東京五輪開催まで1か月を切りました。国内では未だ中止を望む声も多く、受け入れ観客数をはじめとする開催方式も問われています。
海外に目を向けると、コロナ下での開催となる東京五輪についてはやはり賛否が分かれている状態です。新型コロナウイルス感染症の懸念を示すメディアもある一方、経済面から開催を後押しするメディアまでさまざまです。
本記事では、海外メディアによる五輪についての報道や見解を見てみましょう。
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五輪開催を比較的支持する論調のメディア
開催1か月を切った中でもなお開催の可否が問われている東京五輪ですが、海外メディアでは開催を後押しする内容の報道もあります。
「開催1か月前」という時期や五輪が生み出す経済効果を踏まえると、中止は現実的でないと考えているようです。
加CBC「東京五輪を中止するには遅すぎる」
カナダの公共放送局CBCは、開催中止の選択肢には否定的です。東京五輪に反対する声が多いことに触れたうえで、「中止するには遅すぎる」との見解を2021年6月23日に示しました。
そうした中で、「五輪主催者は、大会のために用意された特別な感染症対策について、一般市民やメディアに教育することでもっとうまく進められたはず」と述べています。
海外メディアには、主催者側の開催方式やコロナ対策についての説明不足が映ったということでしょう。
米NBC NEWS 中止には経済的リスクが大きいとの考え
アメリカのNBC NEWSは、「東京五輪は国民の反対の波を受けた後、開催に近づいている」として、主催者は開催を決意していると報道しています。
NBC NEWSは、経済的要因が全てではないとしながらも、五輪の経済効果について指摘しています。
野村総合研究所エグゼクティブエコノミスト木内登英氏が予想した五輪中止時の損失額、約160億ドル(1兆8,108億円)に触れ、「中止となれば現時点で五輪にすでに費やされたお金と同様に、開催中に予想される収入を失っていただろう。」と経済効果の損失に懸念を示しています。
米CBS NEWS アメリカ人の58%が「今夏に開催すべき」と主張していることを明らかに
アメリカのCBS NEWSは、2021年6月にアメリカ市民に対して東京五輪開催についての調査を行ったということです。
CBS NEWSは、同調査から「東京五輪はどうなるべきか」という質問に対して「今夏に開催されるべき」との答えが58%、「延期/中止されるべき」が34%という結果が明らかになったと伝えています。
また、「今夏に開催されるべき」と答えた人のうち、74%はアメリカの参加を望んでいます。「延期/中止されるべき」と答えた人でも、その中の22%の人は「五輪が開催されるのならアメリカの参加を望んでいる。」と答えました。
国民の東京五輪への関心自体は高いままといえるでしょう。
米QUARTZ、スポンサー側の心理を考察
アメリカのニュースサイトQUARTZは、「コロナの暗雲が立ち込める中でもブランド(スポンサー)はオリンピックを辞めることができません」と題した記事を公開しています。
多くの東京五輪のスポンサー企業は、既に莫大な費用を持って4年間のスポンサー契約をしており、東京五輪開催で得られる利益を長期的に見据えていました。
QUARTZは、「企業の経済的利益を考慮すると、五輪はもはや『後には引けない』ところに来ている」という論調で報じています。なお、利益については、五輪のスポンサー企業は長期的なヒットが期待できることから、コロナ下であっても利益は出るとしています。
また、「コロナには障害がありますが、克服できないものではありません」と主張し、「世界的なスポーツの祭典を開催すること以上に、コロナの獣を退治して世界が戻ってきたことを発表する方法があるだろうか?」と問いかけています。
日本が「コロナに打ち勝った証」は五輪開催によって証明されるという考えです。
開催に否定的なメディア
一方、日本の感染状況や新たな変異株の流行から、五輪開催を危険視するメディアがあるのも事実です。中には国内の観客を受け入れるという主催者の方針に疑問を呈している報道も見られ、開催方式も注目されていることがわかります。
英BBC コロナの危険性を懸念
イギリスのBBCは「世界的大流行の真っ只中にある個人および公衆衛生への懸念があります。」として東京五輪への懸念を表しています。中止されれば甚大な経済効果の損失リスクがあるということに理解を示してはいるものの、開催に否定的な立場です。
記事タイトルは「なぜ日本はオリンピックをキャンセルしないのですか?」とつけられており、開催そのものを危険視していることがうかがえます。
