MaaSに取り組む事業者を紹介 有名企業から国土交通省の支援する「日本版MaaS支援事業」まで

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MaaSとは、鉄道やバス、タクシーなどさまざまな交通機関のサービスをITで結びつけ、人々が効率良く使えるようにした次世代の交通サービスのことです。

日本でも国を挙げてMaaSを推進しており、さまざまな企業や団体がMaaSに関する事業に取り組んでいます。

本記事では、MaaSを取り扱っている企業や団体について解説します。

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MaaSとは

MaaSの概要について解説します。

MaaSの概念

MaaSとは「Mobility as a Service」の略で、ICT(情報通信技術)の発達を背景として生まれた次世代の移動サービスです。

地域住民や旅行者一人ひとりの移動ニーズに対応し、鉄道やバス、タクシー、カーシェア、カーサイクルなどさまざまな交通サービスを組み合わせて、検索から予約、決済まで一括で行うことができます。

移動の利便性向上はもちろんのこと、交通手段の選択肢が拡大することで地域の課題解決にもつながる手段として注目が高まっています。

MaaS系サービスに取り組んでいる企業・団体

国土交通省は関係府省庁とも連携しつつMaaSの全国への早急な普及に取り組んでおり、実証実験の支援や交通事業者のキャッシュレス化、データ化なども促進しています。

新たなモビリティサービスの推進を支援する「新モビリティサービス推進事業」のもと、MaaS構築を目指す動きが活発化しています。

MaaSサービスに取り組んでいる企業や団体を紹介します。

JR東日本の「モビリティ・リンケージ・プラットフォーム」

JR東日本は、2018年7月に発表した10か年計画の中期経営ビジョン「変革2027」の中で、移動のための情報や購入、決済をオールインワンで提供する「モビリティ・リンケージ・プラットフォーム」を推進していく方針を掲げました。

アプリや配車サービス、交通ICカード「Suica」などの多面的な活用・連携を進めるもので、鉄道会社や自治体などと連携して2次交通統合型サービス「観光型MaaS」の提供や新たな交通手段の開発などに取り組んでいます。

観光型MaaSは、駅や空港からバスやタクシー、AI型オンデマンド交通などの2次交通について、国内外の観光客がスマートフォンなどで検索や予約、決済して目的地までシームレスに移動できるようにするものです。

小田急電鉄の「小田急MaaS」

小田急電鉄は株式会社ヴァル研究所、タイムズ24株式会社、株式会社ドコモ・バイクシェア、WHILL株式会社の4社と連携し「小田急MaaS」の実現に向けて取り組んでいます。

この計画では、アプリをヴァル研究所の検索エンジンと連携し、同社のグループの鉄道やバスなどの交通データのほか、タイムズ24のカーシェアリングサービスや、ドコモ・バイクシェアのサイクルポートのデータ表示もできるようにします。

さらに公共交通機関利用後のラストワンマイルの移動手段として、WHILLのパーソナルモビリティとの連携も進めています。

産官学とJR東日本の「モビリティ変革コンソーシアム」

「モビリティ変革コンソーシアム」は、解決が難しい社会課題や次世代の公共交通について、交通事業者と産官学がオープンイノベーションによるモビリティ変革を目指すため、2017年9月にJR東日本が中心になって立ち上げた団体です。

シームレスな移動のため鉄道ネットワーク中心のモビリティ・リンケージ・プラットフォームを構築する「Door to Door 推進 WG」や、新しい街づくりを目指し、街の特性に応じた移動機会・目的の創出や駅や周辺の魅力度・快適性を向上する「Smart City WG」、ロボット活用を通じてサービスの品質向上や作業安全性向上・作業効率化、メンテナンス業務革新を目指す「ロボット活用 WG」などのワーキンググループ(WG)を立ち上げ調査・研究を進めています。

「Door to Door 推進 WG」では、JR東日本管内のBRT(バス高速輸送システム)におけるバス自動運転の技術実証のほか、「Ringo Pass」を利用した移動と情報提供の実証実験や、Suica認証による交通事業者・デマンド交通・商業施設の連携に関するMaaS実証などが進められています。

DeNAの「MOV」「Anyca」

DeNA(ディー・エヌ・エー)は2018年10月にMaaS関連の技術開発を行う「モビリティインテリジェンス開発部」の発足を発表し、注力するオートモーティブ事業でAIを活用した移動サービスプラットフォーム開発を進めています。

