総務省が進める「IoTおもてなしクラウド事業」のインバウンド事業者にとってのメリット・課題とは?:訪日客の言語・目的地情報などをクラウドに保管し細やかなサービスを実現 2020年に向けてサービス開始を目指す

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訪日外国人が来日し、移動、観光、買物、ホテルへのチェクインなどを行う際に、より精度の高い情報を元に接客、対応を行うために、訪日外国人の属性情報を元にした多様なサービス連携を目指す仕組み「IoTおもてなしクラウド事業」が始まっています。これは総務省が東京オリンピック・パラリンピックが行われる2020年にサービス開始を目指しているものです。

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IoTおもてなしクラウド事業とは

IoTとはそもそも「Internet of Things」の略で、モノのインターネットと訳されます。これはモノがインターネットに繋がることによって、様々な情報のやり取りが行われ、互いに情報を交換することで制御を行うというものです。

  1. 基本的にはモノに搭載された各種のセンサーによって情報を取得
  2. インターネット経由でこの情報をクラウド上に保管
  3. クラウド上の情報を分析
  4. 分析結果によってモノからフィードバックが人間の持つスマートフォンなどにインターネット経由で送信される

という流れを取ります。

IoTおもてなしクラウド事業の場合

  1. 訪日外国人の個人の属性情報をスマートフォンなどからクラウド基盤に情報として登録
  2. ICカードを発行
  3. クラウド上の情報を分析④訪日外国人が利用するサービスごとにこの情報をクラウドから呼び出し

という流れとなります。①で登録出来る個人の属性情報としては、性別、年齢、血液型、出身(言語)、目的地、パスポート情報、チケット情報 などがあります。こうした情報は実際の接客の場面で始めからわかっていれば、より細やかなサービス提供が可能となります が、いちいち聞き出すのも時間がかかりますし、難しいものです。

そこでIoTおもてなしクラウド事業の狙いとしては、こうした情報を予め登録しておき、その情報を反映したICカードを観光の際に使用することで、観光施設へのスムーズな入場、レストランでの食の禁忌情報(宗教的なもの、アレルギーなど)、訪日外国人の自国語での情報提供、宿泊施設へのスムーズなチェックインなどを実現することを目指しています。

IoTおもてなしクラウド事業に関わる様々な地域実証が行われている

こうしたIoTおもてなしクラウド事業に関しては様々な実証実験が行われており、千葉・幕張・成田地区ではホテルのチェックイン、美術館へのチケットレス入場、デジタルサイネージによる自国語での観光情報・経路案内等の提供などのほか、レストランでのスムーズなサービスの提供が行われ、六本木・虎ノ門エリアでは、空港からリムジンバスを利用しホテルに宿泊する訪日外国人に対するスムーズな情報伝達・チェックイン、スムーズな免税手続き、レストランでのスムーズな情報提供の実証を実施しています。渋谷地区では音楽イベントへのチケットレス入場、デジタルサイネージによる自国語での観光情報の提供の実証などが実施されてきました。

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IoTおもてなしクラウドの課題

訪日外国人の属性情報を活用してオーダーメイドに近い形で訪日外国人の受け入れが出来るのであれば、IoTおもてなしクラウドは素晴らしいもののように思えますが、課題が無いわけではありません。まず大きなボトルネックになる可能性が高いのが、訪日外国人がその属性情報を自発的に、そして自然に登録出来る仕組みを構築すること です。

計画では「おもてなしカード」(※ICカード)の発行の前の属性登録の方法については、旅行代理店、航空会社等との連携をすることで登録をしてもらう、旅行者が自発的に属性登録するようなサービスについて、多様なサービス提供者が参画できる仕組みを検討しているようですが、実証実験の結果からはアジア系の訪日外国人は比較的気軽に登録したものの、欧米系の人たちはセキュリティーに関する意識の違いから、登録に不安を感じた方が多かったようです。

事業者側にとっては事前に訪日外国人の属性情報がわかるために接客はしやすくなると言えるものの、どのような情報をどれだけ登録するのかは訪日外国人に委ねられており、事業者側にとってメリットを感じるほどの情報が登録されていない限り、事業者側の関心は高まらない でしょう。また、訪日外国人が提供先への情報開示を許諾している場合は、事前にその情報を活かして接客やサービス向上に役立てたいという事業者もいますが、こうした情報の量と質を均質化するのは簡単ではないでしょう。

また、オリンピック、パラリンピック組織委員会が保有する、競技情報、ボランティア情報、チケットの販売、グッズ販売、メルマガ配信などの情報と、訪日外国人がICカードを使用することでアクセスすることになるクラウド基盤(おもてなしクラウド)のデータを連携し、訪日外国人がオリンピック、パラリンピック組織委員会が提供する情報、サービスもスムーズに使用出来るようにする案なども上がっており、さらには2020年の東京オリンピック・パラリンピック後にレガシーとして残すために、外国人および日本人を対象にマイナンバーカードとの連携も検討されています。

このように、計画では様々なデータ連携が検討されていますが、ここまで膨大なデータを全て連携した場合、不具合は発生しないのか?という懸念は、マイナンバー制度の現状を見るとごく当たり前の疑問として浮かんできますし、ハッキングによって訪日外国人の属性情報が流出しないのか?などの懸念もあります。

様々な課題が立ちはだかるが、成功は絶対条件

実現すれば非常に利便性が高いであろうIoTおもてなしクラウド事業ですが、堅牢なシステムの構築、強固なセキュリティー、様々なデータ連携、訪日外国人に自発的に情報を登録してもらう仕組み、事業者間で情報を利用する場合のルール整備、オリパラ開催後にどのようにレガシーとして運用していくのかなど、スムーズな実現は簡単ではないでしょう。しかし2020年に東京オリンピック・パラリンピックに合わせて総務省が旗を振って行う事業なだけに、世界からの注目も高く失敗は許されません。

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訪日ラボ編集部

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