孫氏「訪日客向け無料Wi-Fiもういらない!」 発言の裏に隠された近年の訪日客の通信手段の実態とは?これからはローミング&SIMの時代か

2020年の訪日外国人観光客数4,000万人を目指して国内ではインバウンド誘致への取り組みが加速しています。

訪日外国人観光客向けのネット環境の不整備 は、日本のインバウンド市場が長年直面している課題であり、無料Wi-Fiの増設やプリペイドSIMの販売拡充などさまざまな対策が講じられています。

そのような状況の中、ソフトバンクグループ株式会社代表取締役会長兼社長である孫正義氏は、少し意外な発言で日本のインバウンド市場をにぎわせています。

「訪日客向けの無料Wi-Fiはなくすべき」 孫氏が発言 Wi-Fiよりもローミングを

ソフトバンクグループの第37回定時株主総会の場で、インバウンド向けの無料Wi-Fiサービスについて問われた孫正義氏は、

「無料WI-Fiについてはなくすべきかなと最近は思っています。というのも、オリンピックのたびに、無料WI-Fiでさまざまな被害が起きています。それはセキュリティの問題です。無料Wi-Fiスポットを名乗ってですね、セキュリティの穴をうまく活用して、悪い人が悪さをするという被害が大量に発生しています」

「無料Wi-Fiよりもむしろ、世界中の携帯事業者とデータのローミングをもっと、アンリミテッドなローミングをすることによって、無料WI-Fiなんかを使わなくても、日本のLTEは世界で最も優れた容量とカバー率をもっていると思いますけど、そのほうがセキュリティを保てて、かつ面倒くさくないと最近は思っています」

「もしかしたら無料Wi-Fiのほうがいいんだという人が世界にもいるかもしれませんので、それはそれでセキュリティの面も別途解決するいい方法があるのかどうか、総合的な問題の解決方法を考えたいと思います」-engadget 日本語版:「訪日客向けの無料Wi-Fiはなくすべき」ソフトバンク孫社長、株主総会でコメントより引用

と発言。訪日外客数が急増し、インバウンド市場が拡大する中、安全性という観点での問題が少なからずとも存在する無料Wi-Fiをなくし、国際ローミングの接続環境を整備していくべきだ、との発言をしています。

国内で無線通信サービスの普及を進めているソフトバンク。インバウンド受け入れのために無料Wi-Fiの整備は必要不可欠といわれてきましたが、それを裏返すようなこの発言の真意は何なのでしょうか?

オリンピックなど大規模なイベント中は無料Wi-Fiを悪用した犯罪が多発!利用時も場所・時間が限られる

無料Wi-Fiにはセキュリティー上の問題があることに加え、観光客にとって利便性が低いものであるということが言えます。

フリーWi-Fiの課題その1:セキュリティー上の問題

例えば、オリンピック・パラリンピックやワールドカップなど、世界中から多くの人々が開催都市に訪れるような大規模なイベント時では、近年、無料Wi-Fiを悪用した犯罪が多発しています。サイバー犯罪やテクノロジー関連の情報を配信する伊メディアHackReadによると、リオオリンピックが開催された際、同地では観光客からオンラインの情報を抜き取るために、複数の「偽の無料Wi-Fiスポット」が発見されたとのこと。

スタジアム周辺や、ショッピングモール、空港やカフェなど多くの人がアクセスポイントを求める場所で"Olympics Rio 2016"や"Rio 2016"など、いかにも本物らしい無料Wi-Fiスポットが出現し、ウイルスへの感染などの被害も報告されています。大規模なイベントは日本国内外問わずハッカーの大きなターゲットになるため、同メディアでは国際ローミング機能やプリペイドSIMの利用などを喚起し、観光客に注意を呼び掛けています。

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フリーWi-Fiの課題その2:利便性の問題

また、海外旅行者はさまざまな場所を周遊します。アクセスポイント付近でしかインターネットが使えない無料Wi-Fiは、情報が欲しい時に手に入らない、写真・動画をSNSに投稿できないなど多少不便な面があります。少々値段は高くつきますが、安全性・利便性という観点から、訪日外国人観光客に、無料Wi-Fiではなくローミングによってネットを利用してもらうようにするべきだとの主張は理に適っている部分があるといえます。

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実際に、訪日外国人観光客のうちどれぐらいの割合の人が、無料Wi-Fiをネットへの接続手段として利用しているのでしょうか?

