SDGsとは「持続可能な開発目標」のことであり、貧困削減や気候変動、ジェンダー平等など、地球の環境を守るための目標であり、観光産業もSDGsへの対応が求められつつあります。
特にコロナ禍で世界中で起きているオーバーツーリズムへの反省とサステイナブルツーリズムの加速もあり、日本の観光産業におけるSDGs視点の導入と展開が不可欠であるといえるでしょう。
この記事ではSDGsの概要と、SDGs達成に向けた観光産業の役割、日本を含む各国における取り組み事例を紹介します。
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海外で認知が進む、SDGsとは?観光産業に求める役割も解説。
SDGsは世界中で注目される目標となっていますが、日本では海外に比べ認知がまだ低い状況にあります。
ここではSDGsについての概要と、観光産業で求められるSDGsについて紹介します。
そもそもSDGsとは?日本と海外との認知度の差
SDGsとは「Sustainable Development Goals」の頭文字をとったもので、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されており、貧困や気候変動、環境悪化、不平等などの課題をなくすことで、より良い世界を目指す国際目標です。
SDGsは2015年に国連サミットで採択されており、17の目標と169のターゲットがあります。
持続可能な開発目標 | |
---|---|
1 | 貧困をなくそう |
2 | 飢餓をゼロに |
3 | すべての人に健康と福祉を |
4 | 質の高い教育をみんなに |
5 | ジェンダー平等を実現しよう |
6 | 安全な水とトイレを世界中に |
7 | エネルギーをみんなに。そしてクリーンに |
8 | 働きがいも経済成長も |
9 | 産業と技術革新の基盤をつくろう |
10 | 人や国の不平等をなくそう |
11 | 住み続けられるまちづくりを |
12 | つくる責任。つかう責任 |
13 | 気候変動に具体的な対策を |
14 | 海の豊かさを守ろう |
15 | 陸の豊かさも守ろう |
16 | 平和と公正をすべての人に |
17 | パートナーシップで目標を達成しよう |
海外においてはすでにSDGs、また観光分野におけるSDGsの推進に関する関心が高まっています。
JTB総合研究所の日本人と英語圏の外国人を対象とした「旅行者のSDGsに対する意識調査」(2019年)では、SDGsの認知度については、外国人が84.2%、日本人が29.8%と、大差が付いています。
またSDGsに配慮した旅行の必要性に対して、外国人の96.7%が「必要だと思う」もしくは「まあ必要だと思う」と回答しています。
一方、日本人は同様の質問に対して必要だと考えている人の数は75.2%に留まっています。
ただし、コロナ禍をきっかけに世界中で自身や企業の行動がどのように環境に影響を与えるかという考え方の台頭に拍車をかけました。
観光産業においてもその考え方が広まり、観光客の急増による「オーバーツーリズム」への対応が求められ、SDGsの視点を取り入れた「サステナブルツーリズム(持続可能な観光)」に対する取り組みがより一層必要とされています。
SDGsにおける観光業の5つの役割
では、なぜ観光産業においてもSDGsの推進が求められるのでしょうか。
国連世界観光機関(UNWTO)によれば、観光産業は世界のGDPの10%を占めており、世界で働く11人に1人が観光関連の仕事に従事しているほど、経済に対して影響力の大きい産業といえます。
また国境を超えた国際観光も拡大しており、2030年に18億人の国外から到着した観光客数は2030年に18億人と予想されています。
このように大きな経済規模を有する観光産業は、経済分野だけではなく、自然環境や文化、社会に与えるインパクトも大きいため、社会的責任という意味ではSDGsの推進も求められています。
そこで、2017年に定められ、UNWTOが主導した「開発のための持続可能な観光国際年(International Year of Sustainable Tourism for Development/IYSTD)」では、観光産業がSDGsに貢献する5つの領域を示しています。
- 包括的で持続的な経済成長
- 社会的包摂・雇用創出・貧困軽減:
- 資源の効率化・環境保護・気候変動
- 文化的価値・多様性・遺産
- 相互理解・平和・安全
海外におけるSDGsに関する取り組み事例
前述したように、海外ではSDGsに対する認知度が高いため、すでに観光に関わる企業や団体からSDGsの達成に向けた取り組み事例が数多く出てきています。
