるでしょう。
手軽さと安心さから、訪日外国人の普及率は上昇する可能性
前述したとおり、海外でのeSIM利用率は上昇しており、従来のポケットWi-Fiと比較してもデバイスを二つ持つ必要がなく、物理的なSIMカードの差し替えの手間もいらないため、訪日外国人のeSIM利用率は普及すると考えられます。
手軽さに加えて、安心の面でもeSIMを選択する人は増える可能性があるでしょう。
孫氏「訪日客向け無料Wi
2020年の訪日外国人観光客数4,000万人を目指して国内ではインバウンド誘致への取り組みが加速しています。訪日外国人観光客向けのネット環境の不整備 は、日本のインバウンド市場が長年直面している課題であり、無料Wi-Fiの増設やプリペイドSIMの販売拡充などさまざまな対策が講じられています。そのような状況の中、ソフトバンクグループ株式会社代表取締役会長兼社長である孫正義氏は、少し意外な発言で日本のインバウンド市場をにぎわせています。目次「訪日客向けの無料Wi-Fiはなくすべき」 孫氏が発言...
無料Wi-Fiはセキュリティリスクが指摘されており、空港やショッピングモールなど多くの人が利用するアクセスポイントで、偽の無料Wi-Fiスポットが出現し、ウイルス感染の被害が起きるなどの事例も確認されています。
また無料Wi-Fiはアクセスポイント付近でしか利用できないため、いざという時に使えないなど訪日外国人が不便さを感じるシーンが少なくありません。
安全性・利便性の観点から、無料Wi-Fiに対し優位性があるeSIMは、より訪日外国人に訴求できる可能性があるでしょう。
訪日外国人のネット事情の変化を理解する
eSIMの普及に期待が高まるものの、無料Wi-Fiの人気も根強いものとなっています。
2017年に観光庁が行った調査によれば、訪日外国人が訪日旅行中に最も利用した通信手段は「無料Wi-Fi」が53.8%と、2位のモバイルWi-Fiルーター(33.8%) を大きく引き離してトップとなりました。
無料Wi-Fiのサービス自体も拡充傾向にあり、NTTドコモは、2020年3月からdポイントクラブ会員向け公衆無線LANサービス「d Wi-Fi」の提供を開始しました。
訪日外国人でも無料でdポイントクラブ会員に登録し、全国のカフェ、コンビニ、ファストフード、空港、駅などさまざまな場所で無料Wi-Fiスポットを利用できます。
現時点では、無料Wi-Fiがあれば訪日外国人にとって便利なのは間違いないでしょう。
ただ、前述の通り、2025年にはeSIM内臓デバイスが約20億台まで増えるとの予測もあります。訪日外国人が日本国内でネットを利用する時に、eSIM対応データプランを利用することは、今後大きな選択肢の一つとなりえます。
eSIMの普及にともない、コネクテッドカーなどのIoT周辺領域の普及も加速する可能性もあります。観光分野においても、総務省がIoTを取り入れた施策が進められていますが、まずは仕組みを理解することで、連動したサービスの利用やコンテンツ造成の下準備をしておくべきといえるでしょう。
総務省が進める「IoTおもてなしクラウド事業」のインバウンド事業者にとってのメリット・課題とは?:訪日客の言語・目的地情報などをクラウドに保
訪日外国人が来日し、移動、観光、買物、ホテルへのチェクインなどを行う際に、より精度の高い情報を元に接客、対応を行うために、訪日外国人の属性情報を元にした多様なサービス連携を目指す仕組み「IoTおもてなしクラウド事業」が始まっています。これは総務省が東京オリンピック・パラリンピックが行われる2020年にサービス開始を目指しているものです。インバウンド対策にお困りですか?「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウンドの集客や受け入れ整備のご相談に対応します!訪日ラボに相談し...
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<参照>
PRTIMES:店頭即時発行のプリペイド型eSIM対応 国内データ通信サービスをiOS向けに11/16から提供開始!
Counterpoint:Shipments of eSIM-based Devices to Reach Nearly 2 Billion Units by 2025
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