世界的な新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、世界各国では入国制限などの規制が続けられ、航空会社は依然として大きな影響を受けています。
IATA(国際航空運送協会)がまとめた世界旅客輸送実績によれば、国際線と国内線の合計で、2021年7月は有償旅客の輸送距離を示すRPK(有償旅客キロ)が2019年同月と比較し53.1%減、座席供給量を示すASK(有効座席キロ)が45.2%減、ロードファクター(座席利用率、L/F)が12.4ポイント低下の73.1%となりました。
翌8月については、RPKが56.0%減、ASKが46.2%減、L/Fが15.6ポイント低下の70.0%となっています。
世界の航空需要は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、例年割れの状況が続いています。
いっぽうで航空需要の回復も予測されており、ボーイングは商業・防衛・サービスの3分野において、今後10年間で9兆米ドルの市場規模を予測しています。
また新型コロナウイルスの影響により前年は発表を見合わせていた「ワールド・エアライン・アワード2021」が、航空格付け会社のスカイトラックスによって発表されました。
最優秀航空会社に贈られる「エアライン・オブ・ザ・イヤー」にカタール航空が選ばれ、トップ10はシンガポール航空、全日本空輸(ANA)、エミレーツ航空、日本航空(JAL)、キャセイパシフィック航空、エバー航空、カンタス航空、海南航空、エールフランス航空の順となりました。
ANAは、2018年に続き3度目となる、世界で最も機内が衛生・清潔な航空会社を選出する「World’s Best Airline Cabin Cleanliness」を受賞し、このほかにも空港サービスなどの部門賞を獲得し4部門で1位となりました。
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【アジア】日本は国内線減便続くも、国際線で再開や増便相次ぐ
日本では9月と10月も国内線で減便が続いていますが、国際線ではアジア・北米・欧州路線での再開や増便も相次いでいます。
さらに国内の航空会社では、新型コロナウイルスワクチン接種済みの人を対象としたキャンペーンの開始も発表されました。
日本国内
日本航空(JAL)と全日本空輸(ANA)は、新型コロナウイルスの影響による需要動向を踏まえて国内線の減便を決定し、月間運航率はJALが9月は64%、10月が88%、ANAが9月が64%、10月が73%となります。
国際線については、ANAが北米路線を10月から増便し、東京/羽田〜ワシントン・ヒューストン線を東京/成田発着で運航します。
アジア・欧州路線でも再開や増便を決め、ヤンゴン発沖縄/那覇経由東京/成田行きの臨時便を10月に4便運航します。
ZIPAIR Tokyoは、冬ダイヤ期間の成田-バンコク(スワンナプーム)線、ソウル線、ホノルル線の3路線の航空券を販売開始しました。
夏ダイヤで週2往復だったホノルル線を週3往復に増便するほか、成田~ソウル線のうちソウル発を9月11日から週4便に増便します。
いっぽうスターフライヤーは、新型コロナウイルス感染拡大に伴う需要減退から、国際線全路線の運休期間を2022年3月26日まで延長しました。
航空調査会社のCirium(シリウム)が、東京オリンピック期間中の航空需要の変化についてまとめたレポートによれば、無観客で開催された東京五輪に何万人もの選手や役員、スタッフ、ジャーナリストが入国したことから、日本の航空会社全体の座席数に占める国際線の割合は、大会前、大会期間中ともに平均13%となりました。
また日本トランスオーシャン航空(JTA/NU)、琉球エアーコミューター(RAC)、日本航空(JAL/JL、9201)沖縄支店、日本エアコミューター(JAC/JC)による2021年7月の輸送実績速報値によれば、JTAの旅客数は9万3,584人(前年同月比39.5%減)、提供座席数は24万4,530席(14.6%減)、ロードファクター(L/F)は38.3%(15.7ポイント低下)となりました。
ANAが発表した2021年7月の利用実績では、国際線は旅客数が前年同月比93.7%増の6万5,071人、座席供給量を示すASK(有効座席キロ)は86.9%増の16億9,490万6,000座席キロ、RPK(有償旅客キロ)は2.03倍の4億6,718万1,000旅客キロ、L/Fは2.3ポイント上昇し27.6%となりました。