米The Hollywood Reporter パンデミック下の五輪開催を危険視、「モラルハザード」という言葉も
アメリカの週刊誌、The Hollywood Reporterは、NBCUniversalが五輪の放映権を獲得していることについて、「NBCがパンデミック時の『モラルハザード』に近づいている」としています。
NBCへの批判的な見解を通して、The Hollywood Reporterは東京五輪そのものが危険であると示していると考えられます。
6月22日時点で日本のワクチン接種完了者率が人口比6%だったことに触れたうえで「数十億人が危機に瀕している」と述べています。五輪開催への懸念が見て取れます。
米Washington Post 「危険すぎる」と不安を明確に
アメリカのWashington Postは、6月19日に来日したウガンダの選手から新型コロナウイルス感染症の陽性者が出たことに注目し、不安をあらわにしました。
完全にワクチン接種を済ませていたことに触れ、ワクチンの壁をすり抜ける変異株の恐ろしさを伝えています。
「公衆衛生の専門家は、インドで最初に検出されたデルタ変異株のような非常に伝染性の高い変異株について特に懸念している。」「ワクチン接種を済ませながら、感染した人たちの症例は警戒を引き起こしている。」などと述べ、変異株の影響力の強さとその危険性を訴えました。
変異株への恐れが国内外で高まっていることから、日本は五輪開催にあたって水際対策をさらに強化していくことが求められるかもしれません。
米USA Today 有観客開催を疑問視
アメリカの大衆紙USA Todayは、web記事で「医療専門家の懸念にもかかわらず、日本の観客が東京五輪で入場を認められる」というタイトルで有観客開催の方針を疑問視しています。
政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長による「五輪を開催するか否かにかかわらず、日本では感染症が再燃して医療体制を圧迫するリスクがあるという」記者会見でのコメントを取り上げ、医師会と主催者の方向性に注目しました。
記事では、「主催者側は、当初期待していたよりもはるかに少ない数のファンであっても、どんなファンでも歓迎したいと考えている。」と伝えられています。
日本の五輪開催への進め方について、主催者と医師会の間でずれがあることを指摘しているということでしょう。
議論は紛糾する中、開催まで一ヶ月を切る
東京五輪を巡る議論は国内でも続いていますが、海外でも同じように賛否が分かれているようです。五輪の必要性を訴えるメディアがある一方で、懸念を示す、危険視するメディアもあります。
日本は、感染症への不安を払拭できるような開催方式を決断する必要があるほか、世界に受容されるような合理的な説明も求められるでしょう。
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<参照>
CBC:Ready or not, the Tokyo Olympics will happen in 1 month
NBC NEWS:Tokyo Olympics are around the corner after waves of Covid infection, public opposition
CBS NEWS:Most Americans think the Tokyo Olympics should go forward
QUARTZ:Even under a dark cloud of Covid, brands can’t quit the Olympics
BBC:Tokyo Olympics: Why doesn't Japan cancel the Games?
The Hollywood ReporterThe Hollywood Reporter:NBC Approaches “Moral Hazard” Amid Tokyo Olympics Push During Pandemic
ロイター通信:米NBCユニバーサル、東京五輪の広告収入は同社史上最高に=CEO
ロイター通信:米NBCユニバーサル、東京五輪7000時間放送へ
USA Today:Japanese fans will be allowed at Tokyo Olympics, despite concerns from medical experts
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