農林水産省は、外国人旅行客が日本滞在中に経験した食体験を帰国後も再体験できるような環境整備を図り、日本産の農林水産物・食品の輸出拡大につなげていく「食かけるプロジェクト」を展開しています。
その一環として、日本各地の食や食文化にまつわる体験を表彰する「食かけるプライズ2021」を実施し、現在全国の食体験を募集しています。農林水産省はこうした「インバウンドを通じた海外需要の取り込み・創出」にも力を入れており、観光業界とも密接な関わりがあります。
今回は農林水産省の淺浦様に直接お話をうかがい、「食かけるプライズ2021」に込めた想いやその他の農林水産省の取り組みについて取材しました。
関連記事:農水省「食×○○」の体験コンテンツ募集、インバウンド向け情報発信を後押し「食かけるプライズ2021」
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「食かけるプライズ2021」とは
日本には単に食べるだけではなく、食×エンタメ、食×アート、食×スポーツ、食×歴史など、食を通じて出会い、知り、深く共感できるような食体験が多くあります。
農林水産省ではそのような食に関わる体験を募集し、集まった事例から素晴らしいアイデアを選定し、日本の食の魅力を訪日外国人に発信することを目的とした「食かけるプライズ」を実施しています。
今年で3回目を迎える本事業。コロナ収束後の外国人観光客の訪日再開を見据え、消費回復を後押しするために「食かけるプライズ2021」を実施し、全国から食体験を募集しています。
募集期間は5月27日から7月19日までです。
公式サイト:日本各地のディープな食体験を世界へ!「食かけるプライズ2021」募集、はじまる。
本事業への想いを農林水産省・淺浦氏に取材
今回、「食かけるプライズ2021」事業や、農林水産省のその他の取り組みについて、農林水産省 大臣官房 新事業・食品産業部 外食・食文化課 食文化室 食文化専門官 淺浦 真二(あさうら しんじ)様に直接お話を聞くことができました。
今年で3回目の「食かけるプライズ2021」
「食かけるプライズ2021」は、2019年の第一回目から数えて今年で3回目の開催となります。
第一回目は全国から167件の応募が集まり、新型コロナウイルスの感染拡大がはじまった2020年の第二回目には予想と反してさらに応募数が増え、225件に達したということです。
前回の盛り上がりについて淺浦氏は説明します。
コロナ禍だからこそ、業界を盛り上げたい
「昨年はコロナ禍での開催となり、どうなることかという思いでしたが、ふたを開けてみれば第一回目を大幅に超える応募があつまりました。
全国の関係者におかれては、苦しい状況だからこそなんとか状況を変えたいと思う方が多かったのだと思います。
食かけるプロジェクトは、当初はオリパラシーズンに訪日する外国人をターゲットに見据えた施策でしたが、コロナ禍によってインバウンドは完全に止まってしまいました。
しかし、縮小する国内市場に対してインバウンド需要の拡大が重要なファクターであり、ポストコロナ時代においてもインバウンドには大きな可能性があることに変わりはありません。
我々のミッションは、インバウンドの誘致促進と、その先にある日本の農山漁村の活性化です。
日本で訪日外国人の方に実際に日本の食を味わってもらい、母国に帰ってからも『あの時の日本の食事はおいしかったな。』と、旅の思い出とともにまた日本食を食べたいと思ってもらう。
つまり、インバウンドをきっかけに輸出につなげていくという仕掛けを我々のセクションで取り組むこととしています。
現在コロナ禍で訪日客が来ない中でも、やれることはあるんじゃないかと思っています。」
受賞者は多面的な支援が受けられる
「食かけるプライズ2021」の受賞者は、副賞として様々な支援が受けられます。食体験動画の制作や越境ECへの掲載に向けた支援もそのうちのひとつです。
こうした支援について淺浦氏は語ります。
「政府は輸出の新たな目標として、2030年に5兆円を掲げています。そのため我々としては、インバウンドを輸出につなげていく取り組みを強化していきたいと考えております。
このため今回の『食かけるプライズ2021』では、『食体験に絡めた食・食品の輸出の実績または強い意欲があるか』という項目を選定基準に追加しています。
また、受賞者には体験に関する農林水産物・食品の輸出商品化に向けた磨き上げや、販路開拓支援及び越境ECへの掲載支援をしていますが、今年はそれらをより強化したいと思っています。
_動画の作成からコンテンツの磨き上げ、越境ECまで。受賞者はいろんな側面からのフォローが受けられるのですね。
「訪日外国人が自国に帰ってからまた食べたくなる日本食というのは、やはり旅先の思い出と紐づいていると思います。日本にいったから日本のものならなんでもいいというわけではなく、おそらく自分が訪れた土地のものを食べたいと思うはず。
海外の方にとってみれば、場所を選ばずどこでも購入できる越境ECというチャネルはとても便利だと思います。その販売チャネルをつくる手助けをしたいですね。」
前回の反響は
前回受賞した方からの反響についても話をうかがいました。前回は、コロナ禍の開催ならではのつながりが生まれたといいます。
「昨年受賞された方は、副賞として作成させていただいた動画をみて大変喜んでいらっしゃいました。
また前回、発表会はオンラインで開催したのですが、オンライン上で交流の場を設けたことで、各事業者が活発に情報交換されていました。こうした横のつながりを創出できたこともよかったと思います。」
今年はどんな事業者の応募を期待しているか?