訪日旅行中に利用した接続手段としては無料Wi-Fiがダントツでトップに

訪日外国人観光客が利用する通信手段:観光庁「訪日外国人旅行者の国内における受入環境整備に関するアンケート」より
訪日外国人観光客が利用する通信手段:観光庁「訪日外国人旅行者の国内における受入環境整備に関するアンケート」より

2017年2月7日に発表された観光庁訪日外国人観光客向けに行ったアンケート調査「訪日外国人旅行者の国内における受入環境整備に関するアンケート」によると、 訪日外国人観光客にもっとも利用された通信手段としてトップだったのが、無料Wi-Fi(53.8%) でした。

2位がモバイルWi-Fiルーター(33.8%) であったことも加味すると、訪日外国人観光客の多くがWi-Fiを通じてインターネットを利用していることがわかります。

インバウンドにおいて、無料Wi-Fiは旅行中に必要不可欠なものになっていると仮定すると、今回の孫氏の発言は、すこし行き過ぎでは?という印象を抱くかもしれませんが、片方で訪日外国人観光客の通信手段が多様化してきているというデータもあります。

最近ではSIMカードや国際ローミングも国によってはとても使われる通信手段になっている

[SIMカード]75.8%のインドネシア人が訪日時にSIMカードの利用を検討!香港人はSIMカードの利用率が34.7%と高い結果に

SIMカードの国別の利用意向:観光庁「訪日外国人旅行者の国内における受入環境整備に関する現状調査」より
SIMカードの国別の利用意向:観光庁「訪日外国人旅行者の国内における受入環境整備に関する現状調査」より

2016年1月12日に発表された観光庁による「訪日外国人旅行者の国内における受入環境整備に関する現状調査」結果では、訪日外国人観光客が訪日旅行時に使う予定である通信手段(青)、実際に利用した通信手段(赤)を紹介しています。

どの国でも多くの人が無料Wi-Fiの利用意向・利用を示している結果になっていますが、特筆するべきは 香港・タイ・インドネシアとアジア圏からの訪日外国人観光客を中心にSIMカードの利用意向が高くなっている点。 訪日タイ人観光客と訪日インドネシア人観光客では、それぞれ40.5%、75.8%がSIMカードを利用したいと回答。実際に利用したのはそのうち18.9%、9.5%と少ない結果になりました。

しかし、訪日香港人観光客の間では48.4%が訪日観光時にSIMカードの利用を希望しており、そのうち34.7%が実際に利用。 無料Wi-Fiには及びませんが、SIMカードも主要な訪日観光時の通信手段となっている ことが把握できます。

[国際ローミング]訪日アメリカ人・イギリス人・中国人に限ると国際ローミングが主流に

訪日旅行時の通信手段:観光庁「WI-FI利用に係る調査結果(詳細版)」より
訪日旅行時の通信手段:観光庁「WI-FI利用に係る調査結果(詳細版)」より

2015年3月16日に総務省が発表したWI-FI利用に係る調査結果(詳細版)では、訪日アメリカ人観光客、訪日イギリス人観光客、訪日中国人観光客を対象にした訪日旅行時の通信手段に関してのアンケート調査が行われています。

この資料によると、上記3国出身の訪日外国人観光客の間では 国際ローミング経由でインターネットに接続する場合がもっとも多い結果(53.8%)になりました。 次いで多かった選択肢が無料Wi-Fi(48.8%)、プリペイドSIM(40.5%)となっており、ここでもやはりプリペイドSIMは訪日時の通信手段として重要な選択肢となっています。

このように、近年のインバウンドでは無料・有料Wi-Fiに加え、国際ローミングやプリペイドSIMを経由して訪日旅行時にインターネットを利用する人も多くなっています。

まとめ:多様化する訪日客のネット接続手段 これからはローミング・SIMの時代に?!

訪日外国人観光客がインターネットに接続する場合、無料Wi-Fiがもっともよく使われています。しかし、先述の通り、アジア圏からの訪日外国人観光客の間ではプリペイドSIMへの関心が高かったり、訪日アメリカ人観光客、訪日イギリス人観光客、訪日中国人観光客の間では、すでに無料Wi-Fiよりもデータローミングを経由してインターネットに接続している割合の方が大きいといった事実も存在しています。

孫氏が発言したように無料Wi-Fiは安全性・利便性の観点から問題があるため、これからはSIMや国際ローミングを通じたネット接続を行う訪日外国人観光客の割合は増えていき、訪日外国人観光客のネット接続手段はさらに多様化していくかもしれません。

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