いっぽう国内線は、旅客数が前年同月比31.1%増の109万6,311人、ASKは0.1%増の18億9,224万7,000座席キロ、RPKは31.4%増の10億1,645万9,000旅客キロ、搭乗率は12.8ポイント上昇して53.7%となりました。
JALの2021年8月利用実績では、国際線の旅客数は前年同月比2.93倍の8万39人、ASK(有効座席キロ)は2.69倍の18億4,330万座席キロ、RPK(有償旅客キロ)は3.22倍の5億6,497万8,000人キロ、L/Fは5.1ポイント上昇し30.7%となりました。
国内線は旅客数が17.0%増の120万7,684人、ASKが6.2%減の20億6,232万座席キロ、RPKは15.2%増の9億2,121万5000人キロ、L/Fは8.3ポイント上昇し44.7%となっています。
またJALグループは9月30日、新型コロナウイルスワクチン接種済みの人を対象としたキャンペーンの開始を発表しました。
国内線の往復航空券の提供や、空港店舗での割引などを用意し、ワクチン接種の奨励やPCR検査などの利用促進を図るものです。
ANAグループも同日、ワクチン接種済みの人を対象としたキャンペーンを発表し、国内線の往復航空券の提供やツアー商品を用意することで、ワクチン接種を後押しし、緊急事態宣言解除後の旅行需要喚起を図ります。
中国
チャイナエアラインは9月4日から、台北/桃園〜名古屋/中部〜シカゴ線の貨物便を、週2便に増便します。
これまで運航していた土曜に、水曜の運航を加え、北米向け貨物搭載スペースの安定供給に寄与し、特に自動車関連産業をはじめとした中部企業の利便性向上が期待されています。
【東南アジア】タイ民間航空公社(CAAT)が国内便運航再開、シンガポール航空のアメリカ路線も回復
東南アジアでは、タイ民間航空公社(CAAT)が国内便の運航を再開したほか、シンガポールでも北米路線の再開がみられています。
タイ
タイ国際航空は冬スケジュール期間中、大阪/関西〜バンコク線を週5便、東京/成田・名古屋/中部〜バンコク線を週4便運航します。
東京/羽田〜バンコク線は9月1日から運休していますが、2022年1月1日から週3便で再開する予定です。
またタイ民間航空公社(CAAT)は8月29日、新たなガイドラインを公表し、9月1日から国内便の運航を再開しました。
シンガポール
シンガポール航空は、11月1日からフランクフルト〜ニューヨーク線を1日1便、11月2日から香港〜サンフランシスコ線を週3便で再開します。
ワクチン接種の進展や需要回復の期待、貨物需要の高まりなどを背景としたもので、これによりシンガポール航空のアメリカ路線は、新型コロナウイルス感染拡大前の65%の水準へと回復します。
フィリピン
フィリピン航空は、9月4日にアメリカ連邦破産裁判所へ連邦破産法11条(チャプター11)の適用を申請しました。
新たな資本の注入や債務削減により、財務基盤を強固なものとして運航は継続し、旅行需要の回復に合わせ増便も検討します。
ベトナム
ベトナムのFLCグループのフルサービス航空会社であるバンブー・エアウェイズは、東京/成田〜ハノイ線を11月2日に開設します。
また同社とサンフランシスコ国際空港は、ベトナムとアメリカの定期便の運航を開始するための覚書を締結しました。
ホーチミン〜サンフランシスコ線を開設予定で、サンフランシスコには両国を結ぶ直行便が唯一乗り入れることとなります。
またベトナム航空は9月21日から、日本発のベトナム2都市行き片道便の運航を開始します。
日本を含む外国籍の人向けの運航で、ベトナム人は原則利用できず、夏ダイヤ最終日となる10月30日までは成田発のホーチミンとハノイ行きを運航し、翌31日からの冬ダイヤでは成田発に加えて関西発も設定します。
【北・南米】ユナイテッド航空が羽田線増便、カナダでレジャー路線再開相次ぐ
北・南米では、旺盛な貨物需要を背景にユナイテッド航空が日本路線を増便するほか、カナダでもレジャー路線の再開が相次いでいます。
アメリカ
ユナイテッド航空は、旺盛な貨物需要を受けて、東京/羽田〜シカゴ線を11月1日から週5便に増便します。
デルタ航空は、年末年始の帰国需要を受けて、名古屋/中部〜デトロイト線で臨時便を12月に2往復運航します。
またハワイアン航空は、10月も日本線2路線の運航を継続します。
ノーザンパシフィック航空は、アンカレッジを拠点としたアメリカと東アジア間の就航を目指し、ボーイング757-200型機6機を購入すると発表しました。