現在も募集中である「食かけるプライズ2021」。どんな事業者の応募を期待しているかについても聞きました。
「近年、海外の方が日本の食の健康面での特長に着目しています。たとえば発酵食品の注目度が上がっていますね。そういった健康面でのアプローチもおもしろいかと思います。
また今年はいままでなかった賞として、持続可能性や食の多様性への対応など社会貢献に資する食体験を選定する『特別賞』を設けています。インバウンド向けに提供した実績が少なくとも、そういったサステイナブルな価値のあるコンテンツをお持ちの事業者の応募も期待したいです。」
農林水産省のその他の試み
今回取材した「食かけるプライズ2021」のほか、農林水産省が現在取り組んでいるその他の試みについても紹介します。
「SAVOR JAPAN」地域の食、食文化によるインバウンド誘致
海外における日本食・食文化に対する関心は、「和食」のユネスコ無形文化遺産登録、ミラノ国際博覧会等を通じて近年大きく高まっており、日本を訪れて「本場の日本食」を体験したいという外国人のニーズも高まっています。
農林水産省は、地域の食と、それを生み出す農林水産業を核として訪日外国人を中心とした観光客の誘致を図る地域での取組を「SAVOR JAPAN(農泊 食文化海外発信地域)」として認定する制度を平成28年度に創設しています。
「SAVOR JAPAN」認定地域として現在までに31地域が認定されており、認定された地域はJNTOとも連携し、ウェブサイトやSNSでの情報発信のほか、旅行博や商談会に出展し、日本各地のディープな食・食文化を世界に伝えています。
Google Arts & Cultureと連携した食文化発信
農林水産省は、「Google Arts & Culture」と連携し、「SAVOR JAPAN(農泊 食文化海外発信地域)」の郷土料理を始めとした日本の食・食文化をテーマとしたオンラインページを制作し、Googleが提供する「Flavors of Japan - 奥深き日本の食文化を召し上がれ」で公開しています。
当サイトでは日本の食・食文化や、それらに関わる人々にまつわるストーリーを美しいビジュアルとともに紹介しています。
「食かけるプライズ2021」は7月19日まで募集中
今回は農林水産省の淺浦氏に、「食かけるプライズ2021」にかける想いや、農林水産省のインバウンド誘致への取り組みについて取材しました。
訪日観光の誘致も「輸出産業」であり、日本産の農林水産物・食品の輸出拡大を目指す取り組みと表裏一体といえます。日本の魅力を世界に伝え、訪日外国人の滞在期間中だけでなく帰国後も日本の食をはじめとするコンテンツを堪能してもらうことは、今後の日本の持続的発展に必要不可欠といえるのではないでしょうか。
「食かけるプライズ2021」の詳しい応募要項、専用応募フォームについては以下の公式サイトから確認可能です。応募の締め切りは7月19日までのため、関心のある方は公式サイトをご確認ください。
公式サイト:日本各地のディープな食体験を世界へ!「食かけるプライズ2021」募集、はじまる。
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