次世代タクシー配車アプリ「MOV(モブ)」は、神奈川県で開始され、さらなる浸透を目指してJapanTaxiとMOVで事業統合が行われました。

また個人間カーシェアサービス「Anyca」は、2020年12月に、カーシェアするクルマのカギをスマートフォンで開け、オーナーとドライバーが非対面でクルマの受け渡しができるシステム「AnycaKEY(エニカキー)」をリリースしました。

ジョルダンの「モバイルチケットサービス」

乗換案内サービスを提供するジョルダン株式会社は、移動に関するサービスのワンストップ化を進めています。

インバウンド拡大やIoT浸透などを見据えて多様な施策を実施しており、2018年7月に子会社「J MaaS 株式会社」を設立してMaaS事業に本格参入しました。

J MaaSは交通や観光、ICTなどの事業者向けにMaaSインフラを提供しています。

2019年1月に公共交通チケットサービスを提供するイギリスのMasabi社と日本での総代理店契約を締結し、経路検索やチケット購入、乗車をスマートフォンのみで完結できる「モバイルチケットサービス」を提供しています。

トヨタ自動車 自動運転とMaaSを結び付けた「Autono-MaaS」事業

トヨタ自動車は、MaaSと自動運転を結び付けた「Autono-MaaS」事業を中心として、次世代に向けたモビリティ企業への変革を図っています。

2019年3月期第3四半期の決算発表では、「MaaS戦略のアプローチ」と題して「外部事業者協業モデル」「トヨタ事業主体モデル」「販売店事業主体モデル」を推進する戦略を明らかにしました。

新しい移動サービスを模索するため、自社で「KINTO」などのカーリース事業とカーシェアサービスを進めるほか、ライドシェア事業者など世界各地域の有力なMaaS事業者との提携を推進し、車両データを一元管理する「モビリティサービスプラットフォーム(MSPF)」の構築を図ります。

ソフトバンク 自治体との連携やライドシェア事業者への出資

ソフトバンクは、トヨタと共同出資し「MONET」を設立したほか、神奈川県や岐阜市など自治体との提携も進めており、「Society5.0」事業やキャッシュレス社会に関する取り組み、MaaS事業などに取り組んでいます。

海外でも積極的に有力ライドシェア事業者への出資などを展開するなど、新たな移動サービス確立のため先行投資を行ってきました。

傘下のBOLDLYは、旅客物流関連のモビリティーサービスの開発や運営などを手がけ、遠隔監視システム「Dispatcher(ディスパッチャー)」を中心としてさまざまな実証実験に参加しています。

さらに自動運転バスサービスや、ドア・ツー・ドアの移動により近いタクシー型の無人運転サービスなどの構想も進めています。

株式会社NearMeの「nearMe.Town」

株式会社NearMeは2021年12月から、街中でも行きたいところまでドアツードアで移動できる「nearMe.Town」を開始しました。

同社は社会のあらゆる「もったいない」を解決し、サステイナブルで活き活きとした未来を実現するため、地域資産と人々のニーズをマッチングするプラットフォーム作りを手がけています。

MaaS領域においては、空港と都市などをドア・ツー・ドアで結ぶオンデマンド型シャトルサービス「スマートシャトル」を展開してきました。

国土交通省からタクシーの相乗り(略称「シェアタク」)の一般導入が発表されたことを受けて、空港送迎にとどまらず、同社独自開発のAIによるルーティングを街中でも利用できるよう「nearMe.Town」を本格的に稼働させたものです。

Carstay株式会社の「Mobi Lab」

2018年に設立されたCarstay株式会社は、キャンピングカーと車中泊スペースのシェアサービスなど「バンライフ」のプラットフォーム事業を展開しています。

同社は2020年9月、株式会社ヨコハマ機工と共同で、横浜市金沢区の約500坪の倉庫をバンライフの未来の拠点となる「Mobi Lab.(モビラボ)」としてプロデュースすることを発表しました。

バンライフをより快適にする次世代移動通信「5G」の実証実験も行う予定で、今後5Gや自動運転社会の到来で必要となる「快適な移動」と「感動体験」を「バンライフ」プラットフォームの提供を通じてデザインしていくとしています。

S.RIDEの「S.RIDE」

2018年に設立されたS.RIDE株式会社は、ワンアクションで呼べるタクシー配車アプリ「S.RIDE」を提供しています。

悪天候におけるタクシー予約需要にも対応しており、関東地方で雪が降り交通機関に影響が予想された2022年2月10日には、前月に記録した1日あたりの予約過去最高軒数に対し60%増の予約配車件数を達成しました。