またアメリカ運輸省は、アメリカの定期便を運航する航空会社全体で、2021年第2四半期(2021年4月〜6月)に、新型コロナウイルス感染拡大後初となる税引後利益を計上したと明らかにしました。
カナダ
エア・カナダのレジャー航空会社であるエア・カナダ ルージュは、9月7日からトロント〜ラスベガス・オーランド・レジーナ線の3路線の運航を開始しました。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響により今春から運航を停止していましたが、9月にはこのほか、カンクンやタンパなどレジャー路線の運航も再開します。
またエア・カナダは9月7日から、ワクチン接種完了を条件とした外国人旅行者の受入再開を受けて、成田/バンクーバー線を週3便から週5便に増便しました。
さらに同社は9月27日から、カナダとインドを結ぶ直行便の運航を再開しました。
トロント・バンクーバー〜デリー線の3路線を再開しており、将来的にはトロント〜ムンバイ線を合わせた3路線の運航を再開し、モントリオール〜デリー線の開設も予定しています。
【オセアニア】ニュージーランド航空、成田線の週1便運航を継続
オセアニアでは、ニュージーランド航空が2022年3月まで、東京/成田〜オークランド線の週1便運航を継続する予定です。
ニュージーランド
ニュージーランド航空は2022年3月26日まで、東京/成田〜オークランド線の週1便運航を継続します。
搭乗できるのは日本またはニュージーランド政府の入国条件を満たす人に限られ、東京/成田発は土曜、オークランド発は金曜にボーイング787-9型機で運航します。
大阪/関西〜オークランド線は、引き続き運休します。
【ヨーロッパ】フィンエアー、日本路線の再開や増便決定
ヨーロッパでは、ルフトハンザ・ドイツ航空が東京/羽田・大阪/関西〜ミュンヘン線を引き続き運休すると決定しました。
いっぽうフィンランドでは、フィンエアーが日本路線の運航再開や増便を決定しています。
ドイツ
ルフトハンザ・ドイツ航空は、新型コロナウイルスの影響により運休し、運航再開予定日をたびたび延期していた東京/羽田・大阪/関西〜ミュンヘン線について、運休を決定しました。
すでに名古屋/中部〜フランクフルト線も運休が決定しており、同社の日本路線は東京/羽田〜フランクフルト線のみとなり、2022年1月16日まで週5便が運航されます。
またルフトハンザグループは、アメリカ政府による渡航制限の緩和が発表されてから、予約数が前週と比べ40%増加したと明らかにしました。
同グループの航空会社は段階的に増便しており、全米の17都市へ週200便以上運航しています。
オランダ
KLMオランダ航空は冬スケジュール期間中、アムステルダムとオーランド、マイアミ、ラスベガスを結ぶ3路線を運休します。
アメリカを高リスク地域に指定したことによるものです。
フィンランド
フィンエアーは、大阪/関西〜ヘルシンキ線の運航を10月1日より週1便で再開するほか、東京/成田〜ヘルシンキ線を10月2日から週4便に増便します。
また冬スケジュール期間中は日本線3路線を運航し、名古屋/中部〜ヘルシンキ線を2022年2月に再開します。
【中東】エミレーツ航空、エアバスA380型機運航再開進める
中東では、アラブ首長国連邦のエミレーツ航空が、各国の入国規制緩和にあわせ、エアバスA380型機の運航再開を進めています。
アラブ首長国連邦
エミレーツ航空は、新型コロナウイルスの影響を鑑み、すでに予約日から最大24か月に延長していた航空券の有効期限を、さらに最大36か月まで延長しました。
同社は2020年3月以降、200万人以上の利用者に対して日程や目的地変更、旅行クーポンへの交換などのオプションを提供しており、92,000人以上が旅行クーポンへ交換し、うち約4割にあたる38,000人以上が実際に利用しています。
さらに新型コロナウイルスの感染拡大以降、約330万件の払い戻し申請にも応じています。
また同社は、各国の入国規制緩和に合わせて、11月までにエアバスA380型機の就航都市数を27都市に拡大します。
現在、新型コロナウイルス感染拡大前の90%にあたる120都市以上へ運航を再開し、年末までに供給容量の70%まで回復させる計画を進めており、50機以上のエアバスA380型機の運航再開を予定しています。
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