ここではデンマークとフィンランドの事例を紹介します。
Wonderful Copenhagen(デンマーク)|DMOからSDGs達成目標を発信
デンマーク・コペンハーゲン首都圏のDMOであるWonderful Copenhagenは、持続可能な観光戦略である「Tourism for Good」の下に、国連が掲げたSDGs目標への貢献を目指した取り組みをしています。
具体的には、2021年までに以下の目標達成を目指しています。
- 観光業の継続的な成長は地元住民の80%によって支えられること
- 大規模複合施設の100%および大型ホテルの90%において第三者機関によるサステナビリティ認証の取得
- 食料・飲料のオーガニック転換率を90%にすること など
フィンランド政府観光局|持続可能性を考慮した観光業者の認定制度創設
フィンランドの政府観光局「Visit Finland」は2020年末に「Sustanable Travel Finland」というプログラムに基づき、企業や地域に対して持続可能な開発プロセスや環境にやさしい観光のためのツールを提供する取り組みを実施しています。
経済、生態学、社会、文化的な持続可能性の4つの側面に焦点を当て、プログラムの基準をクリアした企業や観光地に認証を与えています。
また旅行者向けの公式トラベル・ガイド「VisitFinland.com」でも認証を授与されたホテルや旅行会社、観光施設などの観光業者の情報を載せています。
フィンランド政府観光局は、この取り組みによりフィンランドを訪れる観光客がSDGsを意識した旅行を選びやすくなるだろうと述べています。
国内観光事業者のSDGsに関する取り組み事例
日本の観光事業者からも、SDGsに向けた取り組み事例が複数あります。ここでは日本の星野リゾートと中部観光バスの取り組みについて紹介します。
星野リゾート|「勝手にSDGs」で企業と地域の共存を目指す
日本のリゾートチェーン大手である星野リゾートは「勝手にSDGs」を掲げ、ホテルと地域は一心同体であるという考え方に基づき、地元の伝統工芸、農林水産物、観光資源を活用しながら、環境汚染、気候変動、エネルギー利用などの地域問題の解決に関する取り組みを行っています。
具体的にはシャンプーやリンスなどの詰め替えポンプボトルの使用、ペットボトル入りミネラルウォーターの廃止、廃棄物の再資源化率100%などの施策が行われています。
他にも地域によりツキノワグマの保護管理施策を行うことによって、クマと人の共生に貢献するといったユニークな取り組みをしているところもあります。
関連記事
SDGsと観光産業の関係:OTAの取り組み・海外事例・星野リゾートはツキノワグマ保護管理
中部観光|SDGs教育促進の「富山型SDGs TOUR」を開催
中部地方を中心に貸切バス業主体の旅行業を営む中部観光では、「環境、学習、経済」の3つの方向性で、複合的に課題の解決について考えるきっかけを作り、SDGsと地方創生に貢献する取り組みをしています。
主な取り組みとして、社内のSDGs検定合格者の監修による「富山型SDGs TOUR」の開催があります。
富山型SDGs TOURでは、「住みやすい街づくり」「伝統文化・食文化」「海の豊かさ」・「天然資源」、「地域の伝統産業」「防災」などのテーマをツアー造成に取り組んでおり、実際に体験・学習することによって、SDGsの周知と理解を図り、今後富山の持続可能な発展につなげていくことに寄与すると期待されています。
観光業でもSDGs貢献へ
海外ではすでにSDGsは人類の未来に向けた重要な指標として認知されています。
一方で日本ではSDGsに関する認知が海外と比べると遅れており、日本の観光企業での取り組みが開始されたばかりです。
ただしコロナ禍の影響で個人レベルでも意識は高まっており、観光分野においてもSDGsに取り組むことは、アフターコロナにおけるインバウンド客の需要に応える意味でも重要になってくるといえるでしょう。
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<参照>
・JTB総合研究所:旅行者のSDGsに対する意識調査
・UNWTO:2017 INTERNATIONAL YEAR OF SUSTAINABLE TOURISM FOR DEVELOPMENT
・Wonderful Copenhagen:Tourism for Good
・フィンランド政府観光局:SUSTAINABLE TRAVEL DESTINATIONS AND COMPANIES IN FINLAND
・星野リゾート:勝手にSDGs
・中部観光:富山型SDGs TOUR
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