同社はさらに、お気に入りのレストランからメニューをタクシーが届けてくれる「Food Delivery Taxi」も運営しています。

株式会社Azitの「CREW」

2013年に設立された株式会社Azitが運営する「CREW」は、「乗りたい」 と 「乗せたい」 をつなげるモビリティ・プラットフォームです。

アプリを起動し出発点と到着点を設定すると、付近を走行するドライバー(CREWパートナー)とマッチングし、希望の場所まで送ってもらうことができます。

マッチングが成立して移動し目的地に到着すると、乗車した方と運転した方のそれぞれが相互評価を行います。

さらに乗車した方はガソリン代などの実費とシステム利用料を支払い、任意で謝礼を支払うこともできるというモデルになっています。

国土交通省の「日本版MaaS推進・支援事業」に採択された12事業

国土交通省は2021年8月、同省と内閣府、総務省、経済産業省が連携する「スマートシティ関連事業」の一事業である「日本版MaaS推進・支援事業」として12事業を選定しました。

同事業の目的は地域の課題解決に資するMaaSのモデル構築を図ることであり、MaaSの社会実装に向けた意欲的な取り組みである事業が選ばれました。

芽室MaaS事業 

北海道で唯一採択された芽室町は、公共交通空白地の住民の市街地への移動支援のため、新たなデマンドタクシーを導入します。

住民の高齢化が進む芽室町では、市街地までの移動手段の確保という課題を抱えており、芽室MaaSは幅広い世代の利用を想定し、電話とWebサービスによるデマンドタクシーの予約窓口を設置します。

前橋MaaS事業

前橋市は市内の交通再編の有効化を目的として、2021年10月1日から2022年3月31日までMaaSの実証実験「MaeMaaS(まえまーす)」を実施します。

この実証実験では市民に市内のさまざまな交通手段を分かりやすく案内し、将来的な社会実装を想定した検証を目的としています。

同市は一連の取り組みを通じ、自家用車依存社会からの脱却と公共交通維持のための財政負担の軽減を目指します。

大丸有版MaaS事業

大丸有協議会(大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり3団体の一般社団法人 大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会)とBOLDLY株式会社は、大丸有地区におけるスマートシティのプロジェクトとして、2022年2月18日から22日まで、丸の内仲通りの歩車共存空間での自動運転バスの走行実証を実施します。

実証実験期間中は、大丸有エリアの就業者・来街者に向けてイベント情報やモビリティ情報を一括提供するアプリ「Oh MY Map!」上で、自動運転バスの走行位置情報をリアルタイムで確認できます。

MaaS関連事業は今後も拡大 自治体や国との協力関係を築くことが重要

MaaSは人々の移動需要に応じる自動運転車両の普及や、それに伴うスマートシティの構築実現を目指しています。

今回紹介した事業者のほかにも、観光分野でもMaaSを取り入れて地域資源の価値を最大化させることで地域活性化を図る動きがあります。

魅力的な飲食店や観光施設などのコンテンツ配信も進められており、これらはMaaSの活用動機につながる移動理由の目的となりえます。

MaaSプラットフォームの完成度が高まりつつある今、事業者間や産官学の連携において、どのようなコンテンツを配信していくか協議することも重要となるでしょう。

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<参照>

小田急:小田急のMaaS取組み

JR東日本:実証実験

DeNA Design:#MOV

JMaas:公式サイト

ジョルダン法人サービス:モバイルチケット、登場

自動運転ラボ:【日本版】MaaS系サービスに取り組む企業・団体まとめ

Monet:公式サイト

PR TIMES:独自のAIでスマートシャトル™を運用中のNearMe、タクシーの相乗り解禁を受けてnearMe.Townを始動

PR TIMES:Carstay、横浜市金沢区の約500坪の倉庫をプロデュース「モビリティ×モバイル5G」がテーマの「Mobi Lab.(モビラボ)」始動

sride:公式サイト

PR TIMES:モビリティ・プラットフォーム「CREW」、北海道 斜里町にて実証実験を開始

PR TIMES:国土交通省推進支援事業≪芽室MaaS≫に、株式会社電脳交通がタクシー配車システム「電脳交通®」を提供

LIGARE:電脳交通、北海道芽室町の芽室MaaSに運行管理システムを提供

PR TIMES:前橋版MaaS実証実験「MaeMaaS」に顔認証技術を提供

前橋市:令和3年度前橋版MaaSについて

国土交通省:大丸有版MaaS事業

PR TIMES:大手町・丸の内・有楽町地区スマートシティプロジェクト “歩行者・モビリティ・ロボットが共存するウォーカブルな空間” 実現に向けて歩車共存空間での自動運転バス走行実証を実施

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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